中途採用に悩む中小企業向け転職サイト活用術【失敗・成功事例から解説】
「リクナビNEXT」「マイナビ転職」「doda(デューダ)」「type(タイプ)」……。採用を考えるとき、経営者が検討する手法の一つが、転職サイトへの求人広告の掲載です。広告を載せてもなかなか応募が来ないという中小企業に向けて、事例をもとに転職サイトで採用を成功させる4つのコツをご紹介します。
「リクナビNEXT」「マイナビ転職」「doda(デューダ)」「type(タイプ)」……。採用を考えるとき、経営者が検討する手法の一つが、転職サイトへの求人広告の掲載です。広告を載せてもなかなか応募が来ないという中小企業に向けて、事例をもとに転職サイトで採用を成功させる4つのコツをご紹介します。
転職サイトとは、企業が出す求人情報を求職者に提供するWebサイトのことを指します。企業が、従業員を新たに採用するときには、ハローワークの利用、人材紹介、ダイレクトリクルーティングなど、さまざまな方法があります。そのなかでも、厚生労働省の2019年(令和元年)雇用動向調査によると、求人広告から転職する割合が最も多くなります。
採用に困っている企業が転職サイトを利用する場合、あらかじめメリットと注意点を把握しておきましょう。メリットは以下の通りです。
注意点は以下の通りです。
「誰も知っている大手企業や評判のスタートアップと比べられたら、ウチは負けてしまう。せっかくお金を払っても応募が来ないのではないか」と思われるかもしれません。しかし、企業のやり方次第、工夫次第で成果を出せるのが求人サイトです。それでは具体的な事例を元に、転職サイトで採用を成功させるコツをご紹介していきます。
A社の社長は、半年前に先代社長から事業を引き継ぎました。以前は東京の大手企業で働いていましたが、3年前から事業承継を視野に入れて父が設立した機械部品メーカーへ転職。やっと業界のことが分かり始めた頃に父が急逝し、今は様々な手続きや予算・売上の管理などに追われています。
そんな時に、製造部門から退職者が出ました。彼が抜けると、製造部門は40代、50代ばかり。「将来のことを考えると、若手を何人か採用したい。CMをやっている大手転職サイトなら応募がたくさん来るのではないか」と考えました。大手転職サイトの営業担当者から「目立つためには表示位置が最上位になる広告枠がお勧めです」と言われ、大幅な予算オーバーとなる100万円を支払ったにも関わらず、応募数はいまひとつ。内定は1人出したものの入社を辞退され、結局採用できずに終わってしまいました。
B社の社長も、A社と同じく小さな機械部品メーカーを継いで約半年。退職者が出て、初めて採用を実施することになりました。転職サイトを利用しようと考えたものの、どれを選ぶべきかわかりません。いくつかの転職サイトに提案を依頼したところ、一番わかりやすく納得のいく説明をしてくれたのが大手転職サイト「S」の営業担当者Nさんでした。B社社長はNさんと再度打ち合わせの時間を作り、一緒に採用戦略を練り上げました。
転職サイトの営業Nさんと話しながらつくったB社の採用戦略は、以下の通りでした。(B社社長とNさんの写真はイメージです)
1.広告の表示位置にこだわるよりも、長期間掲載する
2.自社の魅力がアピールできるよう、取材の準備をする
3.掲載後はスカウトメールを活用して、こちらからアプローチ
4.選考はテンポよくスピーディーに進める
「広告枠は、高い方がいいんでしょう? でもウチは予算が少ないから」
「予算が50万円ということなので、リーズナブルなプランで長く掲載するのがお勧めです。採用したい『若手の製造業の経験者』が、掲載期間の4週間の間に御社の求人を見てくれるとは限らないからです。2ヵ月後には何人か見てくれるかもしれませんし、3ヵ月後にはもっと多くの人が求人を見てくれる可能性もあります」
大手求人サイトでは、広告枠を4週間単位で購入し、求人広告を掲載します。求職者が職種や業界、給与の下限などの条件を元に検索をかけると、当てはまる求人が画面の上から下に向かってたくさん表示されます。広告枠はいくつかのランクに分かれていて、上位ランクになればなるほど他のランクよりも上位に表示され、価格は高くなります。
