目次

  1. 政府の緊急対策とは
    1. 原油高対策
    2. エネルギー・原材料・食料などの安定供給対策
    3. 中小企業対策
  2. 緊急対策の今後のスケジュール

 新型コロナによる生活や経済への影響が続くなか、ロシアによるウクライナ侵略で原油や穀物の国際価格が上昇し、一部の水産物や原材料などの安定供給の滞るなどの影響が出ています。

 政府の緊急対策とは、次の4つの柱を基本とする物価の高騰による生活や経済への影響を和らげるための総額6.2兆円の支援策です。岸田首相は4月26日の記者会見で発表しました。

  1. 原油高対策(1.5兆円)
  2. エネルギー・原材料・食料などの安定供給対策(5000億円)
  3. 中小企業対策(1.3兆円)
  4. 生活困窮者への支援策(1.3兆円)

 このほかにも予備費の積み増しなどがありますが、今回の支援策のうち、中小企業に関わる部分を抜粋して紹介します。

 原油高対策について、岸田首相は4月26日の記者会見で次のように話しました。

「第一に原油価格の高騰への対応です。燃料油の価格対策については4月までの間、1リットルあたり25円の範囲で補填して、レギュラーガソリン価格を172円程度に抑えてきました。

これまでの激変緩和措置を強化して、5カ月分で約1.5兆円規模の新たな補助制度を設けます。新制度では、基準価格を当面168円に引き下げるとともに、燃料油価格のさらなる高騰にも対応できるよう、補填の上限を35円に引き上げます。

仮にガソリン価格が200円を超える事態になっても、市中のガソリンスタンドでの価格は当面168円程度の水準に抑制します。

さらに、万一、国際原油市場価格が例えば1バレル150ドルといった前例のない水準まで高騰し、35円を超えて補填が必要になった場合にも、価格上昇分の2分の1を支援して、国内価格の上昇を抑制します。

対象油種は、ガソリン、軽油、重油、灯油に加えて航空機燃料も対象とします。さらには、タクシー用LPガスにも同様に支援をします。

このほか運輸、農林漁業、生活衛生関係営業など影響が大きい業種への支援を進めます」

 第二の柱であるエネルギー・原材料・食料などの安定供給対策について、岸田首相は次のように話しました。

「省エネ住宅の支援など省エネ、クリーンエネルギー利用を一層推進し、極力、輸入資源に頼らないエネルギー構造に転換します。

事態の長期化を見据え、ロシアやウクライナに輸入の多くを頼っていた半導体原料や、パラジウムなどの産業用原材料の調達の多様化を進めます。

産油国への原油増産の働きかけ、エネルギー調達の多角化に加え、エネルギー源の多様化に向けて再エネの最大限の導入と、原子力の活用を進めていくことも、エネルギー市場の安定化、低廉かつ安定的なエネルギー供給確保のために極めて大切です。関係諸国とも連携しながら全力を尽くします。

食料などの価格上昇は、家計にとっては重大な問題です。輸入小麦については、政府が買い付け、国内の製粉会社に売り渡しています。

ウクライナ情勢で、国際価格は1割以上、足元で上昇していますが、9月までの間、政府の販売価格を急騰する前の水準に据え置きます。合わせて輸入小麦から国産の米や米粉、国産小麦への切り替えを支援します。

農業については、肥料原料の安定的な調達を支援するほか、配合飼料のセーフティーネット基金の積み増しなどにより、輸入価格高騰の経営への影響を緩和していきます。

漁業については、水産加工業に対し、カニ、ウニ、そしてイクラなどのロシア産水産物などに代わる、原材料の調達を支援するほか、ロシアとの間の漁業協定に基づく操業に不確実性が高まっていることを踏まえ、関係漁業者への支援を機動的に行います。

さらに木材について、ロシアからの輸入を一部禁止したことを踏まえ、国産材の活用を支援いたします」

 中小企業対策については、岸田首相は次のように話しました。

「第3の柱は中小企業支援です。引き続きエネルギーコスト、原材料費、労務費などの上昇分を適切に価格に転嫁できるよう、取引の適正化を進めます。

公共調達や補助金における優遇措置を設け、賃上げを推進します。政府系金融機関によるセーフティーネット貸し付けの金利をさらに引き下げるとともに、実質無利子・無担保融資を9月末まで延長し、資金繰りに万全を期します。

また事業再構築補助金に特別枠を創設し、原油価格や物価高騰の中で、新規事業に挑戦する企業を後押しします」

 緊急対策について、岸田首相は「今月(4月)中に一般予備費、コロナ予備費の使用を閣議決定し、速やかに実施に移し、皆さまのお手元に各種支援策を届けします」と話しました。さらに、2.7兆円規模の2022年度補正予算案を編成し、5月にも国会に提出する方針です。