SDGs、中小企業でどう実践? 日本総研・石川智久さんが選ぶ5本
ツギノジダイでは毎月、20本近い経営者インタビューを掲載しています。その中から、Yahoo!ニュースの公式コメンテーターとしても知られる日本総研の石川智久・上席主任研究員が選んだ注目記事を、解説とともに月1回お届けします。第2回は、2022年3月の掲載分から5本をピックアップしてもらいました。SDGsを実践するためのヒントがちりばめられているといいます。文中の記事リンクとあわせてご覧ください。
ツギノジダイでは毎月、20本近い経営者インタビューを掲載しています。その中から、Yahoo!ニュースの公式コメンテーターとしても知られる日本総研の石川智久・上席主任研究員が選んだ注目記事を、解説とともに月1回お届けします。第2回は、2022年3月の掲載分から5本をピックアップしてもらいました。SDGsを実践するためのヒントがちりばめられているといいます。文中の記事リンクとあわせてご覧ください。
目次
日本の伝統文化は世界から注目されています。コロナ後に訪れたい旅先ランキングでも日本が上位に入るのは、やはり素晴らしい伝統文化と歴史があるからです。しかし、それを大きなビジネスチャンスまで高めている事例はあまり多くありません。こうしたなか、この会社が西陣織をうまく現代風にアップデートして世界にアピールしているのは本当に素晴らしいと思います。
ポイントは東洋と西洋の文化のハイブリッドであり、商品開発には日本とイタリアの素材と文化の良いところをいかしているとのこと。西陣織はフランスのジャカード織機という海外の技術を採り入れて成功したという歴史がありますが、この会社はイタリアという新しい風を送り込むことで、西陣織に新たな歴史を刻んだと言えるでしょう。
↓ここから続き
また、最近、SDGsが話題ですが、SDGsでは地球環境などの物質的なところに着目が集まる傾向があり、文化や歴史という観点が弱いと言われています。そのため、SDGsのその先にあるBeyond SDGsではその観点を強化すべきと言われています。是非とも西陣織という日本文化を支えることで、Beyond SDGsの好事例となることを期待します。
アパレルはこれまで、大量廃棄問題などから地球環境の保全という観点で厳しい意見を受けることが多い業界でした。こうしたなか、多くのアパレル企業では衣料品のリサイクルの強化によって廃棄を減らすことなどを通じて、SDGsに向けた動きを加速しています。そうした最先端のトレンドのなか、先行事例となりそうなのがこの会社です。カポックという植物を活用し、動物由来のものを使わないことで動物愛護を貫くと同時に、木の伐採もいらないので自然環境にも優しいといった、まさにSDGs的なアパレルビジネスを行っています。
またこのビジョンを実現するために、海外の研究機関との連携、地道な営業活動、クラウドファンディング、既存事業と切り分けてゼロベースで考えるための別会社化など、様々な対策を多面的に行っていることも素晴らしい。ビジョンを実現するためには何をすべきかが具体的に分かる良い事例です。
カイゼンや社内構造改革に向けて外部の色々なシステムを導入することがあると思いますが、自社にあったものが市販されていないという不満はよく聞かれます。そのため、業務効率化などに着手できない企業も少なくないでしょう。しかしながら、この会社は、それで諦めるのではなく、自分たちでシステムや機械を作ってしまうところが本当に素晴らしい。それも最新のものではなく、手ごろな物を組み合わせて、ローコストで作り上げています。「出来ない」と決めつけず、知恵を絞って対応しています。
さらに、過剰な機能は排除して、本当に必要な機能を満たした設備やシステムを作って競争優位性を確保していることも注目されます。そしてそれをコンサルティングサービスまで付加価値を高めていることも驚きです。こうした努力を通じて、製造現場のビッグデータ解析を引っ張っていくと期待されます。
さらに、コストカットだけでなく、CO2も削減しているとのこと。生産現場のカイゼンとSDGsを掛け算していくというのは、SDGsの進め方が分からないと悩んでいる企業にとって参考になるのではないでしょうか。自分たちでできることを積み上げていったら、業務効率向上、利益の増額、そしてSDGsの達成になっており、一石二鳥どころか、一石三鳥となっているところも素晴らしいと思います。
廃棄物を減らせば、コストが削減し、利益が増えます。そしてそれは地球環境にも良いことです。それが分かっていても、なかなか普通の人は動き出せません。しかしこの会社は行動に移しました。
