コスト構造とは 分析方法や飲食店の事例をわかりやすく紹介
自社のコスト構造を分析することは、無駄な支出を減らし、効率的な投資に役立ちます。新規事業を検討するビジネスモデルキャンバス(BMC)でも重要な検証項目です。そこで、固変分解やバリューチェーン分析など具体的な分析方法とともに、飲食店の事例を紹介します。
自社のコスト構造を分析することは、無駄な支出を減らし、効率的な投資に役立ちます。新規事業を検討するビジネスモデルキャンバス(BMC)でも重要な検証項目です。そこで、固変分解やバリューチェーン分析など具体的な分析方法とともに、飲食店の事例を紹介します。
目次
コスト構造とは、機能などの切り口で分類したコストのことです。たとえば、物流コストの構造を考えると次のような要素があります。
企業のコスト削減を検討するには、コスト構造の分析が欠かせません。財務コンサルタント狩野直哉さんは、記事「父の自死を機に財務コンサルタントへ 『資金繰り改善、まず経費分析から』」のなかで、帳簿や会計データをもとに、Excelで月別の経費の状況が分かる分析表を作り、それを社長と一緒に見ながら「この経費は本当に必要ですか?」と一つひとつ確認し、不要なものをカットしていく作業をしていると話しています。
経営者は無駄な経費はないと思っていることが多いですが、個別の経費を可視化すると、経営者が把握していない経費が多く見つかるそうです。
それでは、分析の切り口としていくつかの方法を紹介します。
企業の支出には、売上の増減にかかわらず発生する「固定費」と、売上に比例して増減する「変動費」があり、この2つを仕分けることで、損益分岐点売上高を把握することができます。
損益分岐点売上高を把握できれば、赤字の事業を黒字化するには、売り上げをどれだけ伸ばせばよいか、またはとくに固定費をどれだけ下げればよいかがわかります。売り上げをすぐに伸ばすことは簡単ではないので、固定費の見直しから着手する企業が多くなります。
税理士の藤本純さんは、記事「固定費削減で速やかな経営改善を コロナ禍で手を付けるべき項目は」のなかで、主な固定費とその削減方法について、以下の表で項目別にまとめました。
固定費 | 削減方法 |
---|---|
協賛金や年会費 | 義理やつきあいだけで払っていないか。費用対効果が薄いものはないか |
車両関係費 | コロナ禍でいまの保有台数が必要か。レンタカーやカーシェアで対応できないか |
保険料 | 本当に必要か精査を。税金対策にならないのに節税目的で入っている保険はないか |
事務用品費 | ペーパーレス化でコピー代・用紙代は削減可能か。制服の廃止は可能か |
通信費 | 会社支給の携帯を解約できないか。または格安スマホへの移行は可能か |
水道光熱費 | 長持ちするLED照明への変更や契約している電力・ガス会社の再選定はできないか |
旅費交通費 | テレワークによる出勤手当の見直し、旅費規程の見直しは可能か |
割賦手数料 | ローン会社の金利の確認を。銀行金利よりも高い場合は銀行融資への切り替えも一案 |
保守料 | 不要なリース契約や保守契約を交わしていないか |
支払手数料 | ネットバンキングへの切り替えで振込手数料を減らせないか |
収入印紙 | 領収書を電子データにできないか |
社会保険料 | 経営層の報酬の減額で社会保険料の会社負担分も減らせる |
バリューチェーン分析とは、企業の各部門それぞれの活動(機能)において、「どのような価値が生み出されているのか」「コストはどれくらい発生しているのか」「強み・弱みは何か」などを、詳細に分析する方法のことを指します。
バリューチェーン分析の目的は、企業全体として顧客に提供できる付加価値を高めていくことにあります。
コスト削減を考えるときに、構成比率の高い項目から着手することは効率的ですが、無理な削減は避けるようにしましょう。
たとえば、製造業では、材料の価格交渉や人件費を下げるためのリストラ・給与カットから着手することはオススメできません。
中小企業診断士の北原竜也さんは記事「原価低減するには?方法や注意点、おすすめツール3選、事例を紹介」のなかで、「購入額を下げるよりも、先に自社の内部体制を見直すことが重要です。内部体制の見直しは、原価低減活動以外にも様々な利点を得られる活動のため、第一に実施すると良いでしょう」としてきしています。
新規事業を検討しているときに、ビジネスモデルを可視化するためのフレームワーク・テンプレートとして、ビジネスモデルキャンバス(Business Model Canvas:BMC)があります。BMCのなかでも、コスト構造は、重要な検証項目です。
事業を展開する上で必要なコストを書き入れて、事業化の検証に用います。
たとえば、ラーメン店のコスト構造は、一例として次のようになっています。材料費や人権費だけでなく、高騰する光熱費なども利益に大きく影響することがわかります。
また、沖縄発祥の飲食チェーン「やっぱりステーキ」は少人数で店舗を回す工夫でコストを下げて低価格を実現し、コロナ禍でも事業拡大を続けています。
店舗は居抜き物件が多く、店舗ごとに形や大きさが異なりますので、そのつど適正な人数やシフトを設定しているほか、券売機の導入でオペレーションの工程を減らしています。
財務改善のコンサルティングを行っている池田孝行さんは、記事「物価高や人手不足に備えるディフェンス力 経営者の実践法を解説」のなかで、首都圏の県庁所在地にあるレストランのコンサルティング事例をもとに利益率を改善する取り組みを紹介しています。
経営コンサルタントの前田健二さんは、コスト削減のポイントとして次のようにアドバイスしています。
コスト削減の要諦(ようてい)は「無駄な支出」をせず、お金を有効に使うことです。「無駄な支出」をしないだけではだめで、同時にお金を有効に使う、つまり投資することも必要です。
従業員のスキルや知識を増やすために投資する。製造効率を向上させるために投資する。社内のデジタルトランスフォーメーションを進めるために投資する。何よりも自分自身の成長のために投資する。
経営者には、会社が使うお金が「無駄な支出」なのか、それとも「投資」なのか見極める目が求められます。両者は一見似ています。場合や結果によって「無駄な支出」になったり、「投資」になったりします。
100%完全に見極めることは難しいにしても、少なくとも限りなく100%に近づける努力はすべきでしょう。
コスト削減のポイントは? 「無駄な支出」か「投資」か経営者が見極めを
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