日本人国内旅行者数、伸び悩み 旅行しない70代も 2025年観光白書

観光庁が2025年5月に「2025年版観光白書」を公表しました。2024年の日本人国内旅行消費額は約25兆円で、国内旅行消費額全体の7割超を占め、とくに、地方の延べ宿泊者数の日本人割合は約9割を占めるといった実態が見えてきました。ただし、日本人の国内旅行市場は長期で伸び悩んでいます。この背景には、旅行に行くことが少ない高齢人口の増加、休暇取得など旅行を実施するにあたって様々なハードルがあるといいます。
観光庁が2025年5月に「2025年版観光白書」を公表しました。2024年の日本人国内旅行消費額は約25兆円で、国内旅行消費額全体の7割超を占め、とくに、地方の延べ宿泊者数の日本人割合は約9割を占めるといった実態が見えてきました。ただし、日本人の国内旅行市場は長期で伸び悩んでいます。この背景には、旅行に行くことが少ない高齢人口の増加、休暇取得など旅行を実施するにあたって様々なハードルがあるといいます。
まず、日本の観光全体を概観すると、2023年の「外国人旅行者受入数ランキング」で、日本は世界15位、アジアでは2位となりました。訪日外国人旅行者数は2024年に3687万人、訪日外国人旅行消費額も8兆1257億円と、いずれも過去最高を更新しました。
日本国内における2024年の旅行消費額合計は34.3兆円でした。このうち、日本人国内宿泊旅行が20.3兆円、日本人国内日帰り旅行が4.8兆円であり、日本人国内旅行の消費額は約25兆円と、国内旅行消費額全体の7割以上を占めています。
また、地方部における延べ宿泊者数のうち、日本人が約9割を占めており、特に地方部の旅行需要は日本人が下支えしている状況です。このことからも、日本人国内旅行の活性化は日本の観光にとって極めて重要であることが分かります。
しかし、日本人国内旅行の延べ旅行者数や旅行経験率は、長期的に伸び悩み傾向にあります。年代別の国内宿泊旅行経験率を見ると、若年層(10~20代)ほど高く、堅調に回復しています。
一方、経験率が低い高齢層(70代以上)の増加は、国内旅行市場全体を押し下げる要因となっています。年間旅行回数では、全体として旅行に行かない層と多く行く層の二極化する傾向が見られます。10~20代では旅行実施傾向が高まっていますが、70代以上では下がっています。
観光目的の国内宿泊旅行をしなかった理由としては、20~60代では「仕事などで休暇がとれない」「家計の制約がある」が上位を占め。70代以上では「自分の健康上の理由で」が最も多い理由となっています。また、10~50代の約6割が主に休日に旅行しており、旅行需要の平準化も課題です。
国内延べ旅行者数のうち、観光目的の旅行者数は全体の約7割弱を占め、堅調に推移していますが、帰省や出張目的の回復は緩やかです。観光目的の国内旅行では、家族・親族での旅行が約半数を占めます。友人との旅行は減少傾向にあり、一人旅が増加傾向です。
旅行の目的としては、どの年代も温泉やグルメを好む傾向が高いですが、若年層は趣味のイベント参加やアウトドアのほか、現地の人との交流や地域貢献といった旅行意欲も高いという特徴があります。
今後、人口減少・少子高齢化がさらに進む中で、国内交流の拡大には一層取り組む必要があります。そのためには、新たなニーズを踏まえた「帰省に近い感覚の旅」のような潜在需要を顕在化させることや、休暇取得など旅行実施のハードルを下げる取組を通じて、一人あたり旅行回数の増加や滞在長期化を図ることが重要だと指摘しています。
観光庁では、こうした課題に対応するため、「何度も地域に通う旅、帰る旅」や「ワーケーション・ブレジャー」の普及促進、そして「ユニバーサルツーリズム」の推進等を通じ、新たな交流市場の開拓や国内旅行需要の平準化に取り組んでいます。これらの取組は、地域の関係人口増加や地域活性化にもつながっています。
地域での具体的な取組事例としては、香川県琴平町における若者との継続的な交流を通じた再来訪促進、福島県岳温泉における「山旅」コミュニティとガイド育成による関係人口化、新潟県雪国観光圏における広域連携での「帰る旅」ビジネスモデル構築などがあります。
これらの事例では、旅行者と地域の持続的な関係構築を通じて、関係人口の増加や地域の人手不足解消に貢献しています。
また、休暇取得や同行者との休暇調整にハードルを感じやすい現役世代の旅行需要を喚起するためには、ワーケーション・ブレジャーの推進が有効です。
宮崎県日向市では企業向け研修型ワーケーションに官民連携で取り組み、キッチハイクは子供が地域の保育園に通いながら家族で中長期滞在するプログラムを提供し、参加者の満足度向上と地域活性化を実現しています。愛知県では「ラーケーションの日」創設等により、平日における子育て世代の休暇取得・分散化を促進しています。
さらに、少子高齢化が進むなか、高齢者や様々な心身の状態の人が安心して旅行を楽しめる環境整備も重要であり、ユニバーサルツーリズムの推進が求められています。三重県伊勢志摩地域では、個々の状況に応じた旅行プラン提案や受入体制強化を通じて、バリアフリー観光を推進しています。
観光関連産業においては、観光需要の回復に伴い、人材不足や生産性の低さといった供給面の課題も顕在化しています。これに対しては、観光地・観光産業におけるDX推進による生産性向上、人材の確保・育成・活用高度化といった施策も推進されています。
観光庁は、国内交流拡大に向け、まず、国立公園や歴史・文化、スポーツ、農泊といった地域独自の魅力あるコンテンツを磨き上げ、旅行商品を整備し、旅行意欲を刺激します。
また、ワーケーションや「第2のふるさとづくり」を推進し、多様な目的での滞在や、地域との継続的な関わりを通じた旅行を促進します。
高齢者や障害者等、誰もが旅行を楽しめるよう、観光施設や公共交通のバリアフリー化、心のバリアフリーの普及、ユニバーサルツーリズムの商品造成にも取り組みます。
さらに、年次有給休暇の取得促進など、休暇を取りやすい環境整備を進めるほか、高速交通網や地域内の「足」となる交通手段の確保・改善にも取り組み、移動の負担軽減を図ります。
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