目次

  1. PPM分析に関する出題(令和3年度)
    1. 問題
    2. 正解と解説
  2. PPM分析の理解に役立つコンテンツ
    1. PPM分析を事例で解説
    2. ストーブを「金のなる木」に
    3. 既存事業の価値を最大化

 今回は、令和3年度1次試験「企業経営理論」から、PPM分析に関する問題をピックアップします。

第2問
ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)が開発した「プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント」(以下「PPM」という)と、その分析ツールである「プロダクト・ポートフォリオ・マトリックス(BCG成長-シェア・マトリックス)」に関する記述として、最も適切なものはどれか。

ア PPMの分析単位である戦略事業単位(SBU)は、製品市場の特性によって客観的に規定される。

イ 「プロダクト・ポートフォリオ・マトリックス」では、縦軸に市場成長率、横軸に戦略事業単位(SBU)の売上高をとり、その2次元の座標軸の中に各事業が位置付けられる。

ウ 「プロダクト・ポートフォリオ・マトリックス」において「金のなる木」に分類された事業は、将来の成長に必要な資金を供給する。

エ 「プロダクト・ポートフォリオ・マトリックス」において「花形」に分類された事業は、生産量も大きく、マージンは高く、安定性も安全性も高い。

オ 「プロダクト・ポートフォリオ・マトリックス」において「問題児」に分類された事業からは撤退すべきである。

中小企業診断士令和3年度1次試験問題「企業経営理論」(出典:日本中小企業診断士協会連合会)


ア SBUは既存事業の枠にとらわれない、全社的な戦略の意思決定に関する組織単位を指す。製品市場の特性で客観的に規定されるものではない。

イ 横軸には相対的マーケットシェア(市場占有率)を取るのが正しい。

ウ 正しい。

エ 「花形」の状態は売り上げが急拡大し、キャッシュフローが高まる一方、多数の競合の参入で競争が激化し、マージン・安定性・安全性が高いとは言えない。

オ 「問題児」は市場ライフサイクルの成長期初期にあたり、市場占有率を高められる商材・サービスなら成長の可能性がある。一概に撤退すべきとは言えない。

正解:ウ

 ここからはPPM分析の理解に役立つ解説記事や、経営事例のコンテンツを紹介します。

 記事「PPM分析とは? 意味や分析の3ステップ、メリットや注意点を解説」では、WHITE DISH代表取締役の原田優さんが、PPM分析について基本から解説しています。

PPM分析とは?
PPM分析とは?(デザイン:浦和ゆうすけ)

 理論だけでなく、花形、問題児、金のなる木、負け犬のそれぞれについて、実際の企業の事例を取り上げています。

 また、PPM分析の作り方や、注意点、PPM分析で成功したソニーやサントリーの事例も詳しく解説しています。

 新潟市のダイニチ工業は元々、家庭用ストーブで高い製品力を持っていました。しかし、創業者の孫で3代目の吉井唯さんは2014年の入社当時、「控えめでブランド認知が非常に弱いという課題がありました」といいます。

 そこで、控えめだったロゴを刷新したり、商品のラインアップを機能やデザイン、使いやすさなどを計画的に整理したりしました。店頭で直接接客してニーズをつかみ、スタンダードモデルだけでなく、上位モデルも売れるように変えました。

 まさに事業を「花形」から「金のなる木」に育てる戦略で、トップシェアを誇り、売上高営業利益率は家業に入った2014年の2.0%から、2024年は5.6%に上がりました。

 PPM分析は新規事業より、既存事業のポジションの把握と戦略策定に適した手法です。

 温浴施設向けの入浴剤や洗剤を製造する名古屋市の健美薬湯5代目の松田宗大さんは、自社の成長性の乏しさに課題を感じ、サウナなどの入浴施設を運営する新規事業も温めていました。しかし、相談したブランディングデザイナーから「場所を借りて集客して接客するという、これまでの事業には無いサービス業のオペレーションが必要になる」と指摘され、断念します。

 代わりに選んだのは、質の高い天然生薬という自社の強みを最大化する戦略でした。社名を「ヘルスビューティー」から、商品価値がダイレクトに伝わる「健美薬湯」に変更。商品ラインアップを3分の2に絞ったり、一般消費者向けのパッケージを作ったりして、売り上げも商談数も伸ばしました。

 既存事業の価値を冷静に見つめ直し、適切な経営資源の配分を行ったからこその成功と言えます。