目次

  1. 「年間110万円までの贈与」なら生前贈与の方が節税効果あり
  2. 生前贈与にかかる税金とは
    1. 贈与税の非課税枠は年間110万円 相続時精算課税の場合はさらに+2,500万円
    2. 贈与税の税率
    3. 贈与税の特例制度 
  3. 相続にかかる税金とは
    1. 相続税の非課税枠は3,000万円+600万円×法定相続人の数
    2. 相続税の税率
    3. 相続税が控除される制度
  4. 生前贈与で節税できるケース・相続のほうがいいケース
  5. 生前贈与の注意点
    1. 相手に受け取ったことを知らないと贈与として認められない
    2. 定期贈与とみなされると非課税枠内でも贈与税が発生する
    3. 贈与額に偏りがあると受贈側が遺留分侵害額請求を受ける可能性がある
  6. 生前贈与加算で相続税に加算される期間、最長7年に

 相続対策でよく使われる生前贈与ですが、生前贈与と相続ではどちらの方が節税効果が高いでしょうか?

 一般的に、相続財産が基礎控除を超える場合で年間110万円以下の贈与であれば、生前贈与の方が相続よりも節税効果が高くなるケースが多く見られます。また、110万円を超える場合でも、より節税につながるケースもあります。

 ただし、資産の内容などや贈与税の特例を用いた場合や、後述の注意点のような内容に抵触する場合は、節税効果につながらない可能性があるので注意が必要です。

 生前贈与した場合にかかる税金は「贈与税」です。贈与税は、贈与を受けた人(受贈者)にかかり、原則1月1日から12月31日までの1年間(暦年)に受けた贈与(※)の金額をもとに計算され、贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日までに贈与税の申告・納付を行います。(※)法人からの贈与は除きます(所得税の対象になります)

 贈与税の課税方法には「暦年課税」と「相続時精算課税」があり、贈与を受けた人(受贈者)は、贈与者(贈与をした人)ごとにいずれかの課税方法を選択することができます。暦年課税は贈与者に制限がなく誰からの生前贈与でも使えますが、「相続時精算課税」は親や祖父母などからの贈与で一定の要件に当てはまる場合に選択できる制度で、届出が必要です。

  1. 暦年課税
    暦年課税とは、その年1年間に贈与を受けた財産の合計額を基に贈与税額を計算する方法です。

  2. 相続時精算課税
    相続時精算課税制度は、原則60歳以上の親や祖父母から18歳以上の子や孫に対する贈与で選択できる贈与税の制度です。
    この制度を利用すると、贈与税の基礎控除額(通常、年間110万円)を超える贈与について累計2,500万円まで贈与税が非課税となる一方で、毎年基礎控除額を超えた額についてはすべて相続時に相続財産に加算(精算)されます。
    なお、支払った贈与税があれば相続税から控除され、支払った贈与税が相続税が多ければ還付されます。
    この制度を利用するときは、贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日までの間に一定の書類を添付した「相続時精算課税選択届出書」を提出しなければなりません。

 注意点として、相続時精算課税制度は贈与者(父母または祖父母など)ごとに選択できますが、一度選択すると、その後は選択した贈与者から贈与を受ける財産はすべてこの制度が適用され、「暦年課税」へ変更することはできません。

 また、制度の仕組み上、暦年贈与よりも相続税精算課税のほうが必ずお得になるわけではないため、この制度を選択した方がよいのか必ず検討してから提出しましょう。

 贈与税には「基礎控除」という非課税枠があります。非課税枠があるため、生前贈与を受けても年間110万円までは贈与税がかかりません。

①暦年贈与の非課税枠は年間110万円

 暦年贈与の非課税枠(基礎控除)は年間110万円で、その年1年間に受けたすべての生前贈与を合計します。例えば、後継者である孫が社長(父)と先代社長(祖父)から110万円ずつ合計で220万円生前贈与を受けた場合、110万円を超えた金額に贈与税がかかります。

 また、贈与者が亡くなり相続などで財産を取得した場合、「生前贈与加算」として、相続財産に贈与時の価額が加算され相続税を計算することになります。この加算対象期間は、2024年以後は7年以内です(参照:No.4161 贈与財産の加算と税額控除〈暦年課税〉丨国税庁)。

