目次

  1. 成長性の乏しい状況に危機感
  2. サウナ運営を却下した理由
  3. 経営者も一緒に取り組む覚悟
  4. ワークショップで戦略を自分ごとに
  5. 発表の場で変わった目の色
  6. 親しまれた社名を変更
  7. 商品ラインアップを3分の2に
  8. 業務用の薬湯を一般消費者にも
  9. 「松田家の会社」からの転換
  10. チアアップ型のリーダーシップ

西澤明洋さん

エイトブランディングデザイン代表

1976年、滋賀県生まれ。大手電機メーカーのインハウスデザイナーから独立。「ブランディングデザインで日本を元気にする」というコンセプトのもと、企業のブランド、商品、店舗開発など幅広いデザインを手がけている。「フォーカスRPCD®」という独自手法でリサーチからプランニング、コンセプト開発まで一貫性のあるブランディングデザインを強みとする。主な仕事にクラフトビール「COEDO」、抹茶カフェ「nana’s green tea」、スキンケア「ユースキン」、ヤマサ醤油「まる生ぽん酢」、ブランド買取「なんぼや」、手織りじゅうたん「山形緞通」など。著書に「ブランディングデザインの教科書」(パイ インターナショナル)などがあり、特集雑誌「デザインノート『西澤明洋の成功するブランディングデザイン』」(誠文堂新光社)も発刊した。

 健美薬湯は松田さんの祖父が1960年に兄弟で創業し、温浴施設向けの入浴剤や洗浄剤などを製造・販売しています。生薬を配合した薬湯は全国の施設で使われ、売り上げは毎年8億円前後で推移。BtoBの入浴剤市場のトップシェアを持っているといいます。従業員数は約50人です。

 早稲田大学でスポーツトレーナーの勉強をしていた松田さんは15年4月、ヘルスビューティーに新卒入社しました。「家業を継ぐことは考えたことがなく、海外の大学院に進学する予定でした。その準備をしているとき、3代目の父(和也さん)の病気がわかり、最終的に家業を手伝う決断を下しました」。

 父は同年8月に他界し、松田さんの母・尚子さん(現会長)が社長を引き継ぐことに。4年後の19年、松田さんは28歳で社長に就任しました。

BtoB製品のパッケージはリブランディング前(上)と後(下)で大きく変わりました 

 BtoBの入浴剤市場はニッチな業界で、専業のメーカーは国内でも3、4社に限られます。販売も代理店を通じたもので、顧客と接する機会も少なかったといいます。銭湯は減少傾向ながら、スーパー銭湯なども含めた温浴施設全体では横ばい状態。同社は無借金経営でしたが、松田さんは成長性に欠ける点が気になっていました。

 「市場規模は数十億円程度で、大手が参入することはありません。何十年も外的脅威にさらされず、社内は新しいことに挑戦するムードが感じられませんでした。新卒を採用しても成長性がないと思われていたのか、3~5年で退職する人が多かったです」

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