100種の野菜を育む栄養液 ワダケンが植物の繊維から抽出技術を確立
間引かれた竹やサトウキビの搾りかすといった自然素材を原料とする栄養液が、野菜の栽培や芝生の養生に使われている。開発したのは滋賀県栗東市の「ワダケン」。自社農園では、旬にこだわった100種類以上の野菜をこの栄養液で育て、ホテルのフランス料理店でも提供されている。(鈴木洋和)
間引かれた竹やサトウキビの搾りかすといった自然素材を原料とする栄養液が、野菜の栽培や芝生の養生に使われている。開発したのは滋賀県栗東市の「ワダケン」。自社農園では、旬にこだわった100種類以上の野菜をこの栄養液で育て、ホテルのフランス料理店でも提供されている。(鈴木洋和)
栄養液は「リアルソイルリキッド」。植物の繊維の中には、成長するための栄養分が蓄えられている。もみがらや米ぬかにもある。これを取り出して液体化し、リキッドをつくっている。
水で薄めて葉や根元にかける。糖類やミネラルなどを含んでおり、植物が取り込めば活性化するという。全国約800のゴルフ場のほか、県内外の9カ所の契約農家などで活用されている。
社長の和田賢(まさる)さん(61)は大学卒業後に12年間、甲賀市のゴルフ場で芝生や土壌の管理を担当し、植物を育てる基礎を学んだ。当時は、肥料や農薬を使って植物を育てるのが当たり前だった。しかし、山林では人間が何もしなくても植物が育つ。和田さんは、植物の体内に蓄えられた栄養分が植物を育てると考えた。
剪定(せんてい)後の枝や葉を微生物に分解させた堆肥(たいひ)はすでに商品化されていたが、土に混ぜることしかできない。もっと便利な使い方をできるようにしたい。ゴルフ業界以外で自分の力を試したいとの思いもあり、36歳の時にゴルフ場を退職してワダケンを設立した。
会社設立後、繊維の中から栄養分を取り出す方法を1人で研究。もみがらや米ぬか、サトウキビの搾りかすなどを使ってテストを重ねた。8年後、抽出技術を確立した。
「リアルソイルリキッド」は2005年に発売。ゴルフ場で使ってもらおうと営業に行ったが、最初は「そんなもんで育つのか」と信じてくれなかった。無料で使ってもらい、定期的に訪れて根の張り具合などを確認した。成果をゴルフ場の担当者に示し、信頼を得た。
2012年、栗東市内に自社農園をつくった。農薬や化学肥料、動物性堆肥を使わず、リアルソイルリキッドだけを使う。栽培した野菜は、びわ湖大津プリンスホテルのフランス料理店などの食材になっている。
同ホテルの担当者は「シェフが畑に足を運び、食べたカリフラワーは生でも大変おいしい。本来の野菜の甘みだけでなく、コクがあり、えぐみが少ない」と太鼓判を押す。和田さんは「安全で新しい農法を確立させたい」と意気込んでいる。(2021年2月6日朝日新聞地域面掲載)
「リアルソイルリキッド」は、原料がサトウキビや大豆など20種類以上ある。価格は250ミリリットル入り820円(税込み)から。自社農園や契約農家でリキッドを使って栽培した野菜は、栗東市のアンテナショップなどで販売する。年商は約2億円。従業員数21人。
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