特に自動化を組み合わせることで、極力省力化して進めているところが注目されます。この会社が開発した「ごみの体重計」を導入した会社では、ショッピングモールでは廃棄物の削減、リサイクル率の向上、店内美化につながったほか、ゴミの回収業者では営業効率改善にまでつながっているとのことです。
このように、今や素晴らしい成果を幅広い業種に対してもたらしていますが、以前はなかなか時代が追いつかず、周りからも理解されないため、開発中はとても辛い思いもしたようです。さて、時代を先取りしすぎて失敗してきたビジネスはたくさんありますが、その理由の一つに時代が追いつくまで我慢できなかったことがあります。時代が追いつくまで、耐えに耐え、さらにそのまま放置するのではなくバージョンアップも進めることで、競争相手がまねできないものにするといった努力と根気に頭が下がります。
根気と熱意といったハートと、自動化やクラウド化といった頭脳が合わさった本当に素晴らしい事例です。これからも何歩も時代の先を行く商品開発を期待します。
SDGsは持続可能な成長を目指すものであり、目標の中身をつぶさにみると、国や世界全体の経済成長を目指す部分は多くあります。一方で、意外と地域の産業・文化を維持するというのはあまり聞かれません。SDGsのその先を考えるBeyond SDGsにおいては、地域の地場産業の維持と発展というのも入れていく必要があるでしょう。
その意味でこの記事はとても注目されます。自社の成長に加えて、コロナ禍で見えてきた小豆島の未来や課題にも対応しようとしているところは本当に素晴らしい。これまでのそうめん事業者だけでなく、醤油、佃煮、オリーブ事業者と広げていくことで、小豆島の製造業の発展を支えるメカニックとなっているところもこの会社の強みです。
また、地元のお客様への設備投資の提案について、これまでの量産・品質向上だけでなく、労働環境や地域密着という視点を加えようとしていることも参考になります。こうした会社があれば、小豆島が食品工業の最先端地域となることも夢ではありません。多くの中小企業では自社だけでなく、地元の産業発展にも関わっている方は多いと思います。そうした方の参考になる記事です。
今回の記事はSDGsの優良事例がみられるのがとても印象的でした。SDGsは理念としては誰もが賛同しますが、実践するとなると、具体的な方法はなかなか見つからず、また方向性が見えたとしては、実現するのは困難で、様々工夫が必要となることが多いと思います。今回紹介された記事では、根気と熱意だけでなく、周りの人々の知恵なども借りながら、クリエイティブに進めている事例が多くありました。戦略性が高く、創意工夫が上手い企業が存在し、その層が厚いことが日本の強みと実感しました。
また、SDGsについては、環境問題や貧困問題といった物質面に目を向けており、歴史や文化、地域や高齢化社会が抱える課題には対応していないという意見もあり、SDGsの次の目標にはその観点を加えるべきとの意見が強くなっています。今回の記事では文化や高齢化や少子化が進む地域での企業発展に着目した話もあり、SDGsのその先まで見えてきたのは、とても収穫でもありました。
今回の記事では、SDGsとSDGsのその先であるBeyond SDGsを先導する日本企業の姿が見えてきました。2025年の大阪・関西万博でもこれらがキーワードになりますが、ツギノジダイに掲載された企業から、万博を登竜門として、世界に羽ばたく企業が出てくることを期待しています。
(続きは会員登録で読めます)
ツギノジダイに会員登録をすると、記事全文をお読みいただけます。
おすすめ記事をまとめたメールマガジンも受信できます。
毎月20本近く掲載している経営者インタビュー。その中から、Yahoo!ニュースの公式コメンテーターとしても知られる日本総研の石川智久・上席主任研究員が選んだ注目記事を、解説とともに月1回お届けします。
おすすめのニュース、取材余話、イベントの優先案内など「ツギノジダイ」を一層お楽しみいただける情報を定期的に配信しています。メルマガを購読したい方は、会員登録をお願いいたします。
朝日インタラクティブが運営する「ツギノジダイ」は、中小企業の経営者や後継者、後を継ごうか迷っている人たちに寄り添うメディアです。さまざまな事業承継の選択肢や必要な基礎知識を紹介します。
さらに会社を継いだ経営者のインタビューや売り上げアップ、経営改革に役立つ事例など、次の時代を勝ち抜くヒントをお届けします。企業が今ある理由は、顧客に選ばれて続けてきたからです。刻々と変化する経営環境に柔軟に対応し、それぞれの強みを生かせば、さらに成長できます。
ツギノジダイは後継者不足という社会課題の解決に向けて、みなさまと一緒に考えていきます。