高齢社員が活躍・資格の勉強に手当 「イキイキと働ける会社」のつくり方
ツギノジダイが2024年7月17日~19日に開いたオンラインイベント「第4回 日本を変える中小企業リーダーズサミット」(ツギノジダイ、Eight主催)には、中小企業のリーダー層をはじめ、約5千人が参加登録しました。講演の中から、横引シャッター(東京都足立区)社長の市川慎次郎さん、アイペック(富山市)社長の東出悦⼦さんによる「イキイキと働ける会社」をテーマにしたトークセッションの模様を振り返ります。
ツギノジダイが2024年7月17日~19日に開いたオンラインイベント「第4回 日本を変える中小企業リーダーズサミット」(ツギノジダイ、Eight主催)には、中小企業のリーダー層をはじめ、約5千人が参加登録しました。講演の中から、横引シャッター(東京都足立区)社長の市川慎次郎さん、アイペック(富山市)社長の東出悦⼦さんによる「イキイキと働ける会社」をテーマにしたトークセッションの模様を振り返ります。
横引シャッターは、市川さんの父が創業し、駅構内の売店や有名百貨店などのシャッターを製造しています。市川さんは急逝した父に代わり、2012年に社長就任。高齢の社員に活躍の場を作り、最近までは94歳の社員もいました。がんサバイバーの社員も活躍し、メディアで取り上げられる機会も多い会社です。
アイペックは、橋梁やトンネルなどの社会インフラの安全性を確かめる非破壊検査を手がけています。2015年に父の後を継いだ東出さんは、従業員の働きやすい環境を整備し、2023年度の「はばたく中小企業・小規模事業者300社(人への投資・環境整備)」に選ばれています。
トークセッションでは、ともに建築物に関わる事業を展開する市川さん、東出さんの取り組みに迫りました。
市川さんは入社したころの会社は「風通しが悪く、社員同士の仲も悪かった」と振り返ります。
市川さんは「社長として特別なことをしたわけではありません。みんなが楽しく働ける会社にしたいと思い、社員が働いている姿を見て『こういう風にすればもっと楽になるよね』とか話しながら、目の前の課題を1個ずつ解決していきました」と言います。
横引シャッターの就業規則では定年は70歳となっていますが、実際は柔軟に運用しており、今も80代の社員らが現役で活躍しています。
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「ある年齢になったら、仕事の内容も働き方も同じなのに、会社をやめなければいけない、あるいは給料が下がるのはフェアじゃないと思っていました。ましてやうちは中小企業なので、定年制度は必要ないのではと考えました」
アイペックも以前は、各部署が別々のフロアで仕事をしており、コミュニケーションがとりづらかったといいます。東出さんは「あの部署は明るいけれど、別の部署は行きにくいなど、雰囲気が違ってやりづらい面がありました」と話します。
2019年に新社屋に移転した際、全社員がワンフロアで働くフリーアドレスにしました。「職人、男性、高齢の方も多く、自席が無くなるのに抵抗もありました」。東出さんは新社屋プロジェクトを立ち上げ、フリーアドレスを導入した会社を20社ほど視察するなど、社員と丁寧なコミュニケーションを重ねました。
「フリーアドレスにしたら、現場の社員が総務担当の隣に座り、契約書について教えてもらうなどの効果が出ました。ワンフロアでみんなの様子がよくみえるので、元気がない人に声をかけたり、ある部署の良い取り組みが別部署に広まったり、一体感が生まれました」
全部署で朝会も導入しました。「誰が残業していて、誰の手が空いているかが見えるようになると、コミュニケーション不足がなくなり、会社の付加価値も上がりました」
市川さんと東出さんは、さらなる工夫についても紹介しました。
横引シャッターの社員は、祖父と孫ほどの年齢差があります。市川さんは「年配者には知識や経験を伝えてもらい、若者には『重い物を持て』と話しています。年配の方が重い物を持ち、若者がボーッと立っていたら怒りますよ。ただ、それを何回かやると、若者から『僕がやります』と言ってくれるんです」
作業は2人1組で行い、どちらかが休んでも回るよう、ペアは定期的に入れ替えています。「まぜこぜにすると、みんなが勝手に仲良くやってくれます」
年配と若手とのジェネレーションギャップについて、市川さんは「ない」と言い切ります。「おじいちゃん世代は、孫世代がかわいくて教えたがるんです。若手も高齢社員になついて、仕事からプライベートまで色々な話をしています」
横引シャッターでは、がんサバイバーの社員も活躍しています。「社員は家族と思えば、がんになってしまった家族の首を切るなんてできません。本人の了解を得たうえで、他の社員にも『治療で会社を休むときもあるけど、みんなでフォローして』と伝えています」
アイペックでは、業務に必要な資格を勉強してもらうため、毎週水曜日に3時間、大部屋を開放しています。1時間以上の自習に対し、1回あたり2千円の自己啓発支援手当も設けました。
「資格が大切になるビジネスですが、きっかけがないと、仕事で疲れてモチベーションが上がりません。学生さんがカフェで勉強するように、みんなと一緒に勉強する環境を用意すると、いいきっかけになると思いました」
2020年は23人受けて合格率39.1%でしたが、2022年は106人が受けて合格率が50.9%に上がりました。
現場からスマホで勤怠を打刻できるようにして、家族との時間を増やし、残業代の削減にもつなげました。社内コミュニケーション活性化のため、3人以上の社員同士の飲み会やゴルフといった社外活動に1人2千円を支給しています。
こうした施策は、事業成長にどうつながっているのでしょうか。
市川さんは「30人規模の会社なので、社員のモチベーションの高低で製品の良さが変わります。モチベーションが高い方が利益も出ますし、生産性も30%ほど上がりました」と話します。
東出さんも「モチベーションの高さが、サービス向上や生産性アップにつながるのはうちも同じです。売り上げも右肩上がりですし、働きやすい環境を作らないと採用ができなくなると思っています」と力を込めました。
視聴者からは「人事評価をどのように工夫していますか」という共通質問がありました。
市川さんは「評価の際は、社長の目ではなく、周りの社員からの声を重視しています。部署長から『あの人にもっと給料を上げてください』という話が出ることもあります」と答えました。
東出さんがポイントに挙げたのは、公平性と育成です。「経営層や管理職が集まり、この評価で合っているか、バイアスがかかっていないかを全員の目で確認します。スキルマップを使った育成にも取り組んでいます」と話しました。
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