採用活動で成果を上げるには 目標設定や役割分担の方法を解説
人材不足に悩む企業は少なくありません。時間と費用を惜しまずに投じたところで、必ずしも採用がうまくいくとは限らないからです。では、人材不足と無縁でいるために必要なものは何でしょうか。コンサルティング会社識学の上席コンサルタント・庄子達郎さんが、中小企業が採用活動で成果を上げるためのポイントや注意点を解説します。
人材不足に悩む企業は少なくありません。時間と費用を惜しまずに投じたところで、必ずしも採用がうまくいくとは限らないからです。では、人材不足と無縁でいるために必要なものは何でしょうか。コンサルティング会社識学の上席コンサルタント・庄子達郎さんが、中小企業が採用活動で成果を上げるためのポイントや注意点を解説します。
目次
「この媒体に求人広告を載せたら欲しい人材を獲得できるだろう」、「こんな書き方をすればきっと若手人材が集まるはずだ」
採用活動を進めるにあたって、このような小手先のテクニックや感覚を重視していないでしょうか。全く重要でないと言うつもりはありませんが、もっと大切なことがあります。
それは、採用体制の整備です。体制というのは面接や採用広報の担当者を決めるだけではなく、採用の目標、スケジュール、予算、さらには書類選考と面接における合格ラインの設定まで含みます。
筆者の経験上、「採用活動がうまくいかない」と嘆く経営者ほど、体制の構築をないがしろにしがちです。その都度誰かが旗を振るような行き当たりばったりの採用活動をしていたら、余計なコストがかかりますし、採用の成否も判断できなくなってしまいます。
経営者はまず「いつまでに何人採用したいか」という目標を掲げましょう。この数値が逆算で考える起点になります。仮に、3カ月以内に2人入社してほしいのであれば、これまでに内定を出した人が実際何人入社してくれたのかを計算してください。仮に内定者2人につき1人の割合で入社していたとすれば、少なくとも4人に内定を出さないといけない計算になります。
このように、採用したい人の数から逆算して、面接まで進める候補者の数、書類選考の通過者数、応募者数のKPIを決めていきます。そして、そのKPIには期限を加えてください。例えば、次の図表のような形です。
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経営者や人事担当者がよく誤解していることがあります。それは採用活動において、企業は求職者を評価する側ではなく、求職者に評価される側であるということです。
したがって、求職者からの評価を上げる仕事をする採用担当(応募者対応)がいなければなりません。ただ、この役割の社員が面接の担当までしようとすると立ち位置が難しくなります。
面接担当者は求職者を入社させるか否かを判断しなければならず、当然、求職者より立場が上です。そのため、面接担当者が求職者から好感を得ることは難しいのです。
もしそれをしようとするなら、「あなたにどうしても入社していただきたいのです。お願いします」と頭を下げるしかありませんが、これは言うまでもなく厳禁です。
こんなことをされて入社した新入社員は、「この会社には頼まれたから入ってやった」と思うはずで、マネジメントが機能しなくなります。礼儀はもちろん大切ですが、面接担当者が下手に出る必要はありません。
採用がうまくいっている会社ではこの役割がしっかり分担されていることが多いです。
人事部の採用担当者は求職者に対して不明点がないか情報を伝えたり、問い合わせに回答したり、面談の調整をいち早く行ったりする一方、面接担当者はあくまで面接の場だけで求職者を判断するようにしましょう。くれぐれも社員が一人二役にならないようにしてください。
識学が採用のコンサルティングや代行をする時は、応募者に対して案内や問い合わせ対応を行う人、母集団形成を担う人、全体を統括する人を分けてチームを組みます。
いずれの人も面接担当は務めません。統括者は「遠方面接がなかなかセットされないからリモートにする」や「歩留まりが悪いのであれば、面接のやり方があいまいな可能性があるため、研修を実施する」など、現状の不足に対して適切な対処をします。
ある会社では人材がなかなか集まらず苦労していました。その理由は片手間にしか採用活動をしていなかったからでした。
