目次

  1. 脱炭素経営とは
  2. 脱炭素経営によって期待されるメリット
  3. 脱炭素経営に向けた3つの手順
    1. 情報の収集
    2. 方針の検討
    3. CO2排出量の算定
    4. 削減ターゲットの特定
    5. 削減計画の策定
    6. 削減対策の実行
  4. 脱炭素経営の支援策(補助金・利子補給など)

 環境省によると、脱炭素経営とは、候変動対策(≒脱炭素)の視点を織り込んだ企業経営のことを指します。これまでは、コストが増えるCSR活動の一環であることが多かったのですが、近年は、自社の経営上の重要課題と捉え、リスク低減と成長のチャンスにつながるものとしてとらえ、会社全体で取り組む企業が増えています。

 日本政府は2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」、脱炭素社会を実現することを宣言しています。2050年カーボンニュートラルを達成するためには、この5年間、10年間の取組が重要となります。

 そのため、企業の脱炭素経営を推し進めるため、環境省の公式サイトで「中小規模事業者向けの脱炭素経営導入ハンドブック」などを公表しています。

 脱炭素経営導入ハンドブックによると、脱炭素経営によって期待されるメリットは次の5つです。

  1. 優位性の構築(自社の競争力を強化し、売上・受注を拡大)
  2. 光熱費・燃料費の低減
  3. 知名度や認知度の向上
  4. 脱炭素の要請に対応することによる社員のモチベーション向上や人材獲得力の強化
  5. 新たな機会の創出に向けた資金調達における優位性獲得

 脱炭素経営に向けては次の3つの手順で進めましょう。

  1. 知る(情報の収集・方針の検討)
  2. 測る(CO2排出量の算定・削減ターゲットの特定)
  3. 減らす(削減計画の策定・削減対策の実行)

 具体的には次の通りです。

 脱炭素経営に関連するセミナーや講演会は、数多く開催されているほか、地方自治体や商工会議所、地域金融機関でも、脱炭素経営に関連する相談窓口を設けている場合があります。

 ガイドラインでは、自社のバリューチェーン上の企業の動きや消費者の動きも重要だとして、主な取引先や顧客との会話を通し、カーボンニュートラルへの取組の状況や要望、ニーズの変化等の情報を収集することを勧めています。

 収集した情報をもとに、自社なりの脱炭素経営の方針を定義し「自社が出来ることは何か」「どのような付加価値を提供できるのか」を考えるよう勧めています。

 CO2排出量は、業務日報や請求書などから計算できます。ガイドラインでは「最初から完璧な算定を求めず、まずはチェックシート等を活用し、主要な排出源を特定するところから始め、取組を進めながら、設備単位でも算定する等、徐々に精緻化していくとよいでしょう」と書いています。

 たとえば、日本商工会議所の公式サイトでは、CO2チェックシートがダウンロードでき、電力・灯油・都市ガス等エネルギー種別に毎月の使用量・料金を入力・蓄積することで、CO2排出量が自動的に計算できます。

 計算して求めたCO2排出量を事業所単位や事業活動単位でグラフなどを使って分析すると、排出量が多く、削減余地のある部分が見えてきます。

 ガイドラインは、自社のCO2排出源を分析し、削減対策を洗い出すことを勧めています。洗い出した削減対策から実施可能な削減対策をリストアップすることで、実施計画をつくることに役立ちます。

 検討のポイントとして次のような比較軸があります。

  • 時系列(月別・日別・時刻別)での比較
  • 事業所・設備間での比較
  • 適正値との比較(台数や能力、設定値が過剰ではないか)

 そのうえで、取り組みとして最終目標や中間目標をつくることを勧めています。

 削減計画を実行する段階では、自社のCO2排出量を定期的にチェックし、目標に対する進捗やギャップを確認すると良いでしょう。

 必要に応じて、リース会社や金融機関とのファイナンス相談、メーカーや設備業者などの助言も仰ぐことも有効だといいます。こうした取り組みは、社内での周知だけでなく、自社の顧客や業界団体、地方自治体など、社外に向けて積極的に自社の脱炭素経営の取り組みをアピールすることも事業成長へのステップとなります。

 脱炭素経営を進める上で、運用改善などすぐできることから始め、設備更新などの大がかりな対策は国や自治体の補助制度の活用や、金融機関への資金繰りの相談をしながら進めることを勧めています。