データを経営判断に 2代目社長が取り組むiPhone活用と業務システム化
2025.01.17
(最終更新:2025.01.17 )
株式会社防災コンサルタント 代表取締役社長 馬場暁子さん
札幌市を中心に、約1万棟のビルやマンションをそれぞれ年2回訪問し、消防用設備等の法定点検をする「株式会社防災コンサルタント」。かつては約1万社分の顧客管理を紙のファイルで行っていましたが、2代目社長の馬場暁子さんが2018年に就任した際、それらの管理のためにFileMakerの導入を決断しました。その理由は、「社員にはお客様一人ひとりと向き合う時間を作ってほしいから」と語ります。
防災コンサルタントは創業1975年 創業以来の顧客も
防災コンサルタントは、1975年に暁子さんの父・明美さんによって創業されました。消防用設備の設置工事や保守点検の専門業者としてスタートし、現在は約40人の社員が活躍しています。最近では、インターホンや防犯カメラの設置工事などにも事業分野を広げています。
同社の重要な仕事の一つは、消防用設備の点検です。設備の不備や欠陥を見抜くためには、専門知識が必要で、社員の多くは消防設備士や電気工事士の資格を持っています。万が一の事態には、365日24時間でスタッフが駆けつける体制を整えています。
暁子さんは「この業界は男性が圧倒的に多いのですが、弊社では現場社員2人は女性です。温泉施設の女性更衣室やエステ店舗など、より気配りが必要な場所でもスムーズに点検してもらえると好評です」と話します。
不思議に感じた「回るはずのない仕事」
暁子さんが同社に入社を決めたのは20年ほど前のこと。「当時は、ファミリー企業は子どもが継ぐのが当たり前でした」と振り返ります。理由をつけては先延ばしにしていたものの、覚悟を決めて入社すると、さっそく現場に派遣されます。
当時は「女性は現場作業ができない」という思い込みもあり、風当たりは強かったそうですが、暁子さんは「毎日違う景色、いろんな方に出会えて、とても楽しい日々でした」。さまざまな現場を経験していくなかで、女性のお客様から「女性用の部屋には女性の方に入ってほしい」との声も聞きました。これが後の女性社員採用へとつながりました。
仕事に慣れてくると、暁子さんはある違和感を覚え始めます。当時の事務所には1万数千件の取引先のビルの住所や点検実績、次回点検日などがまとめられた紙の書類が並べられ、そのデータは表計算ソフトでも管理されていました。
しかし、当時の社員数は事務職も含めて約30人。データが正しければ、人手が足りず業務が回らないはず。消防用設備等の点検は消防法で義務付けられているのに、「もしかしたらお客様への連絡漏れがあるのではないか」と不安を覚えました。
消防用設備の点検に必要な人員や所用時間はビルごとに異なり、その行程表 は、行程担当者が前日に夜遅くまで複雑なパズルをくみ上げるようにしてつくっていました。それを、社員は毎朝会社でプリントアウトし、現場に出ていくという毎日でした。
属人化された毎日の行程表づくり
「どのビルの点検が、何人で何時間かかるというのは、行程担当者の勘に頼っていましたし、行程表の作成はその担当者しかできない業務でした」と暁子さん。
そして消防用設備の点検後には、点検してから消防署へ報告し、その結果をビルやマンションの管理者・所有者に戻すまでが仕事です。紙の行程表では、どの建物の点検がどの段階にあるかを把握するのが難しく、数年かけて改善を進めたものの、当初の「連絡漏れのあるお客様がいるのではないか」という懸念は拭いきれませんでした。
FileMaker導入前は紙のファイルで管理していた約1万社分の顧客情報
FileMakerとは? 導入を決めた最後の理由は「Apple」
なんとか状況を変えたいと思っていた暁子さん。しかし、業者が提案する顧客管理システムは契約初年度から300万~500万円の費用がかかり、消防設備点検の特殊な業務フローには適していませんでした。当時、社内には高価なITシステムの導入に懐疑的な意見もあり、なかなか進展しませんでした。
転機が訪れたのは2018年、暁子さんが社長に就任した後、札幌のITコーディネーターから「Claris FileMaker(以下、FileMaker) 」を紹介されたことです。
「なぜFileMakerがオススメなのですか?」
暁子さんが詳しく聞いていくと、FileMakerは、自社の業務にぴったりのアプリをローコードで自作できるプラットフォームであり、ライセンス費用も年間16万円と手頃であることがわかりました。そして FileMaker 開発元のClaris は、Appleの100%子会社であるという安心感も背中を押してくれました。
現場社員にiPhone支給を決断
暁子さんは社員たちの書類作業をITコーディネーターに実際に見てもらい、業務をFileMakerに移行する開発を進めました。
ただ、初めての経験だったため、簡単には進みませんでした。社員からは「やっぱり今までの表計算ソフトのままの方がよかった。もとに戻しましょう」という声も上がりました。しかし、暁子さんは「紙と勘に頼る時代に後戻りするわけにはいかない。とにかくこれ(FileMaker)にします。従ってください」と言い切りました。
暁子さんの切り札は社員へのiPhoneの支給でした。工事や建設の現場では「ガラケー」(フィーチャーフォン)が当時では主流でしたが、個人でiPhoneを利用している社員も多く、暁子さんはそこに目を付けたのです。
紙とExcelで管理していたお客様情報をデータベース化し、FileMakerで物件詳細アプリと行程管理アプリを開発、iPhoneで使用できるアプリを作成しました。
実際に作成したアプリの画面
「これまでは夜中にお客様のビルの消防用設備で警報が鳴ると、当番の社員は一度出社して物件の資料を確認してから現場に駆けつけていました。しかし、アプリ導入後は手元のiPhoneで物件情報がすぐ確認でき、直接現場に向かえます。社員の負担が大幅に軽減されました」
顧客情報も社員の行程表もデジタルで管理できるようになり、負担が大きかった行程表担当者の業務を減らすことができました。さらに、顧客情報は暗号化されたデータベース上に保存しており、閲覧にはiPhoneの生体認証でログインするため、紙よりも情報漏洩のリスクを減らすことにもつながりました。
社員がアプリを使ってデータベースを更新するプロセスのなかで、既に無いビルや、所有者と連絡が取れなくなっている取引先など、データを最新状態に更新する機会にもなったといいます。
「経営判断に生かしたい」
FileMakerの強みはカスタマイズ性です。防災コンサルタントでは、社員の要望や必要性に応じてClaris 認定パートナーに依頼してシステムを随時改修し、現場の社員が使いやすいように改善を続けています。「現場社員の行程表を組めるようになるまで3年かかりましたが、時間をかける価値はあったと思います」と暁子さん。
今後は、FileMakerを経営判断にも活用したいと考えています。
「現在お取引のあるお客様と、どのようなお付き合いさせていただいているのか、今後どのような分野に提案を進めれば良いのか、という判断材料を得られます」
さらに、社員にも変化を望んでいます。
「約1万社のお取引先に対して社員40人というのは効率的ですが、逆にいうと1社1社にまだ十分に向き合えていないとも言えます。昔からのお取引先をもっと大切にしたいのです。書類作業時間を減らし、お客様とどう向き合うかの時間を増やしたい。それが私の目指す会社の姿です」
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