「段ボール箱なんてどこでも同じと思われている。うちはちょっと違うんですよ」。西田耕平社長(54)は力を込める。色鮮やかな写真印刷技術やインスタ映えするオリジナルパッケージ、中の商品を出さずにそのまま店頭に陳列できる箱など、顧客の要望に応え、小ロットで多品種生産が持ち味だ。「大手には、価格では勝てない。とことん差別化し、サービスで勝つしかない」。コスト削減や売り上げ増など、いかに客の課題を解決できるか。営業担当者が客への提案を社内で発表する場を設けるなどして、営業力向上を図っているという。

 ただ、段ボール箱の世界は、業者も多く競争は厳しい。そこで、西田社長が2006年に打ち出したのが、「物流のパイオニアを目指す」という新ビジョン。取り組んだのが、航空貨物の輸出梱包事業だ。2008年に関西空港内に、2014年には成田空港近くに拠点を設けた。輸送中の衝撃や振動などに耐えられるように段ボールや木箱、木枠などで貨物に梱包をほどこす。貨物は、化学原料、医薬品、精密機械など様々。厳しい温度管理が求められる貨物もあるため、マイナス20度など定温庫を設けている。また、東西に拠点を持つことで、自然災害などでどちらかの空港が使用不能となった場合でも、片方が運用可能であれば対応できるという。

小ロットで多品種生産のため、工場内は手作業も多い
小ロットで多品種生産のため、工場内は手作業も多い

 さらに、力を入れるのが、クール事業だ。なかでも一押しは、約3年かけて開発した折りたたみコンテナ「Coolone(クールワン)」。「組み立て時間9秒」とうたい、従来品より簡単に組み立てられ、プラスチック製で、耐久性にも優れている。断熱素材としてウレタンを使っており、冷凍品の場合、ドライアイスを使わず、専用保冷剤でマイナス15度以下を8時間キープすることが可能という。洗って使え、衛生的な点もポイントだ。カット野菜の鮮度を保ち、シャキシャキ感を維持できるとして、ハンバーガーチェーンでも導入されているという。

 「箱を売るのではなく、温度を売る」として、客の要望に応じた資材開発に取り組む。西田社長は、「クールの輸送は裾野が広い。世界のスタンダードを目指したい」と意気込んでいる。(2020年11月21日付け朝日新聞地域面に掲載)

ワコン

1951年、和歌山梱包輸送として創業。年間売り上げは、グループで約25億円、従業員約120人。同社ホームページで梱包や箱など様々な提案の事例を紹介している。