ネット炎上を防ぐためのチェック方法とは 中小企業向けの対策を解説
SNSなどによるネット炎上のスピードが増しており、放置すれば企業活動に甚大な影響を与えかねません。中小企業向けの炎上対策を考えるシリーズ2回目は、自社に関するネット上の書き込みをチェックする「モニタリング」の方法について、詳しく解説します。
SNSなどによるネット炎上のスピードが増しており、放置すれば企業活動に甚大な影響を与えかねません。中小企業向けの炎上対策を考えるシリーズ2回目は、自社に関するネット上の書き込みをチェックする「モニタリング」の方法について、詳しく解説します。
目次
前回は、実際に起きた企業のネット炎上事例を取り上げ、どの規模の企業にも起こりうるリスクであることを紹介しました。今回からは、中小企業が取り組むべき、具体的なSNS炎上対策について、解説していきます。
昨今のネット炎上は、拡散のスピードが大変速いのが特徴です。初動が遅れると、どんどん拡散が進み、手がつけられない状態になります。ニュースメディアはSNSの情報に目を光らせ、話題性があると判断すればすぐに取材し、記事にします。
以前は、ネットメディアにその傾向が見られましたが、最近では、テレビの情報番組でも、SNS発のネット炎上騒動を扱うことが増えました。ハラスメントや危険運転、内部告発やバイトテロなど、様々な事案が報じられています。
経営者や後継ぎの皆さんが、ネット炎上と聞いてまず思い浮かべる事案の多くは、報道で目にしたものでしょう。つまり、報道されてしまったら、もう周知の事実となってしまうのです。
ネット炎上対策で重要なのは、「早期の発見と対応」です。仮にニュースメディアから取材が入ったとしても、その時点で適切な対応ができていれば、報道されないか、報道されても逆に高い評価につながることもあります。早期に対応するための事前準備は、次回以降にさせていただき、今回は「早期発見」に必要なモニタリングを紹介します。
モニタリングとは、ネット上で自社に関係する書き込みを調査すること、いわゆる「エゴサーチ」です。炎上の種はネット上のどこに発生するかわかりません。調査するメディア(サイト)の数が多いほど網羅性が高まる一方、幅広く調べるのは、とても労力がかかります。では、中小企業のようにリソースが限られる中で対応するには、どうすればいいでしょうか。
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筆者が属する企業が提供するような、ネットモニタリングの専用ツールやモニタリングの代行サービスの利用も手段の一つですが、コストがかかるのも事実です。
もちろん、ネット炎上による損失を考えれば、決して高い金額ではありません。しかし、特に中小企業の経営者や後継ぎの皆さんにとって、起こるかどうかわからない炎上リスク対策にコストをかけることは、抵抗があるでしょう。
しかし、コストをかけずともできることはあります。今回はコストをかけなくてもモニタリングができる方法を解説します。まだ何もSNS対策ができていないという方は、ぜひここから実践してみてください。
まず、ネット炎上が拡散されていくのはツイッターです。ツイッターは非常に拡散力が強く、ネット炎上の種がどこのメディアで発生しても、多くはツイッターに転載されることで拡散していきます。
つまり、ツイッターをモニタリングしていれば、仮に自社のネット炎上の種がそれ以外のメディアやSNSで発生したとしても、その多くは発見できます。自社内で担当者を決めて、少なくとも1日1回は自社について、ツイッターでエゴサーチをしていただきたいのです。
ツイッター内には、検索機能があります。ここに、自社名や自社のブランド名、商品名などを入力し、検索してみてください。検索キーワードが含まれているツイートが一覧で表示されるので、その内容をチェックします。
代表者の名前や、当て字、伏せ字もチェックしておくと、良いでしょう。これを1日1回の定例業務とするのです。
当て字というのは、自社名の読みに別な漢字などに当てはめるものです。「よろしく」ならば「夜露死苦」と書くと言えばわかりやすいでしょうか。
ネット掲示板などでは、よくこのような表現で企業について記述されます。伏せ字というのは、名前の一部を○などの記号で表記することで、「よろしく」ならば「よ○しく」のようなものです。
また、一般的にエゴサーチを定例業務としている部署は、広報や総務、経営企画が多いようです。