被相続人の相続開始日 加算対象期間
~2026年12月31日 相続開始前3年以内(死亡の日からさかのぼって3年前の日から死亡の日までの間)
2027年1月1日~2030年12月31日 2024年1月1日から死亡の日までの間
2031年1月1日 相続開始前7年以内(死亡の日からさかのぼって7年前の日から死亡の日までの間)

 なお、この加算された贈与財産の贈与税は、「贈与税額控除」として相続税から控除されます。

 例えば、2030年12月に社長(父)が亡くなり、後継者である長男が父から生前贈与を受けていた場合を想定した例を挙げます。

 【例:父から長男への生前贈与】
 ①2022年(8年前)に現金500万円
 ②2025年(5年前)に現金300万円
 ③2028年(2年前)に現金200万円

 この場合、生前贈与加算の加算対象期間となるのは、上記の表から2024年1月1日から父死亡の日までの②と③です。なお、加算対象の贈与のうち3年以内の贈与以外(この場合②)については100万円が控除できるため、②300万円-100万円=200万円と③200万円の合計400万円が加算されることになります。

②相続時精算課税の非課税枠は年間110万円+2,500万円

 相続時精算課税の非課税枠は、基礎控除額110万円+特別控除額2,500万円です(2024年1月1日以後)。

 例えば、長男が、父からの現金3,110万円の生前贈与を受けた場合、長男にかかる贈与税は100万円となります。

長男が、父からの現金3,110万円の生前贈与を受けた場合の贈与税
(3,110万円-基礎控除110万円-特別控除2,500万円)×20%=100万円

 一方、父の相続時においては、父の相続財産に「贈与財産から基礎控除後を控除した残額」がすべて加算された上で、相続税が計算されます。

 例えば父の相続財産が1,500万円だとしたら、相続税の計算は1,500万円+3,000万円=4,500万円を元に行われます。

 ただし、このとき法定相続人が3人の場合は、相続税の基礎控除額が4,800万円(3,000万円+600万円×法定相続人の数3人)となるため相続税は0円です。加えて、長男には贈与時に支払った贈与税100万円が還付されます。

 暦年課税と相続時精算課税の贈与税の税率について、解説します。

①暦年課税の税率

 暦年課税の場合、贈与税は110万円の基礎控除額を控除した残額に、規定の税率を掛けて計算します(贈与税=贈与税の課税価格×税率-控除額)。

 贈与税の税率は、一般贈与財産と特例贈与財産で異なります。一般贈与財産とは、兄弟間や夫婦間、親子間で子が未成年者の場合など、「特例贈与財産用」に該当しない財産で、一般税率を使います(参照:No.4408 贈与税の計算と税率〈暦年課税〉丨国税庁)。

 一般税率は基礎控除後の課税価格によって、以下のように変わります。

基礎控除後の課税価格 税率 控除額
200万円以下 10% -
300万円以下 15% 10万円
400万円以下 20% 25万円
600万円以下 30% 65万円
1,000万円以下 40% 125万円
1,500万円以下 45% 175万円
3,000万円以下 50% 250万円
3,000万円超 55% 400万円
父から長男へ110万円、妻の姉から妻へ110万円を現金で生前贈与した場合の贈与税
(110万円+110万円-110万円)×10%=11万円

 特例贈与財産とは、祖父から孫への贈与、父から子への贈与など(夫の父からの贈与等には使用不可)で、贈与により財産を取得した者(贈与を受けた年の1月1日において20歳以上の者に限定)が、直系尊属(父母や祖父母など)から贈与により取得した財産で、特例税率を使用します。特例税率も、同様に基礎控除後の課税価格によって異なります。

基礎控除後の課税価格 税率 控除額
200万円以下 10% -
400万円以下 15% 10万円
600万円以下 20% 30万円
1,000万円以下 30% 90万円
1,500万円以下 40% 190万円
3,000万円以下 45% 265万円
4,500万円以下 50% 415万円
4,500万円超 55% 640万円
先代社長(祖父)から500万円を現金で生前贈与した場合の贈与税
(500万円-110万円)×15%-10万円=48万5,000円

