星野リゾート・トヨタ・ユニクロ・・・後継ぎ社長がコロナ禍で描く戦略
コロナ禍に立ち向かう有名企業には、ファミリービジネスの後継ぎ経営者も少なくありません。後継ぎたちが、ポストコロナ時代を見据えて描く経営戦略について、まとめました。
コロナ禍に立ち向かう有名企業には、ファミリービジネスの後継ぎ経営者も少なくありません。後継ぎたちが、ポストコロナ時代を見据えて描く経営戦略について、まとめました。
コロナ禍で観光業が大打撃を受ける中、積極的な事業展開を仕掛けているのが、同社は国内外で48の宿泊施設を運営する星野リゾート代表の星野佳路さんです。前身の星野温泉の後継ぎとして生まれた星野さんは、父との対立の末、経営者となり、経営難のリゾート施設を数多く救って、事業を広げてきました。
星野さんはコロナ禍を受けて、自宅近隣への観光需要を促すマイクロツーリズムを提唱しています。2020年7月、ツギノジダイのインタビューでは「コロナで4.8兆円のインバウンド市場が無くなりましたが、アウトバウンドで使っていたとみられる3兆円は国内市場にシフトします。ロスは差し引き1.8兆円で、その額は観光市場全体(約28兆円)の7%に過ぎません」と強調し、次のように話しました。
「インバウンド市場の消失を深刻に考えるのではなく、日本人の国内観光をどのくらい戻すかに集中することが重要です。緩和期に入ったときには、日本国内の近場から観光に行くようになります。日本人の海外旅行で生じるはずだった需要を足せば、大きなマーケットになるでしょう」
その言葉を裏付けるかのように、2021年には、鹿児島県霧島市で温泉旅館「星野リゾート 界 霧島」を開業するなど、事業を加速させています。2022年には、JR新今宮駅前で建設中の大型ホテル「OMO7(おもせぶん)」を開く予定です。
通販大手のジャパネットたかたは2015年、創業者の高田明さんに代わり、長男の旭人さんが社長に就任しました。自社運営の通販番組に出演して、独特の語り口で話題を呼んだカリスマ経営者の明さんとは異なり、旭人さんは自社の番組には出演せず、社員の主体性を引き出す「チーム型経営」へと、かじを切りました。就任後の業績は右肩上がりで、親会社のジャパネットホールディングスの年商は、2019年12月期に2076億円となりました。
2020年11月には、感染リスクの回避などを目的に、東京に置いていた人事や経営管理などの主要機能を、福岡市中心部の天神に移すことを発表するなど、コロナ時代を見据えた経営スタイルを展開しようとしています。
2009年に創業家出身として、14年ぶりの社長となったトヨタ自動車の豊田章男さんは、日本で最も著名な後継ぎと言えるでしょう。2021年には、自動運転や人工知能(AI)開発などの最先端技術の研究を進める実験都市「ウーブン・シティ」の建設を、静岡県裾野市で始めました。
朝日新聞の報道によると、ウーブン事業には豊田さんの私財を投じたといいます。ウーブンの事業会社の代表取締役には長男の大輔さんが就任しました。「豊田家」として、産業の構造変革に取り組む本気度が伝わります。
豊田さんは2019年6月の株主総会で、株主から自身の後継者に関する質問が出た際、こう語っています。「トヨタは、もはや社会の公器。豊田という姓があろうがなかろうが、誰が社長になったとしても、大切なことは、創業の原点を見失わず、未来の笑顔につながることを、年齢を刻むかのごとく積み重ねていくということだと思っています」
ファストファッションを展開するファーストリテイリング(ユニクロ)の柳井正会長兼社長も、父親が山口県で開いていた紳士服販売業を世界的ブランドに育てた「後継ぎ経営者」です。2020年11月、朝日新聞のインタビューで、香港や台湾を含めた中華圏に年100店ペースで出店していく考えを明らかにしています。
インタビューによると、コロナの影響でカジュアル化の流れが世界中で起きているとみており、「在宅勤務をするということは、家にいながらでも、それなりの格好をするということ。家でも会社に行くときでも着られるうちの服がぴったりだ。服屋のなかで一番いいポジションにいる」と意欲を見せています。
日本を代表する後継ぎ経営者たちは、コロナ禍でもビジネスへの意欲は全く衰えず、むしろ新たなビジネスの機会を広げようとしています。中小企業の後継ぎ経営者にとっても、目が離せない動きとなりそうです。
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