といっても、無理に高い広告枠にこだわる必要はありません。表示位置が下になっても、長く掲載することで多くの人に広告を見てもらうチャンスを広げ、後述のスカウトメールで応募を促すという戦略もあります。
「取材ってどんなことをするんですか?」
「広告枠や転職サイトによって多少違いますが、広告の内容についての打ち合わせやインタビュー、写真撮影になります。事前に準備をしておくと、スムーズに進められます」
求人広告の掲載費用には、広告作成料も含まれています。この広告制作のための取材で自社の魅力をきちんと伝えられないと、求職者にとって魅力的な求人広告はできません。取材前には、自社の求人票や過去に掲載した求人広告などを用意して、参考資料として送ります。ある程度情報をインプットすることで、取材する側もより中身の濃い取材ができるようになります。また、採用したい対象者の条件や任せたい仕事内容、具体的な人物像なども考えておきましょう。
「掲載が始まったから、あとは応募を待つだけですね」
「むしろここからが本番です。まずはスカウトメールを送りましょう」
求職者の多くは会社の規模や待遇、安定性といった基準で転職先を選びます。マイナビが2019年に転職した正社員として働く20~50代を対象に実施した調査(PDF形式:935KB)によると、転職理由の1位は「仕事内容に不満があった」ですが、2位は「給与が低かった」、4位は「会社の将来性、安定性に不安があった」、5位は「休日や残業時間などの待遇に不満があった」となっています(複数回答)。
ですが、規模の小さい会社にチャンスがないわけではありません。先ほどのデータにも6位に「成長できる環境が整っていなかった」、8位に「業績などを正当に評価してもらえなかった」といった回答があがっています。社員の成長をサポートする、正当な評価を行うといった姿勢が、転職者にとって魅力になることもあります。さらに「どのくらいその求職者に期待をしているか」といった想いを盛り込むのも効果的です。
「面接に呼ぶ人はじっくり考えたいし、何人かまとめて呼びたいんです。10日くらい時間をかけて書類選考をしたいのですが、遅いですか?」
「書類選考の結果はできるだけ早めに連絡しましょう。せっかくいい人から応募が来ても、他社に行ってしまうかもしれませんよ」
応募がきたら、できるだけ3営業日程度で書類選考を済ませ、面接の候補日を決めましょう。なぜ早さが重要なのか、その理由は求職者側の立場で考えてみましょう。
求職者は、たいてい複数の企業に応募します。仮に5つの会社に応募したとして、すぐに面接の日程が決まってとんとん拍子で選考が進む企業と、最初の面接までだいぶ日数があいてしまう会社、どちらに好印象を抱くでしょうか。実際に、これまでに数多くの転職者に「なぜこの会社を選んだのか」と質問してみましたが、かなり高い割合で「最初に内定をもらったのがこの会社だった」という答えが返ってきました。
こうした方針で採用活動を進めた結果、B社では求めていた人材の採用につながりました。
A社とB社の社長の大きな違いは、「採用について頼れる相手がいたかどうか」です。求人広告は、いわゆる商品やサービスなどの広告とは違って「同時期に掲載している他社」がライバルとなり、アピールしたい対象(求職者)の数も、その時その時で変動します。また、次々に新しいサービスや機能が生まれるので、すべてを把握するのは困難です。
転職サイトを運営している各社はそれぞれ自社メディアでの採用ノウハウを持っていますから、それを提供してくれる信頼できる営業担当者を見つけましょう。その採用のプロに「より応募数を増やすためには何をすべきか」を相談しながら採用を進めていくことが大切です。
安定的に長く続く会社を作り上げていくためには、後継者はもちろん、一緒に会社を盛り上げていく社員が欠かせません。会社存続・成長のキーマンとなってくれるような転職者採用を成功させるためのノウハウを採用コンサルタントがお伝えします。
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