目次

  1. 新規営業の必要性と発揮するスタンス
    1. 規模の拡大や全マーケット獲得を目指す場合
    2. 市場浸透率が低く需要喚起が必要な場合
    3. 会いたい顧客にリーチできる
    4. 優位な条件で戦える
  2. 新規営業のセオリー
    1. 信憑性
    2. ひとつ対策できたときのインパクトが大きい
    3. 営業プロセスの先にくる
  3. 新規開拓営業はリストが命 勝利をもたらすリストとは
    1. 精度とは
    2. 鮮度とは
    3. 具体性
    4. 絶対数
  4. 顧客の潜在ニーズに迫るには
  5. 立てた仮説を確かめるファクトファインディング
  6. 「中サミ2022」勉強会を開催
  7. 「中サミ2023」、7月に開催決定

 顧客となり得る企業に直接訪問したり電話をかけたりする「アウトバウンド営業」は一般的に、インバウンド営業(顧客の問い合わせ・資料請求を起点とする営業活動)よりも5倍の労力がかかるといわれています。

 にもかかわらず、なぜアウトバウンド営業が必要なのでしょうか。

 アウトバウンド営業が必要な理由はステージやタイミングによって4つあります。もし、みなさんの組織が営業活動で成果を高めることに意識が向いているのであれば、アウトバウンド営業のやり方が浸透できるようになっておくことが大切だと思います。

アウトバウンド営業が必要とされる4つの理由

 1つ目は、規模の拡大や全マーケット獲得を目指していく場合です。業界トップを目指す場合、Webや広告などのインバウンドだけではすべてのターゲットにリーチできません。さらに顧客は既存の取引先から新しい商品を購入することが多いため、待っているだけではマーケット開拓の範囲に限界があるといいます。

 2つ目は、市場浸透率が低く、需要喚起が必要である場合です。市場浸透率は、世の中から必要とされている度合いのことです。商品や課題解決の内容が市場に認知されていなければ、顧客開拓はできません。そこで、アウトバウンド営業で接点を持ち、プッシュの営業をします。

 3つ目として、会いたい顧客にリーチできることです。インバウンド営業の場合、特定の企業から問い合わせてもらえるようコントロールするのは至難の業です。アウトバウンド営業では、簡単ではありませんが、アプローチのルールやリストを磨き込めば実現可能です。

 さいごに、優位な条件で戦いやすくなるのもアウトバウンド営業のポイントです。逆に、インバウンド営業の場合、競合他社とのコンペ案件となり、ライバルと価格などで競争することになりやすいのです。

 新規営業成果を高めるのに一番重要なことは「買わない理由をなくすこと」です。買わない理由に着目したほうがいいと考える理由について、次の三つがあります。

 1つ目は信憑性です。受注数は数が少ないため、例えば共通の知り合いがいて会話が盛り上がるなど、受注の成功には再現性の低い理由が含まれます。一方で、買わないことには理由があるので対策しやすいのです。

 2つ目は、対策できた時のインパクトが大きいことです。売れた理由は顧客によって千差万別ですが、買われなかった理由はある程度カテゴリーに分けられます。買わない理由の対策案をひとつ生み出せた時に、同じ理由で断った顧客の問題を芋づる式に解決することができるため、効率的です。

 3つ目は、営業プロセスの先に来ることです。「売れた」というプロセスは営業活動の最後の印鑑を押したタイミングです。しかし「買われなかった」というのは売れたよりも前の工程でやってきます。電話をかけた時や、初回訪問の第一印象、質問の仕方など、この時点で買われない理由が生まれますので、早く対策できたほうが改善のサイクルは早くなるのではないでしょうか。

勝利をもたらすターゲットリスト

 今井さんは続いて、新規開拓営業の成果を最も左右するのは、営業力ではなく、リストであるといい「勝利をもたらすリスト」として、以下の4つの要素が整っていることだと紹介しました。

  1. 精度
  2. 鮮度
  3. 具体性
  4. 絶対数

 精度とは、ニーズと提供価値のマッチング度合いであり、買ってもらえるリストがきちんと入っているかどうか、ターゲット顧客ではないリストがきちんと除外できているかがポイントです。