 相続税の税率が贈与税の税率よりも高い場合には、まとめて一括で生前贈与をする方が早めに相続財産を減らせるため、「相続税+贈与税」が安くなることがあります。

②相続時精算課税の税率

 相続時精算課税の税率は20%です。相続時精算課税の贈与税は、相続時精算課税を選択した贈与者ごとに、1年間に受けた贈与財産の合計から110万円の基礎控除額と2,500万円の特別控除額を控除した残額に20%の税率を掛けて計算します。  

社長(父)から3,000万円を現金で生前贈与した場合(相続時精算課税を選択)の贈与税
(3,000万円-110万円-2,500万円)×20%=78万円

 贈与税には次のような税金が非課税になる特例制度があります。このような特例は、受けるための条件があり、贈与税の申告が必要です。

①住宅取得資金の贈与

 2024年1月1日から2026年12月31日までの間に、父母や祖父母など直系尊属から、マイホームの新築や取得または増改築などのための「住宅取得等資金」を生前贈与により取得した場合、省エネ等住宅は1,000万円まで、それ以外の住宅は500万円まで住宅取得等資金の贈与が非課税となります。

②贈与税の配偶者控除

 贈与税の配偶者控除とは、おしどり贈与ともいわれる長年連れ添った夫婦間の贈与で活用できます。

 婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、居住用不動産または居住用不動産を取得するための金銭の贈与が行われた場合、基礎控除額110万円のほかに最高2,000万円まで控除(配偶者控除)できるという特例です。

③結婚・子育て資金の一括贈与

 結婚・子育て資金の一括贈与は、2025年3月31日までの間に、18歳以上50歳未満の人が結婚・子育て資金に充てるため、直系尊属である父母や祖父母などから金融機関などと結婚・子育て資金管理契約に基づき、1,000万円まで贈与税が非課税となる制度です。

 ただし、贈与を受ける側の前年の所得が1,000万円を超える場合には、この非課税制度は利用できないため注意が必要です。

 結婚・子育て資金管理契約の契約期間中に贈与者が死亡した場合や、結婚・子育て資金管理契約が終了した場合、相続税または贈与税がかかることがあります。

④教育資金の一括贈与

 教育資金の一括贈与制度とは、親や祖父母などの直系尊属(祖父母、父母)が、30歳未満の子や孫に対して、教育資金を目的にお金を贈与する際、一定の条件を満たすことで、贈与税が非課税となる制度です。

 この制度を利用すると、最大1,500万円まで贈与税がかからずに教育資金として使えるようになります。しかし、所得による制限がある点には注意が必要です。贈与を受ける側の前年の所得が1,000万円を超える場合には、この非課税制度は利用できません。

 また、教育資金管理契約の契約期間中に贈与者が死亡した場合や、教育資金管理契約が終了した場合、それぞれ相続税または贈与税がかかることがあります。

 相続にかかる税金(相続税)について見ていきましょう。

 相続税は亡くなった人(被相続人)から遺産を相続または遺贈により取得した方にかかる税金です。

 相続税の非課税枠(基礎控除)は、3,000万円+600万円×法定相続人の数(※)で決まります。※法定相続人の数は、相続の放棄をした人がいても、その人を加えて数えます。養子がいる場合には、実子がいれば1人まで、実子がいない場合には2人までカウントします。 

 例えば、夫が亡くなった場合、法定相続人が妻のみなら遺産が4,200万円まで、妻と子1人なら4,200万円、妻と子2人なら4,800万円までなら相続税はかかりません。

 相続税の税率は10%から最高55%までで、相続財産が多いほど税率が高くなります(参照:No.4155 相続税の税率丨国税庁)。

相続財産額 税率 控除額
1,000万円以下 10% -
1,000万円超から3,000万円以下 15% 50万円
3,000万円超から5,000万円以下 20% 200万円
5,000万円超から1億円以下 30% 700万円
1億円超から2億円以下 40% 1,700万円
2億円超から3億円以下 45% 2,700万円
3億円超から6億円以下 50% 4,200万円
6億円以下 55% 7,200万円
被相続人:夫、法定相続人:妻、長男、長女の3人
相続税の課税価格:1億円
法定相続分(妻1/2:5,000万円、長男1/4:2,500万円、長女1/4:2,500万円)で相続した場合の相続税