特に社名やサービス名称が一般的に使われる単語と同じ場合は、「高度な検索」という機能が便利です。複雑な検索条件で設定できるので、モニタリングの効率を上げることができます。
例えば、社名が「株式会社ゴリラ」だったとします。その場合、この社名だけで検索すると、「今日、動物園に行ってゴリラを見た」というように、「株式会社ゴリラ」に関係のない、「ノイズ」にあたるツイートも多く出てきてしまいます。
その際は、「次のキーワードを含まない」という欄に「動物園」と入れて検索することで、「動物園」というキーワードが含まれているツイートは、検索結果に表示されなくなります。このような方法でノイズを減らすのも、モニタリングのコツのひとつです。
最近は、グーグルマップにひもづいた、クチコミへの投稿が増えています。炎上までには至らなくても、利用客が不満に感じたことなどが書き込まれます。
実店舗を持っている企業は、ぜひクチコミも調べてください。グーグルで店舗名を検索すると、検索結果としてクチコミも出てくるので、その内容をチェックします。
ツイッターやクチコミなどで、自社にとってリスクがある書き込みを見つけた場合、どうすれば良いのでしょうか。
結論から言えば、事実確認をして、対応策を用意し、実行することになります。事案の発生から24時間以内の対応が必要です。
どのようなケースであっても、書き込みが事実かどうか、きちんと確認しなければいけません。その結果、内容が事実であり、企業として謝罪する必要があるなら、誰に対して謝るのかを明確にし、誠実に対応する必要があります。
書き込み内容が事実ではない場合は、業務妨害などを理由とした法的手段を講じる必要があるかもしれません。発信内容が事業活動にどのようなインパクトを与えるかを見極め、影響の大きさによって対処法を変えなければいけません。
フォロワーが少人数で拡散の可能性が極めて低いなど、影響が小さいものは静観するという選択もあります。その判断を短時間でおこなうために、事前準備が必要なのです(事前準備については、次回以降に解説します)。
SNSなどへの書き込みは消せない、という前提で考えて下さい。仮に元の投稿が消せたとしても、その内容はスクリーンショットなどで保存され、また新たな投稿につながることもあります。
「都合が悪いことを隠した」と思われてしまうことにも、つながりかねません。書き込まれるだけでなく、自社による不適切な発信が、問題となってしまうこともあるでしょう。
その場合は取り下げたり、訂正したりする必要があります。ただ、決してしれっと消したり、修正したりしないで下さい。単に消すだけではなく、消した理由をきちんと説明しなければいけません。
少し話がそれますが、最近「悪い投稿を消しますよ」という詐欺行為があるとも聞きます。「御社にとって良くないクチコミがあります。成果報酬で消しませんか」という営業電話がかかってくるそうです。
クチコミは、書いた本人か運営元しか削除できません。名誉毀損が明らかな場合など、法的手段による運営元への削除要請は、当事者か弁護士にしかできません。
それ以外は、サイト上からの削除要請となりますが、簡単に削除されるものではありません。削除を持ちかけてくるような業者は、その業者自身が書き込んだ投稿を、自ら削除しているだけではないかと言われています。
自社にとって良くない投稿を目にすれば、消してしまいたいという気持ちも理解できますが、投稿は消せないものという認識を持ち、悪質な業者にご注意ください。
今回はモニタリングについて解説しました。SNSの利用は休日や深夜に多いことを考えると、本来は営業時間外のモニタリングも必要かもしれません。
拡散スピードを考えると、モニタリングは1日1回では足りないかもしれませんが、もし自社に関する書き込みを定期的にチェックする習慣がないならば、ぜひそこから習慣化してみてください。
モニタリングで見つかるクチコミの多くは、必ずしもネット炎上に直結するものばかりではありません。お客様の生の声なので、ビジネスのヒントや改善すべき点が発見できることもあります。
時には、自社を高く評価している投稿も見つかるでしょう。良い投稿を現場に共有すれば、モチベーションのアップにもつながります。ビジネスの拡大にも、SNSのモニタリングをご活用ください。
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