目次

  1. 改正電子帳簿保存法とは 電子保存の義務化、実質2年延長
  2. 改正電子帳簿保存法の対応時期を考える4つのポイント
    1. 税務調査への準備
    2. コスト
    3. 導入までの期間
    4. インボイス対応との調整
  3. 改正電子帳簿保存法の対応スケジュールの例
  4. 2年間の猶予期間をうまく利用して価値ある電子化を

 電子帳簿保存法とは元々、紙ベースが基本であった国税に係る帳簿書類の保存について、コストや事務の負担を軽減するため、電子データでの保管を認めようと1998年7月に施行された法律です。

 2022年(令和4年)1月の改正により電子取引をした場合は、電子データの形での保存が義務となりました。ただし、電子保存の義務化について、企業の準備が進んでいないこともあり、2023年12月末まで2年間猶予されることになりました。

 2年間の猶予期間の発表を受け、各企業が今後どのように対応を進めようとしているのか、Deepworkは下記のアンケートを実施しました。

調査概要

調査方法:インターネット調査

調査名:電子取引情報の電子保存義務化に関するアンケート

調査期間:2021年12月15日~2021年12月20日

調査対象者:過去にinvoxセミナーに参加、資料をダウンロードした方、過去にDeepworkが名刺交換した方(約6割が経理部門、情報感度が高い傾向を想定)

有効回答数:453人

 すると、「2022年1月1日から運用をはじめる」が26.5%、「2022年中に運用をはじめる」が24.9%、あわせて51.4%が2022年に電子取引情報の電子保存の運用をはじめると回答しています。

 一方で運用開始時期について32.5%の方が「まだ決まっていない」と回答しており、いつから対応を始めるか判断に迷っている様子が読み取れます。

「主なお勤め先では、電子取引情報の書面保存廃止について、いつから運用をはじめる予定ですか(回答数: 453)」への回答結果

 Deepworkにも対応時期の相談が寄せられています。対応時期を検討するには以下の4つの要素で整理することをお勧めしています。

  1. 税務調査への準備
  2. コスト
  3. 導入までの期間
  4. インボイス対応との調整

 2022年1月1日~2023年12月31日までは猶予期間となりますが、2022年1月1日から義務化はスタートしています。

 猶予期間を適用するには「税務職員から確認等があった場合には、対応状況や今後の見直しなどを、具体的でなくても説明できるようにしておく」という条件を満たす必要がありますので、簡単なもので良いので説明の準備をしておきましょう。

 さきほどのアンケートで電子取引情報の電子保存の運用開始時期について「対応しない」「まだ決まっていない」とした回答者を除いて、どのように対応する予定か尋ねたところ、何らかサービスを導入して対応するという回答が58.5%でした。

 対応に労力をかけるより、多少費用がかかっても効率的に対応したい方が多く、企業規模が大きくなるとよりその傾向が強くなっています。

電子取引情報の書面保存廃止への対応は何らかサービスを導入して行いますか(回答数:299)

 システムを利用する場合はシステムの利用料、システムを利用しない場合も対応業務のコストが発生するのでなるべく遅くしたいという意思が働きます。対応を先延ばしにした結果スケジュールが厳しくなるという事が無いように、検討までは早めに進めておきましょう。

 影響する業務は広く、関係者も多いため、運用検討からサービス選定には1~3カ月の期間を見ておく必要があります。また、部分的(一部の情報や部門)に運用をして課題を解消してから全社展開を行う場合はさらに3カ月ほど見ておく必要があります。

 もうひとつ経理に関係する大きなイベントとして2023年10月に始まるインボイス制度が待っています。通常業務に加えて電子帳簿保存法の対応とインボイス制度の対応が重なるのは避けた方が良いでしょう。 

 これら4つの要素を加味すると、対応スケジュールは下記のようなイメージになります。

電子帳簿保存法の改正とインボイス対応のスケジュールのイメージ

 マイルストーンは大きく2点。2024年1月1日からスタートする電子取引情報保存の完全義務化と、その3カ月前の2023年10月1日から始まるインボイス制度です。

 インボイス制度が始まる前後3カ月はインボイス制度対応に空けておきたい期間となります。また、電子帳簿保存法対応の検討には経理の方の関与が必要になりますので決算期などの繁忙期は避け、運用検討やサービス選定に1~3カ月、部分的に稼働させてから全社展開したい場合はさらに3カ月ほどの期間を見る必要があります。

 このようなイメージで運用開始時期から逆算して計画を立てましょう。

 2022年1月から全社導入の予定で進めていた企業も、猶予期間の発表を受けて、対象の書類や部門を限定し、急ぎの法対応ではない、業務フローまで含めた価値のある電子化へと取り組みを見直しています。

 現在、紙の比率が高く、なかなか電子化が難しいという企業こそ、この2年間を電子化への助走期間として有効に活用して電子化を進めないと、紙保管と電子保管が混在し、法対応はできたけれど業務は以前よりも大変になった……という未来が待っています。

 これから始める連載「電帳法改正の悩みに答えます」では、改正電子帳簿保存法を導入するときに必ず悩むポイントや事例を交えつつ本質的で価値ある電子化に役立つ情報をお届けします。