トランプ関税で経産省が資金繰り支援 ものづくり補助金優先採択も

アメリカのトランプ大統領による自動車関税や相互関税の発効を受け、経済産業省は2025年4月3日、影響を受ける中小企業や自動車部品サプライヤーを支援するための支援策を発表しました。特別相談窓口の設置や、セーフティネット貸付の要件緩和、日本貿易保険(NEXI)による資金調達等の支援のほか、ものづくり補助金や新事業進出補助金の優先採択も盛り込んでいます。
アメリカのトランプ大統領による自動車関税や相互関税の発効を受け、経済産業省は2025年4月3日、影響を受ける中小企業や自動車部品サプライヤーを支援するための支援策を発表しました。特別相談窓口の設置や、セーフティネット貸付の要件緩和、日本貿易保険(NEXI)による資金調達等の支援のほか、ものづくり補助金や新事業進出補助金の優先採択も盛り込んでいます。
目次
相互関税とは、アメリカの貿易相手となる国が高い関税を課している場合、アメリカの関税も相手国と同じ水準まで引き上げる対応のことを指します。
相互関税とは別に、自動車については、通商拡大法にもとづき、自動車と特定の自動車部品の輸入に25%の関税が、現地時間で4月3日午前0時から発効します。
日本国内メーカーのセダン、SUV、クロスオーバー、ミニバン、カーゴバンなどの輸入乗用車や小型トラック、およびエンジン、トランスミッション、パワートレイン部品、電装部品といった主要な自動車部品に適用されます。
ホワイトハウスの公式サイトに掲載された大統領令によると、日本は24%。米や自動車などに非関税障壁があると主張していますが、経済安全保障などを専門とする和田大樹さんは記事「トランプ関税と日米経済・貿易関係の行方 トランプ大統領の対日認識から」のなかで、「これは事実の一面を誇張したもので、コメへの高関税は例外的な措置であり、工業製品では日本がほぼゼロ関税である点は無視されています」と解説しています。
経産省は、このような状況を踏まえて短期的な支援策を発表しました。この支援策の目的は、関税の影響を受ける事業者、特に中小企業や中堅自動車部品サプライヤーが直面する可能性のある経営上の課題に対応し、事業の継続や強化を図ることです。
支援策は大きく分けて、相談窓口の設置、資金繰り・資金調達支援、そして中堅・中小自動車部品サプライヤーの事業強化の三つの柱で構成されています。
影響を受ける中小企業・小規模事業者の相談に対応するため、全国1000ヵ所に特別相談窓口を設置しました。
これらの相談窓口は、JETRO(日本貿易振興機構)に加え、政府系金融機関(日本政策金融公庫、沖縄振興開発金融公庫、商工中金)、商工団体(商工会議所、商工会連合会、中小企業団体中央会、全国商店街振興組合連合会)、中小企業基盤整備機構、そして各地の経済産業局などに設けられています。
アメリカの自動車関税措置等に伴う特別相談窓口(PDF形式:609KB)を参照してください。
これらの窓口では、アメリカの関税措置に関する情報提供のほか、経営上の相談や利用可能な支援策の紹介などが提供されます。中小企業・小規模事業者は、身近な地域の窓口で気軽に相談することが可能です。また、これらの窓口を通じて、関係業界への影響が調査・把握されます。
アメリカの関税が発効した場合、資金繰りが悪化する懸念があります。経済産業省は、こうした事態に対応するため、以下の資金繰り・資金調達支援策を実施します。
日本政策金融公庫などが実施するセーフティネット貸付の利用要件を緩和します。従来の対象は「最近3ヶ月の売上高が前年同期または前々年同期に比べて5%以上減少等」でしたが、この数値を満たさなくても、アメリカの関税引上げ等の影響を受ける事業者が資金繰りに影響を受けている場合は対象になります。
セーフティネット貸付(経営環境変化対応資金)の概要は以下の通りです。
海外子会社の資金繰り悪化等に対応するため、日本貿易保険(NEXI)の融資保険を通じて日本企業の資金調達を支援します。
貿易保険は、企業の輸出、投資、融資等の対外取引において生じる民間保険では救済できないリスクをカバーするものです。通常、一般的な輸入関税措置は保険金支払事由とはなりませんが、今回のアメリカの輸入関税措置に起因して、輸出契約が破棄され、代金回収不能等の損失が発生した場合は、NEXIの輸出保険のカバー対象となります。
具体的には、以下のようなケースが想定されています。
【ケース1】代金回収不能: アメリカ企業により輸出契約がキャンセルされ、代金回収が不能となった場合、回収不能となった損失について保険金が支払われます。
【ケース2】輸送費用(滞船料等)の増加: 船積み後、関税適用除外の承認が下りるまでの間、現地の港にて滞船することになり、追加的な輸送費用(滞船料等)が発生した場合、増加費用事故として追加費用部分の損失について保険金が支払われます。
ただし、これらの保険金支払いの対象となるのは、関税措置決定前に有効な保険契約である点に注意が必要です。
経産省は、特に影響を受ける可能性のある中堅・中小の自動車部品サプライヤーに対し、事業強化のための集中的な支援策を実施します。
全国各地の支援拠点(県産業振興機構や中小機構など)による伴走支援をする「ミカタプロジェクト」の利用を呼び掛けています。ミカタプロジェクトは、窓口相談対応、セミナー・実地研修、専門家派遣などを通じて、各企業の状況に応じた経営アドバイスや各種支援策の紹介が利用できます。
アメリカの関税措置の影響を受けた事業者が、新事業進出等に向けた設備導入などを検討する場合、ものづくり補助金や新事業進出補助金について優先的に採択されます。
これらの補助金を活用することで、自動車部品サプライヤーは、事業の多角化や高付加価値化に向けた取り組みを加速させることが期待されます。例えば、新事業進出補助金は、既存基金の活用により1500億円の規模で、また、生産性革命推進事業は2024年度補正予算で3400億円の規模で実施予定です。
このほか、経産省は、サプライチェーン全体で、適切な価格転嫁が阻害されないよう、関係業界に対し要請しました。
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