目次

  1. 書店経営を難しくする3つの要因 経産省の報告書から
    1. 低い粗利率と流通慣行
    2. コスト転嫁の困難さ
    3. ネット書店との競合
  2. 時代のトレンドを映す書店 一覧性と編集力に強み
  3. 新しい発想に必要なひらめきと観察力を磨ける書店
  4. 新規事業アイデアを探しに有隣堂へ
  5. 偶然の出会いをもたらす探索活動

 全国的な書店数の減少は社会課題となっています。こうした状況を変えようと、経済産業省が「書店振興プロジェクトチーム」を立ち上げるなど対策に乗り出しています。

 経産省がまとめた資料によると、紙媒体の出版物全体の売上は、1996年をピークに長期的な減少傾向にあり、とくに雑誌の激しい落ち込みが書店の経営を直撃しており「1日に1軒以上のペースで書店が消えている」とも言われています。

書店経営者向け支援施策活用ガイド
書店経営者向け支援施策活用ガイド(経産省の公式サイトから https://www.meti.go.jp/press/2024/10/20241004002/20241004002.html)

 こうした結果、2024年8月時点で、全国の約27.9%の市区町村には書店が存在しない状況となっています。背景には、単なる「本離れ」だけではない、構造的な課題が存在します。経済産業省の報告書案が指摘している課題のなかから3つを紹介します。

 書店の粗利率は約22%程度と低く、「委託配本制度」の下で書籍が33.4%、雑誌は47.3%返品されており、この返品コストも書店経営を圧迫する一因となっています。

 再販売価格維持制度により、人件費や物流費、キャッシュレス決済手数料などのコストが上昇しています。しかし、再販売価格維持制度により、出版社が決めた価格で、全国一律の価格で販売されているため、店舗運営のコスト上昇などを販売価格に転嫁できない状況となっています。

 利便性の高いネット書店では、再販売価格維持制度があるにも関わらず、過度なポイント還元や配送料無料などで実質的に値引きが行われている現状があります。

(続きは会員登録で読めます)

ツギノジダイに会員登録をすると、記事全文をお読みいただけます。
おすすめ記事をまとめたメールマガジンも受信できます。