目次

  1. 買いたたきとは
  2. 下請法違反(買いたたき)の事例
  3. 改正された下請法の運用基準のポイント

 経済産業省によると、買いたたきとは、親事業者が、下請事業者と下請代金の額を決定する際に、発注する物品・役務等に通常支払われる対価(同種または類似品等の市価)に比べ、著しく低い額を不当に定めることです。

 買いたたきに該当するか否かは、次のような要素を勘案して総合的に判断されてきました。

  • 価格水準:下請代金の額が著しく低いかどうか (「通常支払われる対価」との乖離状況、給付に必要な原材料等の価格動向など)
  • 決定方法:下請代金の額を不当に定めていないかどうか(下請事業者と十分な協議が行われたかどうかなど)
  • 決定内容:下請代金の額が差別的でないかどうか

 これまでに買いたたきの規定にもとづく下請け法違反があったとして勧告を受けた事例として、中古車販売大手「ビッグモーター」がありました。

 公取委によると、ビックモーターは、2021年3月、営業本部の一部の者と関西・北陸エリアの販売店の店長が業務上のやりとりを行うメッセージアプリのグループで、当時の営業本部次長から各店長に対し、コーティング加工の施工料金について「各店、施工料金がバラバラなので、形状ごとの最安値の金額に価格交渉して合わせてもらいましょう」と指示していました。

 実際に12月ごろ、当時の店長から、下請事業者に対し、営業本部などの意向を踏まえたコーティング加工の発注単価の引き下げを要請し、従来単価から27.7%引き下げた単価を設定していました。

 また、「HiKOKI」の電動工具ブランドで知られる「工機ホールディングス」(東京都港区)についても、下請事業者から価格交渉があった際、買いたたきのに違反事例があったとして、公取委から勧告を受けています。

 物価高が続くなかで下請事業者が価格交渉しやすくなるよう、公取委は2024年5月27日に下請法の改正運用基準を公表しました。

 新しい基準では、原材料価格や労務費などのコスト上昇が把握できるのに、下請代金を据え置いた場合も、買いたたきの要件に該当するようになりました。

 具体的に言うと、運用基準で「通常支払われる対価に比し著しく低い下請代金の額」として新たに取り扱われるようになったのは以下の項目です。

  • 従前の給付に係る単価で計算された対価に比し著しく低い下請代金の額
  • 当該給付に係る主なコスト(労務費、原材料価格、エネルギーコスト等)の著しい上昇を、例えば、最低賃金の上昇率、春季労使交渉の妥結額やその上昇率などの経済の実態が反映されていると考えられる公表資料から把握することができる場合において、据え置かれた下請代金の額