目次

  1. テレワークとは
  2. 中小企業がテレワークを導入するメリットと事例
    1. 採用力がアップした事例
    2. 働き方改革セミナーで顧客と接点
  3. テレワーク導入の課題と解決方法
    1. 生産性低下の懸念
    2. 人事評価や労務管理の難しさ
    3. 情報セキュリティのリスク
  4. 中小企業向けのテレワークおすすめツール
    1. 情報セキュリティ
    2. 会議システム
    3. 勤務の管理システム

 テレワークとは、ICTを活用し自宅などでオフィスを離れて仕事をする柔軟な働き方のことを指します。時間や場所を有効に活用できる特徴があり、2020年の新型コロナウイルス感染症の拡大とともに普及しました。

 厚生労働省は、テレワークには次の3つの形態があると説明してきました。

  1. 在宅勤務(オフィスに出勤せず自宅で仕事をする)
  2. サテライトオフィス勤務(自社のサテライトオフィスなどで仕事をする)
  3. モバイル勤務(顧客先、移動中、出張先のホテルなど仕事をする)

 最近では上記の3つに加え、観光地などでテレワークを活用し、働きながら休暇をとる「ワーケーション」も注目されています。

 テレワークに取り組む企業側のメリットとしては、次のようなポイントが考えられます。

  • 採用力の強化と離職防止
  • 営業効率の向上
  • 予期できない災害時でも事業継続できる計画性

 岡山市で働き方改革を支援する「WORK SMILE LABO」(ワクスマ)は積極的にテレワークを取り入れることで、子育て女性が離職せずに済むようになりました。

 そのほか、求人票に「在宅ワークを活用した柔軟な働き方が出来ます」と追記すると、中途の求人が前年の3倍ほどに増えました。

 新卒採用でも、テレワークを中心とした新しい働き方に取り組んでいることを伝えた結果、2020年度の岡山県内の新卒採用ランキングで4位にランクインしました。

 営業担当も営業後に本社まで戻って書類作成をする必要がなくなったといいます。

WORK SMILE LABO(ワークスマイルラボ)の石井聖博社長(最前列左から2番目)と社員たち。明治44年(1911年)創業。岡山市で筆や墨を販売する「石井弘文堂」から始まり、1969年に石井事務機センターに社名変更し、OA機器やオフィス家具、IT商材へと販売を広げてきた。2018年にはWORK SMILE LABOに社名変更し、中小企業に新しいワークスタイルを提案している。従業員数28人、年商8億2030万円

 テレワークでの業務に工夫を凝らしながら、全員参加型の経営を進めて、顧客との接点も増やしているのが、社員数33人の工業用ブラシ専業メーカーのバーテック(大阪市都島区)です。 

 自社で働きがいを高める工夫をして、その工夫をもとに顧客の経営者や幹部向けに、働き方改革に関するセミナーを開催しています。 

バーテックで働く従業員

 一方で、新型コロナの感染拡大により、半ば強制的に社会全体でテレワークが始まったため、様々な課題も浮き彫りになりました。

 テレワークの生産性については、下がるのではないかという懸念が根強く、様々な調査では、上がったという結果と下がったという結果が混在しました。

 中小企業診断士の北原竜也さんは、記事「テレワークで生産性が低下する理由は?有効な対策・ITツールも紹介」のなかで、「事前の準備にテレワークに適した制度作り等の準備を行っているのか、いないのかが生産性の明暗を分けているように感じています」と指摘しています。
 また、上司や同僚だけでなく、営業・取引先との連絡や意思疎通に苦労している場合も生産性が低下する可能性があります。

 評価者(上司)と被評価者(部下)が離れて仕事をしており、勤務態度や仕事の進め方を把握しづらいため、人事評価や労務管理が難しいと考えられています。

 社労士の岡佳伸さんは、記事「テレワークの人事評価、なぜ難しい?社労士が具体例から課題と対策を解説」のなかで「一つの解決方法として、評価項目の見える化があげられます」と説明しています。

 具体的には、3つのポイントを指摘しています。

  • 定性的な評価基準をやめて目標管理制度の改善する、もしくは廃止する
  • 職務分析・職務評価の結果を人事評価に活用する
  • わかりやすい評価目標を設定する

 テレワークをするためには、顧客や取引先の重要データを職場外に持ち出したり、職場外に設置された端末との間で、インターネットを介して送受信したりする必要も出てきます。

 マルウェアに感染したパソコンを経由して機密情報が盗まれ、身代金を要求される事件も国内外で頻発しています。

 ソフトウェア開発サービスを手がけるクラウドアバント代表の陳錦生さんは記事「情報セキュリティ教育とは 準備や研修方法3つの手順・注意点を解説」で「サイバーリスクを軽減し情報セキュリティを強化するには、オペレーション、システム、人間の3つの側面から考える必要があります」と指摘しています。

 こうした課題に対し、日本テレワーク協会は、中堅・中小企業がテレワークを実現するために最低限必要なシステムについて、安く、簡単に運用できる具体的な製品を提示する「中堅・中小企業におすすめのテレワーク製品一覧」(PDF方式:804KB)を公表しています。

 このなかでは、とくに情報セキュリティと、会議システム、勤務の管理システムについて情報をまとめています。

 情報セキュリティについては画面転送方式、安全ファイル持出方式、クラウド型アプリ方式の3つの方式を紹介しています。

安全なテレワーク環境実現方式の比較(中堅・中小企業におすすめのテレワーク製品一覧から引用)

 このなかで、協会は「安全で比較的安価なリモートデスクトップ方式が、中堅・中小企業向けにお薦め、ということが言える」と説明しています。具体的に6つの製品を紹介しています。()内は提供企業です。

 このほか、業務ファイルを外部のPCに持ち出して、業務アプリも外部のPCで実行する場合は、ファイルを持出す方式を検討することが望ましい、と説明しています。

 安全ファイル持出方式は、外部PCのメモリや一時ファイルの特定エリアに展開するだけに留め、終了時には元の安全な場所に書き戻し、外部PC上は全てを削除する方式です。協会は5つの製品を紹介しています。

 社内外との打ち合わせに必要な会議システムは9つの製品を紹介しており、この中から近々サービズ終了する製品を除く8つを紹介します。

 勤務の管理システムとしては、勤務実態の把握を目的とした勤怠管理ソフトや、在席管理(プレゼンス管理)システムを紹介しています。

 勤怠管理のツールは6つの製品群を紹介しています。

cyzen(レッドフォックス)
SKYSEA Client View(Sky)
MITERAS(パーソルプロセス&テクノロジー)
F-chair+(テレワークマネジメント)
CYBER XEED就業」「キングオブタイム」などの勤怠管理ソフト
勤労の獅子(エス・エー・エス)

 在席管理システムは次の4つの製品群を紹介しています。

Sococo Virtual Office(イグアス)
テレワークサポーター(キヤノンITソリューションズ)
Teamsなど、在席状況確認ができる通話コミュニケーションツール
サイボウズなど、在席状況確認ができるグループウェア