下の写真にある「未対応」を集めたパソコン画面を見てみましょう――

「Re:lation」のイメージ画面(インゲージ提供)

 《メール 展示会の会場はどこ?》
 《ツイッター まだ在庫ありますか?》
 《LINE 質問いいですか?》

 会社のチーム全員がこの画面を共有できます。対応しようとしているスタッフが誰か分かります。AI(人工知能)が、返信する文面の候補を薦めてくれます。上司が文面を修正して差し戻したとき、スタッフへのアドバイスをつけられます。

 すべての作業はどこにいてもできますので、リモートワークにばっちりです。

 この「Re(リ):lation(レーション)」と名づけられた問い合わせ窓口を一元管理できるサービス。6年間で利用企業は10倍、3000社を超えました。「対応ミスはビジネスチャンスを逃すだけでなく、会社の信用問題になります」と社長の和田哲也さん(54)。メールやラインから来る問い合わせはネット時代の接客。そのミスは、あっという間にネットで広がります。

 すべては、和田さんの「英語」から始まった。

 大阪の守口生まれ、枚方育ち。英語の勉強から逃げてパソコンばかりしていた。社会人になり、世界中の人と話せたらエエな、と思うように。英語を勉強したいがカネがない。阪急電車の中で外国人を見つけては話しかけ、英語を教えてもらった。

 2002年、大企業のアメリカ駐在となった。急拡大していたアマゾンで商品を注文する。届かないのでメールで問い合わせる。返信がない。来たと思ったら、トンチンカンなことを書いてくる。

 〈問い合わせが急増して対応ができんのやろ、たいへんやな~〉

 何度も何度も、同じようなことがあった。

 〈ITによるコミュニケーション、大切やろ。なってないわ~〉

 そうアメリカで10年間も思い続けて帰国、和田さんは起業したのです。「日本中でおこるビジネスコミュニケーションの問題を、この大阪から解決します」。都市が分散するアメリカで暮らしたから、めっちゃ思うそうです。

 東京一極集中は、あかん!

(2021年7月3日朝日新聞地域面掲載)

インゲージ

 2014年に大阪府茨木市で創業、翌年、大阪市北区に移転。従業員約30人。社名は、ITでつながる(エンゲージメント)から。総務省の「テレワーク先駆者百選」に選ばれ、大阪市の「女性活躍リーディングカンパニー」の認証を受けている。