数カ月に1度のペースで求人広告を出すものの、担当者の役割は特に決めず、そのとき比較的仕事が空いている人が面接を担当するという体制だったのです。求人広告1回で1人採用できることもありましたが、一度に大勢の人を獲得できないことが課題でした。
そこで、4カ月以内に20人採用するという目標を明確に掲げ、営業と同じようにKPIを設定し、それを細かく週次目標にまで落とし込んでいます。
詳細は伏せますが、毎週の会議で振り返りを行い、目標未達ならば改善策を考えさせ、次の目標に向かうという流れを繰り返すのです。採用活動はまだ終わっていませんが、スケジュール上は予定通り進んでいます。
入社してほしい人の具体的なイメージ像は社内で固まっていますか。年齢、性別、業務の経験年数、経験してきた仕事内容、転職回数など、条件を可能な限り具体的にしましょう。その上で、求人広告や求人データベースを活用します。
条件に合う人が少なくても悲観しないでください。応募状況を見ながら条件を少しずつ緩めていけばよいのです。最初の条件に固執し続ければ、いたずらに時間とコストがかかってしまいます。
そもそも、採用活動の成功とは何でしょうか。求める人材を獲得できたことでしょうか。しかし、本来、採用時点では成功かどうかは誰にもわかりません。条件に当てはまった人が入社してくれたとしても、活躍してくれるとは限らないからです。
にもかかわらず、「優秀な人材が獲得できない」と過度に悩むケースが目立ちます。「採用と育成をセットで考えればよい」と考え、まずは採用の決断をしましょう。
その上で、書類選考や面接の通過ラインを決めておきます。例えば、識学で営業兼講師を採用する際には、1次面接で以下の点を見ています。
人間性のように、明確な基準を言語化できないものもあります。これは、最終評価者が主観で判断するしかありません。人が人を選ぶのだから、どうしても主観が混ざってしまいますが、それでよいのです。責任者の仕事は決断であることを忘れないでください。
ある製造業では、技術者を採用する際、1次面接では技術者としての素質だけしか見ません。2次面接を担当する社長が人間性まで判断し、合否を決めています。
コロナ禍以降、オンライン面接を導入した企業も多いでしょう。求職者の現住所に関係なくすぐに面接をセッティングできる利便性は、双方にとって大きなメリットです。
ただ、「オンラインで面談したときはすごくひかれたけれども、じかに向かい合うとなぜかそう感じない」、「直接会ってみると、画面越しで話すよりもよい印象を抱いた」といったように、画面越しに話をしたときに求職者に対して抱く印象が、実際に会ったときと異なるケースは珍しくありません。その前提を理解しておく必要があります。
対面でなければ伝わらない情報があります。可能であれば、選考のプロセスにおいて一度は対面による面接の機会を設けるとよいでしょう。
「応募がなかなか集まらない」、「採用のための費用がかさむ」という悩みは、経営者であれば一度は抱えた経験があるはずです。
応募者の数を集めたいのなら、給与水準を業界の平均以上にすること。そして、評価制度を整えることです。何をいつまでに達成すればどのくらいの年収を得られるか説明できれば、それだけで差別化できるでしょう。
それから、とにかく情報を出してください。求職者はよく分からない企業に対して興味を持ってはくれません。モデルケースになりそうな社員に関する記事やインタビューをホームページに掲載しましょう。
採用費用を抑えたいのであれば、社員たちに同期や先輩、後輩、友人、知人を紹介してもらうリファラル採用がお勧めです。
ポイントは二つあります。まず「面接の回数が2回のところを1回にする」といったように、リファラル採用だけのメリットを用意することです。
ただし、選考基準は変えないようにしてください。これが二つ目のポイントです。入社してくる社員に「頼まれたから来てやった」という意識を持たせないためです。
以上、採用活動の要諦についてお伝えしてきました。採用の成功なくして企業の発展はありません。人材不足に陥る前に、早めの対策を心がけてください。
識学上席コンサルタント・キャリア事業部部長
中央大学法学部を卒業後、リクルートで11年のキャリアを積んだ後、識学に入社。高校生のころからはじめたアメリカンフットボールでは、日本代表として活躍した経歴も持つ。
(※構成・平沢元嗣)
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