中小企業の69%、2021年春に賃上げ 賃上げ3%以上は大企業上回る
2021年春に賃上げを実施した中小企業は、アンケートに回答した8253社のうちの69.2%にのぼることが東京商工リサーチの調査でわかりました。このうち、3%以上の賃上げをしたと回答した中小企業は51.4%にのぼり、その割合は大企業を上回りました。「人手不足が継続し、人材確保や従業員の定着率向上のためにやむなく賃上げに応じざるえない苦悩がうかがえる」と分析しています。
2021年春に賃上げを実施した中小企業は、アンケートに回答した8253社のうちの69.2%にのぼることが東京商工リサーチの調査でわかりました。このうち、3%以上の賃上げをしたと回答した中小企業は51.4%にのぼり、その割合は大企業を上回りました。「人手不足が継続し、人材確保や従業員の定着率向上のためにやむなく賃上げに応じざるえない苦悩がうかがえる」と分析しています。
東京商工リサーチは2021年8月2日~11日、インターネットで企業の賃上げ状況を尋ねるアンケートを実施し、9760社の有効回答を集計、分析しました。9760社の内訳をみると、1507社が大企業で、8253社が中小企業でした。
調査結果によると、大企業のうち、76.6%が賃上げを実施したと回答しましたが、中小企業は69.2%でした。
産業別では、農・林・漁・鉱業を除く9産業で、大企業が中小企業よりも「賃上げを実施した」と回答した割合が高くなりました。特に、運輸業は大企業が76.4%(68社中、52社)に対し、中小企業は60.0%(328社中、197社)にとどまり、16.4ポイントの差がついていました。
このほかにも、大企業は、建設業、製造業で「賃上げを実施した」と答えた企業が80%を超えましたが、中小企業では80%超えた産業はなく、製造業、建設業、卸売業の3産業が70%台でした。
一方、宿泊業や旅行業、飲食業などが含まれるサービス業他で、「賃上げを実施した」大企業は66.5%(242社中、161社)、中小企業も62.7%(1,502社中、943社)で、差は3.8ポイントにとどまりました。
賃上げを実施したと回答した企業に対し、賃上げ率を聞いたところ3575社(中小企業3161社、大企業414社)から回答を得ました。
賃上げを実施した企業のうち、3%以上の賃上げは大企業が32.1%にとどまる一方、中小企業では51.4%を占めました。東京商工リサーチは「コロナ禍の影響が長引き業績が低迷するなかでも、人材確保のため、中小企業が賃上げを迫られている窮状が透けて見える」とコメントしています。
回答が得られた賃上げ率は次の通りです。
賃上げ率 | 中小企業 | 大企業 |
---|---|---|
1%未満 | 92社 | 10社 |
~2% | 620社 | 121社 |
~3% | 823社 | 150社 |
~4% | 624社 | 62社 |
~5% | 113社 | 10社 |
~10% | 532社 | 35社 |
~20% | 178社 | 12社 |
~30% | 35社 | 1社 |
~40% | 19社 | 0 |
~50% | 4社 | 0 |
50%以上 | 121社 | 13社 |
数十%の賃上げが見られる企業が多いのは、2020年にコロナ禍で払えなかったボーナスなどを2021年に復活した企業が一定数いるためだと考えられます。
コロナ禍で厳しい経営環境が続きますが、労働市場は再び人手不足感があることや、2021年秋から適用される最低賃金が全国平均で930円と28円引き上げられたため、今後も賃上げの傾向は続くことが見込まれます。
中小企業は、売上アップの工夫のほか、事業再構築補助金の最低賃金枠や、業務改善助成金など補助金・助成金も活用しながら今後も対応していくことが必要になりそうです。
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