「行ったら満車」駐車場の困りごとからアプリ開発 原点は甲子園
車を運転していて、「目的地周辺です、音声案内を終了します」とカーナビが言います。着いたぁ。でも駐車場がありません。街にコインパーキングは増えましたが、ここも満車、あそこも満車。目的地からどんどん離れていきます。「akippa(あきっぱ)」(大阪市)のアプリを使っていたら良かった、かも。(編集委員・中島隆)
車を運転していて、「目的地周辺です、音声案内を終了します」とカーナビが言います。着いたぁ。でも駐車場がありません。街にコインパーキングは増えましたが、ここも満車、あそこも満車。目的地からどんどん離れていきます。「akippa(あきっぱ)」(大阪市)のアプリを使っていたら良かった、かも。(編集委員・中島隆)
仕組みは、ドライバーがアプリを使って駐車場を予約し、支払いも済ませる。あとは駐車場を利用するだけ。駐車場のオーナーにはakippaからお金がいく。
ただいま予約できる駐車場は全国に累計4万7千カ所。コインパーキングや月決め駐車場だけでなく、ホテルや個人宅もカバーしている。駐車場のオーナーにとっては、空いている駐車場の有効活用になる。だからドライバーは安く借りられるし、オーナーにはお金が入る。
2014年にこのサービスを始めた創業社長、金谷元気さん(36)は言う。
「利用できる駐車場は毎月1千台分ずつ増えていて、業界を開拓しています」
強さは全国1千社あまりの代理店。地域の事情を知っている代理店が丁寧にオーナーを営業して回っているのだ。
金谷さんは、大阪府柏原市の出身。Jリーガーを目指したが、22歳で夢をあきらめた。IT会社に就職後、24歳のとき、大阪市の自宅のワンルームマンションで起業。携帯電話の販売を始めた。
2013年、28歳のとき。電気のようになくてはならないサービスを始めたいと考えた。当時の従業員20人ほどで、生活での困りごとを200個、書き出した。その中に「駐車場が現地に行って初めて満車と分かるので困る」とあった。
金谷さんは小学生時代を思い出した。祖父母と車でよく阪神タイガースの試合を見に行った。駐車場がなくて甲子園球場から遠いところにしかとめられなかった。
〈球場へ歩いていると、こっちにも、あっちにも空いている駐車場があったっけ〉
そして、いまの事業を始めたのである。
あるお年寄りが小学生の孫の運動会を見たかった。けれど、車いすだったので車でしか移動できない。小学校近くの駐車場はいつも満車で行けなかった。孫が小学6年、最後のチャンス。akippaのサービスを利用して、孫の雄姿を見ることができた。
そんな声が、金谷さんたちのモチベーションを上げる。「私たちは会いたいをつなぎます」(2021年9月11日朝日新聞地域面掲載)
本社は大阪市浪速区。従業員81人。大手商社、メガバンク系の基金などからの出資額は計約20億円。社名は「空きスペースの空きっぱなし」からくる。サービスの利用会員数は累計230万人。プロ野球やJリーグなどのスポーツクラブと提携し、試合のときの駐車場確保などもしている。
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