目次

  1. 130万円の壁とは うっかり超えてしまったら扶養は?
  2. 130万円の壁に交通費は含まれる
  3. 厚労省、2023年10月から被扶養者認定を円滑化へ
    1. 「一時的な収入変動」として認められる必要がある
    2. 「一時的な事情」の認定は連続2年まで
    3. フリーランス・個人事業主は対象外
  4. 事業主による証明書様式、厚労省のサイトから入手
  5. 年収の壁対策、いつから?今後どうなる?
  6. 問い合わせ先 厚労省がコールセンター設置
年収の壁ごとのパートタイム労働者本人への影響とパートタイム労働者の配偶者もしくは世帯における影響(厚労省の資料から https://www.mhlw.go.jp/content/001265287.pdf)
年収の壁ごとのパートタイム労働者本人への影響とパートタイム労働者の配偶者もしくは世帯における影響(厚労省の資料から https://www.mhlw.go.jp/content/001265287.pdf)

 130万円の壁とは、従業員100人以下の企業でも、配偶者に扶養される人がパートなどで働き、年収が130万円以上となると、扶養から外れて国民年金(月額1万6520円)と国民健康保険(自治体・収入によって異なる)の保険料を払う必要が出て、結果として手取りが減ってしまう状況を指します。

 130万円の壁は、年額に加えて月額でも認定の可否を判断します。月ごとに収入が上下する場合、3ヵ月連続して月額10万8334円以上となった場合に被扶養者としての認定が外れることになります。

 ただし、うっかり超えてしまっても、いかに説明する通り、すぐには扶養から外れない場合もあります。詳しくは、健康保険組合などに確認しましょう。

 130万円の壁の影響で、繁忙期で経営者としてはもっと働いてほしいのに、パート・アルバイトで働く人は労働時間を制限しています。その結果、経営者としては、新たな人材を確保する必要があるなど、追加の負担がかかっています。

 このほか、人事院が発表している「職種別民間給与実態調査の結果」によると、扶養者が勤めている企業で家族手当(配偶者手当)に制限をかけるのは年収103万円が最多で、その次に多いのが130万円となっています。

 130万円の壁を意識するとき、よくある質問が「130万円の壁に交通費は含まれるか?」です。結論を先にいうと、130万円の壁に交通費は含まれます。

 日本年金機構の公式サイトによると、社会保険の被扶養者になるための収入の要件は、年間収入が130万円未満かつ扶養者の2分の1未満であるため、交通費も収入に含まれてしまうためです。

 厚労省の資料「年収の壁について知ろう」によると、年収130万円の壁の算定対象となる収入には、交通費も含めて以下のものが含まれます。

  • 基本給諸手当
  • 家族手当・通勤手当など
  • 時間外手当・休日手当など
  • 賞与など
  • 不動産収入・事業収入・配当収入など

 被扶養者の認定には、過去の課税証明書、給与明細書、雇用契約書などの確認が必要ですが、厚労省は2023年10月から「事業主の証明による被扶養者認定の円滑化」という暫定的な取り組みを始めました。

 パート・アルバイトで働く人が、繁忙期に労働時間を延ばすなどして一時的に130万円以上となっても事業主がその旨を証明することで、引き続き扶養に入り続けられるようにします。これにより、パート・アルバイトで働く人は国民年金・国民健康保険の保険料支払いの負担を回避できます。

 扶養されている主婦だけでなく、学生も対象となります。

 注意点は以下の通りです。

  1. 「一時的な収入変動」として認められる必要がある
  2. 「一時的な事情」の認定は連続2年まで
  3. フリーランス・個人事業主は対象外

 厚労省によると、一時的な収入変動とは、以下のような理由で、主に時間外勤務(残業)手当や臨時的に支払われる繁忙手当などが想定されています。

  • ほかの従業員が退職したことで、当該労働者の業務量が増加した
  • ほかの他の従業員が休職したことで、当該労働者の業務量が増加した
  • 業務の受注が好調だったことで、当該事業所全体の業務量が増加した
  • 突発的な大口案件により、当該事業所全体の業務量が増加した

 一方で、基本給が上がった場合や、恒常的な手当が新設された場合など、今後も引き続き収入が増えることが確実な場合は、一時的な収入増加とは認められません。

 また、被扶養者が被保険者と同一世帯に属している場合、被扶養者の年間収入が被保険者の年間収入を上回る場合は被扶養者から外れることになります。

 ただし、「一時的な収入変動」の具体的な上限額は明らかになっていません。仮に上限を設けた場合、当該上限が新たな「年収の壁」となりかねず、一時的な事情によるものかどうかは収入金額のみでは判断が困難であることためだといいます。

 事業主の証明による被扶養者認定の円滑化は「一時的な事情」としての認定のため、同一の者について原則として連続2回までとなります。

 社会保険の被扶養者の収入確認は、少なくとも年1回は保険者が確認し、被扶養者の要件を引き続き満たしていることを確認することが望ましいとされています。そのため、被扶養者の収入確認を年1回実施する場合は、連続2年までとなります。

 厚労省によると、事業主の証明による被扶養者認定の円滑化は、あくまでも事業主の人手不足などによる一時的な収入変動を対象としています。

 そのため、特定の事業主と雇用関係にない人は対象となりません。ただし、フリーランスや自営業者としての収入と、勤務先からの給与収入の両方がある場合、給与収入が一時的な収入変動で増加したことにより被扶養者の認定基準額を超えた場合は、対象になります。

 事業主が作成し、パート・アルバイトで働く人に提出する必要がある証明書の様式は厚労省の公式サイトでダウンロードできます。

事業主証明様式(PDF方式:77KB)
事業主証明様式(Word方式:20KB)

 事業主の証明書は、被扶養者認定や毎年の被扶養者の収入確認のときに必要になります。被保険者が勤務している会社を通じて、通常提出が求められる書類と一緒に保険者へ提出してください。

 事業主の証明による被扶養者認定の円滑化は、2023年10月からの被扶養者認定や被扶養者の収入確認に適用します。なお、それ以前の扶養認定や被扶養者の確認には遡及しません。

 被扶養者認定の円滑化は暫定的な対応ですが、政府は2025年に予定している次期年金制度改正に向けて、議論を開始しています。その制度改正も踏まえて、今後の方針が決まる見込みです。

 厚労省は「年収の壁突破・総合相談窓口」を設置しました。フリーダイヤル0120・030・045(平日8:30~18:45)へ。