目次

  1. 決算書は何のためにあるのか
  2. 決算書類の法的な位置づけ
    1. 会社法
    2. 金融商品取引法
    3. 法人税法
  3. 決算書3種類の特徴と違い
    1. 貸借対照表
    2. 損益計算書
    3. キャッシュフロー計算書
  4. 経営に関係し合う3つの書類
    1. 事業を始める際の資金準備
    2.  準備した資金を使う
    3. 売上が計上される
  5. 決算書は何のために使うのか
  6. 決算書を理解して経営状態を把握

 経営者らのセミナーなどで「決算書を読むのが得意ですか?」と聞くと、70%くらいの方が苦手だと回答します。では、なぜ決算書を読むのが苦手なのでしょうか。考えられる理由は以下の通りです。

  • 専門用語が多い
  • 数字の意味が分かりづらい
  • 決算書の何を見れば良いか分からない

 これらの問題が解決できたら、以下のことが期待されます。

  • 決算書に書いてある数字の意味を理解できる
  • 自社の業績を常に把握できる。
  • 今後の数値計画を立てやすくなる

 決算書を使った現状把握は、経営者の必須事項で、今後の事業を拡大させる第一歩です。これから決算書とは何かを、一つずつ説明していきます。

 決算書類について関する法律は、「会社法」「金融商品取引法」「法人税法」の3つです。なぜ3つあるかというと、それぞれ決算書を作る目的や、提出する書類が変わってくるからです。

 会社法では、第435条で計算書類を作るように定められています。計算書類とは、貸借対照表や損益計算書などのことです。計算書類を作る目的は、会社に出資している株主へ、1年間の業務を報告するためです。

 金融商品取引法は上場会社に対して、決算書類に関する決まりを設けており、第24条では、財務諸表を含む有価証券報告書に提出しなければならないとあります。投資者やこれから投資する人たちへの報告が目的です。

 先ほどの会社法には計算書類と書いてありましたが、財務諸表は計算書類と似ているものとご理解ください。貸借対照表や損益計算書、キャッシュフロー計算書などがこれに該当します。

 法人税法では第74条に、事業年度が終わってから2カ月以内に、決算にもとづく申告書を税務署長に提出するように定められています。ここで書かれている申告書も、先ほど紹介した2つの法律とほぼ同じものと理解してください。貸借対照表や損益計算書などが、これにあたります。

 決算書に関する法律を簡単にまとめると、以下のような表になります。

決算書に関する3つの法律のまとめ(以下に紹介する画像はいずれも筆者作成)

 決算書の中で特に重要なのが、貸借対照表と損益計算書、キャッシュフロー計算書の3つです。なぜかというと、会社が今儲かっているのか、お金が残っているのかを示す書類だからです。これから、それぞれの書類がどんな意味を持っているかを解説します。

 貸借対照表とは、ある一時点での財政状態を表したものです。一般的に以下のような図で示されます。

貸借対照表のイメージ図

  まず貸借対照表を真ん中で分けます(AとB・Cに分ける)。表の左側にある資産の部(A)は、会社に現在どんな財産があるかを表したものです。現金や預金、会社の建物や機械などがこれに該当します。

 表の右側(BとC)は、どこから資金を調達したかを表しています。

 負債の部(B)は、自分以外の第三者から資金調達した場合、こちらに計上されます。例えば、銀行や親族からお金を借りた場合が該当します。純資産の部(C)は、自分が出した会社自体のお金を表します。例えば、資本金や会社の利益がこちらに計上されます。

 貸借対照表は、左側の合計金額(A)と右側の合計金額(BとC)が、必ず一致するように作られています(A=B+C)。貸借対照表は、左右の合計額が一致することからバランスシート(Balance Sheet、略してB/S)とも呼ばれています。

 損益計算書は1年間の業績を表したものです。一般的に以下のような表で示されます。

損益計算書のイメージ

 例えばパン屋を例にしてみましょう。パンが売れた場合、①売上高に計上されます。パンを作るために仕入れた材料は②売上原価に入ります。①から②を引いたのが③の売上総利益(粗利)です。