【基礎控除額】
3,000万円+600万円×法定相続人の数3人=4,800万円

【課税遺産総額】
1億円-4,800万円=5,200万円

【相続税の総額】
①妻:5,200万円×1/2=2,600万円
   2,600万円×15%-50万円=340万円
②長男・長女:5,200万円×1/4=1,300万円
   1,300万円×15%-50万円=145万円
③①+② 340万円+145万円×2=630万円

【各人の相続税額】
①妻:630万円×5,000万円/1億円=315万円
  315万円-配偶者の税額軽減額315万円=0円
②長男・長女:630万円×2,500万円/1億円=157.5万円

 相続税には、次のような一定の金額が相続税から控除される制度があります。

①配偶者の税額軽減

 配偶者の税額軽減とは、被相続人の配偶者が遺産分割や遺贈により実際に取得した正味の遺産額が、「1億6,000万円」と「配偶者の法定相続分相当額」とのいずれか多い金額までは配偶者に相続税はかからないという制度です。

 なお、この配偶者の税額軽減は、相続税の申告期限までに分割されていない財産はこの 税額軽減の対象になりません。

②未成年者控除

 未成年者控除とは、相続人が未成年者の場合、相続税の額から「その未成年者が満18歳になるまでの年数(※)×10万円」を差し引くことができる制度です。※1年未満の端数の期間がある場合、1年に切り上げ

 例えば、未成年者の年齢が15歳10カ月の場合、10カ月は切り捨てて15歳とし、未成年者控除額は10万円×3年=30万円となります。

 なお、未成年者控除の額が、未成年者本人の相続税額を超える場合、その超過分は、未成年者の扶養義務者(親など)の相続税額から差し引くことができます。もしその未成年者が、今回の相続以前に他の相続で未成年者控除を受けていた場合、その分を考慮して控除額が制限されることがあります。

③障害者控除

 障害者控除とは、相続人が85歳未満の障害者の場合、相続税の額から「その障害者が満85歳になるまでの年数(※)×10万円(特別障害者は20万円)」を差し引ける制度です。なお、控除を受けるには、日本国内に住所があるなどの一定の条件があります。※1年未満の端数の期間がある場合、1年に切り上げ

 例えば、障害者(一般障害者)の年齢が60歳9カ月の場合、9カ月は切り捨てて60歳とし、障害者控除額は10万円×25年=250万円となります。

 障害者控除額が、その障害者本人の相続税額を超える場合、超えた分はその障害者の扶養義務者(親や配偶者など)の相続税額から差し引くことができます。また、もしその障害者が以前の相続で既に障害者控除を受けていた場合、今回の相続での控除額が制限されることがあります。

④相次相続控除

 相次相続控除とは、亡くなった人が今回の相続開始前10年以内の相続や遺贈などで相続税がかかっていた場合、1年につき10%の割合で逓減(ていげん)した後の金額を、今回の相続税額から控除することができる制度です。

 この他、外国税額控除、贈与税額控除があります。

 生前贈与で節税できるケースは、一般的に年間110万円以下の贈与です。また、相続税の税率が贈与の税率よりも高い場合、110万円を超えて生前贈与しても節税効果が期待できます。

 例えば、親の相続税の基礎控除後の金額が2億2,000万円で相続税の税率45%の場合、相続人が後継者の長男だけの場合、長男と長男の孫に生前贈与で年間110万円を10年(110万円×2人×10年=2,200万円)を行うと基礎控除後の金額は1億9,800万円に下がるため、相続税の税率は40%に下がります。

生前贈与をしなかった場合とした場合の比較例

【生前贈与をしなかった場合の相続税】
2億2,000万円×45%-2,700万円=7,200万円

【生前贈与をした場合の相続税】
1億9,800万円×40%-1,700万円=6,220万円

【節税額】
7,200万円-6,220万円=980万円(贈与税0円)

