「右腕は旧友の方が成功しやすい」カスタムジャパンがそう考える理由
「(社長の)右腕は友人の方が、成功確率が上がると思います」。そう話すのは、バイク・自転車部品の会員制プロ向け通販を運営している「カスタムジャパン」(大阪市)の村井基輝代表取締役です。実際に取締役の一人がDJ活動を通じた友人だったといいます。中小企業の後継ぎにとって右腕は友人がよいと考えるに至った経験について聞きました。
「(社長の)右腕は友人の方が、成功確率が上がると思います」。そう話すのは、バイク・自転車部品の会員制プロ向け通販を運営している「カスタムジャパン」(大阪市)の村井基輝代表取締役です。実際に取締役の一人がDJ活動を通じた友人だったといいます。中小企業の後継ぎにとって右腕は友人がよいと考えるに至った経験について聞きました。
事業承継の前後で旧友に入社してもらうべきか否か。目の前の課題解決に一緒に取り組める一方、友人関係に仕事を持ち込んでしまうので関係が壊れやすいといったリスクも考えられます。
Twitterで投稿したところ、村井さんから次のようなコメントが届きました。
村井さんは、バイクパーツ、自転車パーツの販売を手がける家業「日本モーターパーツ」の3代目として事業承継する一方で、カスタムジャパンを立ち上げたのが2005年。カスタムジャパンの梶岡武司取締役は創業の10年ほど前に音楽を通じて知り合った友人だそうです。
「音楽とは具体的にはDJです。当時、DJカルチャーはニッチな世界でした。そんな世界でのつながりでしたのでより親交が深まりました。堅実な金銭感覚や部屋の整理整頓、働くことへの誠実な基本姿勢を身近で見ていたので、人間的にとても信頼していました。さらに、梶岡さんが自動車整備の学校を卒業しており整備士免許を所有しており、新卒で有名な自動車販売店に就職したという背景も大きかったと思います」
詳しく聞いてみることにしました。
―社長の右腕は友人の方がよい理由について教えてください。
↓ここから続き
一般的にスタートアップでは友人の場合、会社が成長すると揉めてしまうといった話が多いと思います。これは対立軸が社長と社長の友人だけとなり、摩擦が発生しやすいからだと思います。
一方、これは私の事例で、万能策ではありませんが、後継ぎが新しい事業に取り組む場合、先代の親や会社の先輩と対立が発生する場合が多いと思います。
具体的には、家業は電話で受注して、トラックで配達するという従来の地域限定の問屋でした。それをEC化するには商品データの作成や新しい業務フローを既存業務の合間や終わってから構築する必要がありました。
既存業務の合間に成果の見えない新しい取り組みをするので、仕事が忙しくなり、摩擦が起こります。また、新しいことに取り組むことでシステムも変更が必要となりますので古参社員はアレルギー反応を示しました。そんななかで結束力が強まり、なんとしても新規事業を成功させようという意欲が増しました。
早めに味方(仲間)を見つけるために人柄などその人の価値観を把握することが大切です。価値観が近い友人の方が、成功確率が上がると思います。
―入社時点でどんな風に伝えましたか?
当時、家業の日本モーターパーツの事務所は、長屋でエアコンなしの現場だったので、募集してもなかなか新たに入社してくれる人が見つかる状況ではありませんでした。
今はこんな状態だが、必ず会社を成長させると約束しました。根拠はありませんが、力強く話をした記憶があります。これも友人だからこそ、本音で力強く話すことができ、さらに現状の実態も包み隠さず伝えることができます。
―入社時に友人関係を終え、引退後に友人に戻れますか?
具体的に老後は友人関係に戻ろうというような話をしたというわけではなく、ベンチャー型事業承継で創業したカスタムジャパンを軌道に乗せた将来に、自分たちが出会った音楽カルチャーを楽しめる空間ができればいいね、と話をしていました。考えてみると友人関係だと関係軸も長期目線で話すことができます。
一緒に仕事をする人を見つけるとき、採用面接だけでは本当の働きぶりまで分かるわけではありません。村井さんへのインタビューを通じて、中小企業の後継ぎが、旧友を右腕にするのは、新しいことに挑戦するとき、信頼できる人物であるという要素が大きいように感じました。
後継者不在の企業をM&Aで引き継いで事業を拡大させている「マルヨシ」(福岡市)2代目の吉塚二朗さんは、一緒にグロービス経営大学院に通っていたときの仲間が事業に参加してくれたことをオンラインイベントで話していました。
授業のなかで家業が抱える課題などを日頃から話し、理解を得ていたことで、事業に参加してもらいやすかったと考えられます。
これまでの友人関係を第一に考えるのであれば、家業に誘うことをためらう後継ぎもいるでしょう。ただし、大きな課題を乗り越えたいとき、村井さんのように同じ目線で取り組める仲間に来てもらうことはかなり心強いでしょう。
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