副業・ダブルワークする労働者の社会保険、2社以上で合算するケースを紹介

複数の企業で勤務する副業・ダブルワークする人が増えています。このような働き方では、社会保険の取り扱いはどのようになるのでしょうか?日本年金機構の資料をもとに、複数の事業所で社会保険の加入要件を満たす場合に報酬月額に基づき按分する計算方法や必要な手続きについて、わかりやすく解説します。
複数の企業で勤務する副業・ダブルワークする人が増えています。このような働き方では、社会保険の取り扱いはどのようになるのでしょうか?日本年金機構の資料をもとに、複数の事業所で社会保険の加入要件を満たす場合に報酬月額に基づき按分する計算方法や必要な手続きについて、わかりやすく解説します。
厚生労働省の「副業・兼業の促進に関するガイドライン」によると、副業・兼業とは、2つ以上の仕事を掛け持つことをここでは想定しています。副業・兼業は、企業に雇用される形で行うもの(正社員、パート・アルバイトなど)、自ら起業して事業主として行うもの、コンサルタントとして請負や委任といった形で行うものなど、さまざまな形態があると紹介しています。
ダブルワークも、2つの仕事を掛け持つことですが、本業を持たない人が仕事をかけ持つ働き方にも使われます。
さて、どのような場合に複数の事業所で社会保険に加入する必要があるのかを紹介します。原則として、それぞれの事業所ごとに社会保険の加入要件を満たしているかどうかが判断されます。
具体的には、次のような働き方をする場合、原則として、2社で社会保険に加入することになる場合があります。
ただし、それぞれの事業所で社会保険の加入要件を満たしているか確認が必要です。
もし、複数の事業所で同時に社会保険の加入要件を満たすことになった場合、被保険者本人から「健康保険・厚生年金保険 被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」を日本年金機構に提出する必要があります。
この届出は、いずれか1つの事業所を主たる事業所として選択し、その事業所を管轄する年金事務所または保険者などを決定するためのものです。
健康保険組合に加入する事業所を選択する場合は、健康保険組合への届出も必要です。70歳以上の労働者には、「厚生年金保険 70歳以上被用者所属選択・二以上事業所勤務届」の提出も必要です。
届出により主たる事業所を選択すると、選択した事業所を管掌する保険者において、被保険者資格情報が登録されます。
これにより、健康保険証は、原則として選択した事業所の情報に基づいて発行され、利用登録したマイナンバーカード(マイナ保険証)も利用可能になります。
すでに協会けんぽの被保険者である労働者が、引き続き協会けんぽ加入の事業所を選択事業所とする場合、現在の被保険者整理番号から新たな番号に変更となる場合があります。
マイナ保険証を所有していない等の理由により資格確認書の発行が必要な場合は、交付申請手続きなしで協会けんぽから交付されますが、交付に時間を要する場合があります。
複数の事業所で社会保険に加入する場合、それぞれの事業所で受ける報酬月額を合算した月額により標準報酬月額が決まります。
この標準報酬月額に厚生年金保険料率、選択した事業所の健康保険料率をかけた保険料額を、それぞれの事業所で受ける報酬月額に基づき按分して決定されます。
保険料の計算例(厚生年金保険料の場合)として、例えば、A社の報酬月額が20万円、B社の報酬月額が10万円の場合、合算した報酬月額は30万円となります。この30万円が標準報酬月額となります。
仮に厚生年金保険料率が18.3%だった場合、厚生年金保険料の総額は、30万円×0.183=5万4900円となります。厚生年金保険料は、事業主と被保険者で折半するので、事業主負担も被保険者負担分も2万7450円となります。
保険料は、A社とB社のそれぞれの報酬月額に応じて按分します。
• A社での被保険者負担分: 2万7450円×(20万円/30万円)=1万8300円
• B社での被保険者負担分: 2万7450円×(10万円/30万円)=9150円
事実発生から10日以内に被保険者が「健康保険・厚生年金保険 被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」を日本年金機構へ提出する必要があります。
届出の結果、選択した事業所の所在地を管轄する事務センターがこの被保険者に関する事務を行います。提出方法は、電子申請、郵送、窓口持参があります。電子申請の詳細は日本年金機構の公式サイトへ。
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