目次

  1. 被災者の生活と生業支援のためのパッケージとは
  2. 生業の再建とは
    1. 中小・小規模事業者向けになりわい再建支援事業
    2. 小規模事業者持続化補助金に災害支援枠
    3. 商店街の再生支援
    4. 伝統産業の事業継続支援
    5. 資金繰り支援
    6. 農林漁業者には再建支援も
    7. 北陸応援割など観光復興支援
    8. 雇用調整助成金の引き上げなど

 2024年1月1日に起こった能登半島地震により、北陸地方を中心に広い範囲にわたって甚大な被害が出ています。

 そこで、政府は災害応急対策と同時に、生活と生業(なりわい)の再建、そして、復旧・復興を支援するため1月25日に「被災者の生活と生業支援のためのパッケージ」を公表しました。

 このパッケージは、以下の3本の柱をまとめています。

  1. 生活の再建
  2. 生業の再建
  3. 災害復旧等

 この記事では、とくに事業者向けの「生業の再建」に焦点を当てて、活用できる支援策を紹介します。

 支援パッケージは「能登地域の産業をはじめ、広範にわたる北陸地方の被災地の地場産業において、雇用の維持や事業継続の支援を手厚く講じ、地域の特性を活かした、持続可能な地域経済の再生を図ることが必要である」として「生業の再建」について支援策をまとめています。

 具体的には以下の通りです。

 支援パッケージは、復興事業計画に基づいて復興に取り組む被災中小・小規模事業者の工場・店舗などの施設や、生産機械などの設備の復旧費用を補助する、なりわい再建支援事業による支援をすることを明記しました。

 具体的には、施設等の復旧を支援する場合、補助率3/4で補助します。補助上限は石川県で最大15億円、富山県、福井県、新潟県は最大3億円となります。ただし、多重被災事業者は、石川で最大5億円、富山・福井・新潟3県で最大1億円までは定額補助ができます。

 中小企業庁の公式サイトによると、2月28日に交付申請の公募を開始しました。

 また、小規模事業者持続化補助金は災害支援枠を設けました。被災地である石川県、富山県、福井県、新潟県の小規模事業者等が行う販路開拓に係る費用を補助します。補助率は2/3で、最大200万円となります。ただし、多重被災事業者については定額補助(最大200万円)を実施します。

 商店街の再生支援としては、アーケード・街路灯等の復旧(補助率は石川県3/4、富山県、福井県、新潟県は1/2)、集客イベントの開催等賑わいの創出(補助率:定額等、最大100万円)を支援します。

 また、被災中小企業が入居する集合型仮設施設について、市町村がする整備に対して定額で支援します。

 中小企業庁の公式サイトによると、2月28日に交付申請の受付を開始しました。

 伝統的工芸品産業の再生を図るため、災害支援枠を設け、事業継続に必要な道具や原材料の確保に必要となる費用を補助します。補助率は3/4、補助上限は1000万円です。

 能登地方には酒蔵も多く、被災した酒類業者に対する支援のため、被災酒類に係る酒税相当額の還付手続の特例措置等を実施するほか、酒蔵が数多く存在する能登地域など被災酒蔵等への技術支援を予定しています。

 被災地の復旧・復興状況を踏まえつつ、特に被害を受けた能登地域については、ウェブの特設サイトや販促イベント等を通じ、能登半島ならではの物産品の販路拡充支援等を行い、地場産品の消費拡大を図ることも計画しています。

 経済産業省の公式サイトでは、資金繰り支援として、石川県の事業者向けには次のような支援を紹介しています。

  • 令和6年能登半島地震特別貸付の創設(災害金利より0.9%引き下げる特別措置)
  • コロナ資本性劣後ローンの特例措置(黒字の場合でも1年間は0.5%の貸付利率を適用)
  • セーフティネット保証4号(融資額100%を保証)
  • 災害関係保証(別枠の限度額で融資額100%を保証)
  • 伴走支援型特別保証(コロナ借換保証)
  • ゼロゼロ融資等のリスケ時の保証料補助(リスケ時に係る追加の保証料がゼロ)
  • 中小機構等の官民ファンドの活用(債権買取や出資のスキームを検討)
石川県の事業者向け資金繰り支援(中小企業庁の公式サイトからhttps://www.chusho.meti.go.jp/saigai/r6_noto_jishin/)