 110万円超の贈与の場合は、贈与税はかかりますが、その贈与税より相続税を減らす効果が期待できます。例えば、上記の長男と孫2人に生前贈与で年間200万円を10年(200万円×3人×10年=6,000万円)を行うと基礎控除後の金額は1億6,000万円に下がります。相続時に孫が相続人など相続税の対象とならなければ、相続税はかからず生前贈与加算の対象にもなりません。

 節税額は「贈与税+相続税」の合計で検討するとよいでしょう。

 また、生前贈与するなら、将来価値が上がるものを贈与した方が節税効果は高くなります。値上がりが期待できる財産として不動産や株式などです。ただし、不動産を生前贈与すると贈与税だけでなく、相続よりも高い登録免許税や不動産取得税といった移転のコストがかかるため、考慮が必要です。

 なお、生前贈与はあげたいときに、あげたい人にすぐに贈与できます。相続人とならない孫などへの生前贈与など、相続よりも活用できる選択肢が広く、即時で相続財産を減らすことが可能です。ただし、認知症など判断能力が低下すると生前贈与ができなくなることがあります。心配な場合は早めに検討するとよいでしょう。

 一方、相続のほうが節税できるケースは、財産が基礎控除額以下の場合や小規模宅地等の特例を使いたいような場合です。

 生前贈与はよいことばかりではありません。気をつけたい注意点を見ていきましょう。

 贈与をするなら、「きちんと贈与する」ことが必要です。子に贈与したはずの預金を親が管理している場合など、あげたつもりでは贈与として認められないことがあります。

①贈与を受けた側に意思能力がない場合

 贈与を受けた側に意思能力がない場合、贈与を受けたという承諾ができないことになります。また、贈与をする側にも、判断能力が必要になります。

②贈与を受けた側が贈与の事実を知らない場合

 贈与は「あげます・もらいます」で成立します。必ずしも書面は必要ありませんが、相手が贈与を知らなければ贈与として認められません。贈与する側の意思表示だけでなく、贈与を受けた側の受諾が必要です。

 相続税対策として暦年贈与を利用する場合、「定期贈与」としてみなされないように注意が必要です。定期贈与とみなされると贈与税の非課税枠内でも贈与税が発生します。例えば、110万円の贈与を10年間毎年行っていたことが定期贈与にあたると、総額の1,100万円に贈与税がかかることになります。

 定期贈与は、例えば、10年間にわたって毎年100万円ずつ贈与を受けることが、贈与者との間で契約(約束)されている場合や、毎年同じ日に同じ金額を長年贈与している場合にみなされやすいため、注意しましょう。

 相続人には、亡くなった人の遺産を受け継ぐ最低限の権利として「遺留分」があります。なお、兄弟姉妹には遺留分はありません。

相続人 遺留分
配偶者と子 配偶者 1/4 子(子全員で1/4)
配偶者と父母 配偶者 1/3 父母(全員で1/6)
配偶者と兄弟姉妹 配偶者 1/2 兄弟姉妹 なし

 例えば、相続人間で生前贈与額に偏りがあると、贈与を受けた者が他の相続人から遺留分侵害額請求を受ける可能性があるので注意が必要です。できるだけ請求を受けないように公正証書遺言には付言事項もあわせて作成しておくほか、請求を受けた場合でも支払えるように保険金を受け取れるようにしておいたり、貯蓄を持っておいたりなど、対策をあわせて考えておくとよいでしょう。

 なお、遺留分侵害額請求は、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与や遺贈があった時を知った日から1年、あるいは相続開始から10年経過すると時効になり消滅します。

 この他、生前贈与のし過ぎは禁物です。老後の生活資金、介護資金などは余裕を持って確保しておきましょう。

 相続税を節税したい場合、生前贈与は有効な選択肢です。その中でも、暦年贈与は110万円以下であれば税金がかかりません。しかし、生前贈与加算で相続税に加算される期間も最長7年と長くなったことで、せっかく生前贈与しても非課税メリットを活用できないリスクが高くなりました。

 生前贈与を検討しているときは、早めに税理士などに相談するとよいでしょう。