中小企業が悩む人材確保 従業員視点の「魅力ある職場づくり」とは
地方企業でとくに人手不足が課題になっています。人材獲得競争の激化や雇用のミスマッチなど様々な要因が影響しています。人材確保のために、厚生労働省は「従業員視点の魅力ある職場づくり」が有効だと訴えています。人材確保につながる事例とともに紹介します。
地方企業でとくに人手不足が課題になっています。人材獲得競争の激化や雇用のミスマッチなど様々な要因が影響しています。人材確保のために、厚生労働省は「従業員視点の魅力ある職場づくり」が有効だと訴えています。人材確保につながる事例とともに紹介します。
従業員不足による収益悪化などが要因となった「人手不足」による倒産は増えています。帝国データバンクによると、2013年に負債 1000 万円以上の「人手不足」倒産は34件でしたが、増加傾向が続き、2019年には185件に達しました。
2020年は、新型コロナの影響で状況が少し変わっています。大同生命が中小企業1万4665 社に新型コロナの影響や⼈材確保・⼈材育成について尋ねたところ、人手不足と感じる企業がやや減りました。新型コロナウイルス感染拡⼤による事業活動の中⽌や⾒直しなどが影響していると考えられます。
香川大学で中小企業支援を研究し、大同生命の調査に協力する海野晋悟准教授は次のように指摘します。
今後の中小企業の雇用環境について、コロナ第3波による事業縮小や雇用調整助成金の特例措置の期限(12月末)の終了により、本格的に余剰人員が表出する可能性があると見ており、政府が検討を進める中小企業減税や雇用調整助成金特例措置の期限延長等の対策を速やかに実施することが必要です。
ただし、こうした状況も企業活動が戻れば再び人材不足に陥るおそれがあります。毎月の有効求人倍率をみると、コロナ禍でも建設業、製造業、介護・保健分野などで人手不足が続いています。
人手不足は働く人に長時間労働や休日出勤を強いたり、ストレスや過労で仕事のパフォーマンスが低下させたりする状況をつくってしまいます。長期的に見ると、社員が長く働き続けにくい職場となります。
人手不足の原因としては、次のようなことが挙げられます。
とくに、経営体力の乏しい中小企業は、人件費アップに見合うだけの売上高の確保が難しく、最低賃金引き上げなどの上昇圧力が資金繰りを直撃しています。厚生労働省が2019年(令和元年)に発表した「労働経済の分析」は人手不足に悩む企業の課題を次のように指摘しています。
「求人募集時の賃金を引き上げる」「中途採用を強化する」といった外部労働市場から人材を確保する「外部調達」や、「現従業員の配置転換」「定年の延長・再雇用による雇用継続」「現従業員の追加就労」のように、企業内でマンパワーを確保する「内部調達」などに取り組んでいる企業が多い一方、「省力化・合理化投資」「離職率の低下改善に向けた雇用管理の改善」「従業員への働きがいの付与」といった人材の調達以外の方法で人手不足の緩和を目指す「業務の見直し等」に取り組む企業は相対的に少ない。
労働経済の分析
そこで、厚生労働省が人材確保に悩む企業に訴えているのが「従業員の視点に立った魅力ある職場づくり」です。調査結果(PDF形式:1.17MB)をもとに次のメリットを挙げています。
「従業員と顧客満足度の両方を重視する」という経営方針を持つ企業は、「顧客満足度のみを重視する」という企業と比べ、売上高営業利益率、売上高ともに「増加傾向にある」とする割合が高くなっています。また、人材確保状況(正社員)についても、「量(人数)・質ともに確保できている」とする割合が高くなっています。
「魅力ある職場づくり」のための取り組みの実施期間が長い企業ほど、売上高営業利益率および売上高が「増加傾向」とする割合が高くなっています。また、正社員の人材確保についても、「量(人数)・質ともにできている」とする割合が高くなっています。
厚生労働省は人材確保につながる「魅力ある職場づくり」の具体的な取り組みとして次のようなことを挙げています。ただし、整備には時間がかかります。
地方の中小企業や老舗企業でもこうした取り組みをしています。岡山市で中小企業の働き方改革を支援する「WORK SMILE LABO」(ワクスマ)は、早くからテレワークを導入。求人票に「在宅ワークを活用した柔軟な働き方が出来ます」と追記すると、中途の求人が前年の3倍ほどに増えました。新卒採用でも、テレワークを中心とした新しい働き方に取組んでいることを伝えた結果、2020年度の岡山県内の新卒採用ランキングで4位にランクインしました。
必要なことは制度づくりだけにとどまりません。長崎市の「福徳不動産」は、面接や社内見学を通して一人ひとりとじっくり話し、やりたいことと得意なことを確認。「利益を重視する」という社長の考え方に共感し、自分なりのビジョンを持つことのできる人だけを採用した結果、売り上げだけでなく、人材の定着率も高まったといいます。
魅力ある職場づくりに向けて活用できる助成金があります。厚生労働省の「事業主の方のための雇用関係助成金」のなかから自社に合う助成金を探してみてください。
雇用管理制度の導入等に取り組む企業を支援します。
介護福祉機器の導入等に取り組む企業を支援します。
介護・保育労働者に対する賃金制度整備等に取り組む企業を支援します。
非正規雇用労働者の正社員化や賃金規定等の増額改定、正規雇用労働者との賃金規定・諸手当制度の共通化等の取組を支援します。
通常の業務を離れて行う社員訓練(OFF-JT)や通常の業務の中で行う社員訓練(OJT)について、経費や訓練期間中の賃金の一部等を助成します。
育児休業の円滑な取得・職場復帰の支援や代替要員の確保を行った企業を支援します。
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