コロナの逆風でも観光・レジャーで活躍する後継ぎ社長を紹介
新型コロナウイルス感染症の拡大により、とくに大きな経済的打撃を受けているのが、観光・レジャー産業です。しかし、後継ぎ経営者たちは立ち止まっていません。業界全体が激変するなか、新たな打ち手のヒントになる後継ぎ経営者を紹介します。
新型コロナウイルス感染症の拡大により、とくに大きな経済的打撃を受けているのが、観光・レジャー産業です。しかし、後継ぎ経営者たちは立ち止まっていません。業界全体が激変するなか、新たな打ち手のヒントになる後継ぎ経営者を紹介します。
新型コロナウイルスで観光・レジャー業は深刻なダメージを受けています。観光庁が8月末に発表した宿泊旅行統計調査(PDF形式:585KB)によると、2020年6月の延べ宿泊者数は前年同月比68.9%減の1424万人でした。「Go To キャンペーン」が始まった同7月の延べ宿泊者数は2258万人と伸びましたが、前年同月比では56.4%減になりました。
2020年東京五輪・パラリンピックで見込まれていたインバウンド需要はほぼ消滅しました。同調査によると、外国人延べ宿泊者数は、6月が18万人で前年同月比98.1%減、7月は32万人で同97.0%減となりました。
そんな中、国内で42施設を運営する星野リゾート代表の星野佳路さんは「マイクロツーリズム」という考え方を提唱し始めました。7月のインタビューでは、こう話しています。
「日本の観光市場の83%は日本人による国内観光です。インバウンド市場は約3000万人、日本人が海外旅行に行くアウトバウンドも約2000万人いました。コロナで4.8兆円のインバウンド市場が無くなりましたが、アウトバウンドで使っていたとみられる3兆円は国内市場にシフトします。ロスは差し引き1.8兆円で、その額は観光市場全体(約28兆円)の7%に過ぎません」
星野さんは、近場に足を向けようとする旅行客に照準を絞ることが重要だと考えています。「中小の観光事業者やファミリービジネスの方が、マイクロツーリズムに対応しやすいと思っています。マイクロツーリズムは1時間~1時間半圏内での観光です。コロナで遠くにいくことへの不安から、毎年ハワイに行っていた人も行けなくなり、久しぶりに自家用車で近くの観光地に行こうという動きになるでしょう」と言います。
星野さんは、前身の星野温泉の後継ぎとして育ちましたが、父と対立して一度家業を離れてから、経営者として復帰。地方の温泉旅館を国内有数のリゾート施設へと発展させました。仲間の宿泊業者に力強いアドバイスを送ります。
「地元にはタウン誌や地域FMがあります。大手旅行サイトなどから地元寄りに販売チャンネルをシフトしてはどうでしょうか。中小事業者やファミリービジネスの企業は、顔も名前も覚えられやすいし、パーソナルなリレーションシップが作れます。季節ごとにリピートしてくれる人に、特別な価格も提供しやすいと思います」
また、ITの力を使って、老舗観光業の業務効率化やユーザビリティーの向上に成功した後継ぎ経営者も生まれています。
三重県の伊勢神宮門前の飲食・土産物店「ゑびや」代表の小田島春樹さんは、妻の実家を継ぎました。人工知能(AI)を導入して日々の来店客数を予測し、食品ロスを減らしたり、働き方改革につなげたりしました。飲食店向けクラウドサービスの開発・販売を行う「EBILAB」の代表も務めています。
神奈川県の鶴巻温泉の旅館「陣屋」の女将・宮崎知子さんも、自動車会社の技術者だった夫と一緒に 夫の家業の旅館経営を、2009年に引き継ぎました。多額の負債を抱えていましたが、ITを効率化や顧客へのきめ細やかなサービスにつなげ、週3日の休館や高級化も進めて黒字転換に成功しました。現在は、旅館やホテル向けのクラウド型管理システムの開発や販売などの事業も展開しています。
ツギノジダイでは、9月16日午前10時から、小田島さんと宮崎さんに、オンラインで公開インタビューを行い、地方の老舗観光業がコロナ危機を乗り切るためのヒントについて伺います。
コロナ危機で屋外でのレジャー需要が高まっています。新潟県燕市のアウトドア用品メーカーのスノーピークは2020年3月、山井梨沙さんが父・太さんから事業を継いで、32歳で社長に就任しました。同社は、本社に約5万坪の広大なキャンプ場を併設するなど、アウトドア事業に力を入れています。
同社はアウトドア用品販売の枠を超えて、「野遊び」や「人間性の回復」というビジョンを掲げており、デザイン経営の先進企業としても注目を集めています。
観光・レジャーを支える企業には、他にも後継ぎ経営者が活躍。大手アウトドア用品メーカーのモンベルは、登山家でもある創業者・辰野勇さんの長男・岳史さんが、2代目社長として経営を引き継いでいます。
スポーツ用品大手・ゼビオホールディングスの諸橋友良社長は、2003年に義父で創業者の廷蔵氏の急死に伴い、経営を引き継ぎました。海外進出を果たし、仙台市に多目的スポーツ施設「ゼビオアリーナ」をオープンするなど、積極的な事業展開を進めています。
通販大手ジャパネットホールディングスは、長崎市中心部にサッカースタジアムを核に、ホテルなどを併設したレジャー拠点の建設を計画しています。創業者高田明さんの長男・旭人さんがホールディングス社長として、長女・春奈さんはサッカーJ2、V・ファーレン長崎の社長として、計画をリードしています。
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