 富山県、福井県、新潟県の事業者向けにも次のような支援策があります。

  • 令和6年能登半島地震特別貸付の創設
  • 災害金利より0.9%引き下げる特別措置
  • セーフティネット保証4号(一般保証とは別枠の限度額で融資額100%を保証)
  • 災害関係保証(別枠の限度額で融資額100%を保証)
  • 伴走支援型特別保証(直接被害を受けた中小企業者による利用も可能)

 一次産業も盛んな能登半島では、地震により、農地や農道、用排水路、ため池等の農業用施設の損壊に加え、畜舎や農業用ハウス、共同利用施設等が損壊し、農業・畜産用機械の被害が多数発生したといいます。

 さらに、林業では、広範囲での山地崩壊、林道等の被害や、木材加工流通施設や特用林産振興施設の被害が出ています。水産業でも、津波や地盤の隆起等により、漁船の転覆、沈没、座礁や漁港施設の損壊、共同利用施設の損傷などの被害が出ています。

 こうした被害に対し、農林水産省の公式サイトで、対応策をまとめています。

被災者の⽣活と⽣業⽀援のためのパッケージ(農林⽔産関係)
被災者の⽣活と⽣業⽀援のためのパッケージ(農林⽔産関係)。農林水産省の公式サイトから(https://www.maff.go.jp/j/press/kanbo/bunsyo/saigai/240125.html)

 主なものは以下の通りです。

  • 被災した農業用機械等の再建支援(農業用機械、農業用ハウス・畜舎、共同利用施設、木材加工流通施設、特用林産振興施設等の再建・修繕への支援)
  • 営農再開に向けた支援(種子・種苗等の資材調達、繁殖用の牛・豚の再導入等)や、被災農家等の柔軟な雇用による人手の確保
  • 被災農林漁業者の資金繰り支援(貸付当初5年間の実質無利子化等)
  • 景観にも配慮した棚田の復旧や観光とも連携した持続可能な里山づくり
  • 漁船等の復旧、漁場環境の回復への支援や、地域の将来ビジョンの下での里海資源を活かした海業振興等

 ただし、農業用機械、農業用ハウス・畜舎、共同利用施設等の再建・修繕の事前着工をする場合は、それぞれの農林漁業者ごと(共同利用施設等の場合は施設ごと)に次の資料を保存しておく必要があります。

  • 施設等の被害の状況がわかる書きものや写真等
  • 事業の対象となる取組に係る発注書、納品書、請求書などの書類
  • 種苗購入や資材購入、他の集出荷施設等に農産物の輸送等を行った場合の発注書、納品書、請求書などの書類

 北陸の観光については、地震被害の小さかった地域でも宿泊キャンセルなどの影響が出ています。

 こうしたなか、GW前まで(3~4月)を念頭に「北陸応援割」(補助率50%、最大2万円/泊)を開始する予定です。能登地域については、復興状況を見ながら、より手厚い旅行需要喚起策も検討しています。

 また、ふるさと納税の積極的な活用を支援し、特産品販売、旅行等を促進する予定です。

 厚生労働省の公式サイトによると、能登半島地震に関わる雇用調整助成金については、生産指標要件や雇用量要件等の支給要件の緩和、助成率の引上げ(中小企業は2/3から4/5へ。大企業は1/2から2/3に引上げ)、支給日数の延長(100日/年から300日/年へ延長)する特例措置を実施します。

令和6年能登半島地震に係る雇用調整助成金の特例措置。厚労省の公式サイトから(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/pageL07_20200515.html)

 雇用保険の基本手当(失業手当)について、激甚災害の対象地域に所在する事業所が休止・廃止したことにより、労働者が休業して賃金を受け取ることができない場合も支給対象にします。