目次

  1. 2023年度の介護職員数、2.9万人減
  2. 介護職員数が減少となった要因
  3. 厚生労働省の対策 処遇改善や離職防止も
    1. 介護職員の処遇改善
    2. 多様な人材の確保・育成
    3. 離職防止・定着促進
    4. 介護職の魅力向上
    5. 外国人材の受入れ環境整備

 厚労省の2023年度の「介護サービス施設・事業所調査」によると、介護職員数は約212.6万人で前年比2.9万人の減少となりました。

 この調査は、介護保険制度が始まった2000年度から毎年度続けてきましたが、2020年代からは増加ペースが鈍化し、2023年度に初めて減少に転じました。

 一方で、要介護(支援)認定者数は増加の一途をたどっており、介護職員の減少とのギャップが拡大しています。

 都道府県が推計した介護職員の必要数を集計すると、2026年度には約240万人が必要で、2040年度にはさらに約272万人が必要となります。このギャップがさらに拡大すると、介護サービスの質の低下や介護を必要とする高齢者の受け入れ困難などがさらに深刻化するおそれがあります。

 介護職員数の減少は、複合的な要因が絡み合って生じています。

  • 介護職の処遇(他業種よりも給与が低い等)
  • 離職率の高さ(人間関係や休みの取りにくさを含む)
  • そもそもの人材確保の難しさ
  • 介護職のイメージ問題

 たとえば、介護職員の平均賃金の水準は、勤続年数等に違いがあり単純な比較はできないものの、全業種平均よりも低い傾向にあります。とくに、働き手が少なくなっている地方では、業績が回復している旅館・ホテル業などとの人材の獲得競争が激しくなっています。

 厚生労働省がこれまで介護人材確保のためにとってきた対策は次の通りです。こうした対策の効果が見え始めるのは、まだしばらく時間がかかりそうです。

 2024年度報酬改定では、介護職員の処遇改善のための措置をできるだけ多くの事業所に活用されるよう推進する観点から、3種類の加算を一本化しました。また2024年度に2.5%、2025年度に2.0%のベースアップへと確実につながるよう、加算率を引き上げました。

処遇改善に係る加算全体のイメージ(2022年度改定後)
処遇改善に係る加算全体のイメージ(2022年度改定後)

 介護未経験者への入門研修から、就労体験、マッチングまでを一体的に支援しています。また、介護助手などの普及促進や、学生向けの修学資金貸付制度、外国人材の受け入れ環境整備も進めています。

 処遇改善だけでなく、オンライン研修の導入支援、週休3日制、介護助手としての就労や副業・兼業等の多様な働き方を実践するモデル事業などにも取り組んでいます。

 このほか、介護施設・事業所内の保育施設の設置・運営の支援や、介護ロボット・ICTテクノロジーの導入・活用も支援しています。

 介護の仕事に対する理解を深めるため、テレビやSNSを活用した広報活動を強化し、介護の仕事の社会的評価を高めるための取り組みを進めています。

 介護福祉士を目指す留学生等の支援(介護福祉士修学資金の貸付推進、日常生活面での相談支援等)や、介護福祉士国家試験に向けた学習支援(多言語の学習教材の周知、国家試験対策講座の開催)にも取り組んでいます。