 一般的にターゲットリストを作ろうとすると、ウェブサイトから一覧で引っ張ってこようと思うかもしれませんが、効率重視で業種や規模のような入手しやすい企業属性でリスト化、分類化すると、マッチ度に低くなる場合があります。

 鮮度とは、リスト更新の度合いであり、一番良いタイミングで営業できるかどうかをはかる尺度です。顧客とコミュニケーションを取る中でどのタイミングなら邪魔ではないか、買われる可能性が高いかを聞いて記録していくことです。例えば、リスト更新に必要な要素として次のようなタイミングがあります。

  • 予算策定
  • 現在の契約の終了期間
  • 社内の環境変化

 具体性とは、情報のきめ細やかさや正確さを表す指標です。部署、氏名、メールアドレスなどにとどまらず、企業の想定ニーズ、リストのソース、なぜ連絡するのかという訴求内容まで記載します。

 メールのたびに企業サイトを調べ直してトークを考えるのは無駄です。最初に具体性を作り込んでください。

 絶対数とは、目標を達成するために逆算されたアタック数を担保できるリストを用意しておくことです。

 講演の話題は、顧客の潜在ニーズへの迫り方へと移ります。営業するときに顧客の潜在ニーズに迫るためには、顧客の環境の3C分析が重要です。

 3C分析とは、「自社」「競合」「顧客」を取り巻く情報整理、経営や事業の勝ち方を特定する際に用いられるフレームワークです。

 ターゲット先のニーズや業界の流行、トレンド、動きを押さえて、そのニーズに対してライバルがどんな訴求をしていて、それ打ち勝つための自社の強みはどんなものがあるのかを整理するのに使います。

 顧客企業を起点にどんなターゲットに、どんなライバルと戦って、どんな商品を提案しようとしているのかを想像して営業すると潜在ニーズに迫ることができます。

 ただし、3C分析をするための情報を集めるのはなかなか大変です。そんなときには顧客のライバルの上場企業のIR情報が参考になるでしょう。

 3C分析をもとに立てた仮説は、商談の中で確かめるということが必要です。そこで活用するのが、「ファクトファインディング」という技術です。

 顧客の顕在ニーズをくみ取る「ヒアリング」と違い、ファクトファインディングとは、事実の発見なので、顧客の発言をうのみにせず、顧客のインサイトを見いだし、あるべき姿に主導できるという特徴があります。

ファクトファインディングとヒアリングの違い

 セレブリックスのハイパフォーマーな営業担当が行なっているファクトファインディングを分析したところ、共通点が見つかりました。

 具体的には、まず顧客のビジネス全体や、商売における儲け方、提供価値、ビジネスモデルについてしっかり理解していました。

 どのようなコンセプトで、どのようなターゲットに、どのような商品を提供しているのかに加えて、マクロ全体の流行や事前の情報収集で調べきれなかったビジネスの思い、裏側を把握していました。これらは、後ほど問題発見や課題設定の土台を作ることにつながります。

 次に、実際に商談のテーマや、提供できる価値の領域の周辺情報について問題発見を行っていました。現状と理想を把握できれば、引き算でギャップである問題を発見することができます。

 しかし、問題だけでは顧客からするとすでにわかっている顕在的な情報なので、課題感が薄く、提案は失敗してしまいがちです。

 そのため、課題設定のステップが必要です。このままだと目標達成できないのではないかといった示唆を与えて課題を設定し、その課題に対して合意を得るということがゴールです。

 今回話したポイントを生かし、みなさまの新規営業が成功することを心よりお祈りしています。

 ツギノジダイでは23年2月7日、「中サミ」の講演をもとに中小企業の採用力を高める勉強会を、東京都中央区築地の朝日新聞東京本社で開催します。

 LINEの青田努さんの講演「採用に強い中小企業は何をしているか」をもとに、グループワークを開催。参加者同士で「自社ができること」を振り返り、気づきをシェアします。

 詳しくは下記のリンクをご覧ください。

 2023年7月には第2回目となる「日本を変える中小企業リーダーズサミット 2023夏(仮)」の開催が決定しました。

 次回は3日間の開催を予定しています。第1回でフォーカスしたDXや人材獲得、売上向上、トレンドに加え、新規事業開発、働く環境の改善、販路拡大など中小企業の成長を後押しする講演を充実させる予定です。詳しい内容は、後日公表します。