 ③売上総利益から店舗の運営にかかった様々な費用を引きます。例えば、店舗の家賃や従業員の給与、広告宣伝費などは④販売費および一般管理費に計上されます。③から④を引くと、⑤営業利益が出ます。営業利益は会社の本業で発生した利益です。

 本業以外で臨時収入があった場合は、⑥営業外収益に計上されます。パン屋を始めるのに銀行から借入をした場合、返済をするときに元金と利息を支払います。そのうちの利息が⑦の営業外費用に該当します。

 ⑤営業利益から⑥営業外収益を足して、⑦営業外費用を引くと、⑧経常利益、つまり1年間の経営活動による利益が計算されます。

 もし、お店にある機械が壊れて処分した場合などイレギュラーな出来事が発生した場合には、⑨特別利益(損失)に計上されます。

 ⑧経常利益から⑨特別利益(損失)を計算(プラスまたはマイナス)すると、⑩税引前当期純利益、すなわち税金を計算する際に使われる数値が計算されます。

 ⑪法人税等で税金が計算されて、⑫当期純利益が計上されます。この当期純利益が次の期へ繰り越す金額になります。

 損益計算書は、英語でプロフィットアンドロスステートメント(Profit and loss statement)と言われ、略して「P/L」と書くことがあります。

 キャッシュフロー計算書は、1年間のお金の流れ、すなわちキャッシュフローを「営業活動」「投資活動」「財務活動」の3つの面に着目して分析する表です。

キャッシュフロー計算書のイメージ

 営業活動によるキャッシュフローは、本業の営業活動の結果、どのくらいお金が増えたかまたは減ったかを表しています。

 投資活動によるキャッシュフローは、例えば機械や車両など固定資産の購入または売却など、本業を行うために投資をどのくらい行ったかを示しています。財務活動によるキャッシュフローは、借入や株式の発行など資金調達をどのくらい行ったかを表すものです。

 以上の決算書面については、次回以降の記事で詳しく説明します。

 貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書は、別々に捉えるものではなく、それぞれが関わり合っています。自分で飲食店を始める場合を例に、以下の図表を見ながら考えてみましょう。

貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書が関係するイメージ図

 開店資金は自分で出資する場合もあれば、銀行や親族などから借りる場合もあります。自分で出資する場合は純資産(①)、銀行などから借入する場合は負債(②)に計上されます。同時にキャッシュフロー計算書の財務活動によるキャッシュフローも増加します(図②‘)。

 準備した資金を使って飲食店を開くとすれば、店舗で使う器具、材料の仕入れ、広告、家賃、従業員への給与など、様々な用途でお金を使う必要があります。

 店舗で使う機械を購入した場合は資産の部に計上されます(③)。同時にキャッシュフロー計算書の投資活動によるキャッシュフローも増えます(③‘)。

 これに対し、材料や広告、家賃、給与に関する費用は損益計算書に計上されます(④)。

 飲食店を開業して売上が発生すると、損益計算書に計上されます(⑤)。その時に入った現金は貸借対照表の左側にある資産の部に計上されます(⑥)。同時に、キャッシュフロー計算書の営業キャッシュフローがプラスになります(⑥‘)。このように事業活動をしていくことによって、3つの帳票は関連づけて動いていきます。

 ここまで決算書の主な中身について簡単に説明しました。では、決算書は何のために使うのでしょうか。会社の内部と外部に分けて考えてみましょう。

 会社の内部では、数値の管理や今後の事業計画の立案、実行のために使われます。これに対して会社の外部では、銀行からお金を借りる時や税金を納める時、株主への業績報告をなどで使われます。

決算書を使う目的

 ここまで決算書について一通り説明しました。決算書を読めるということは、自分の会社の経営状態を把握し、自分の言葉で説明できることにつながります。

 次回以降の記事で、貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書のどこに注目することで、自社の経営状態を把握できるかをお伝えしたいと思います。