製造業で新規事業を生み出すには?丸山製麺とムソー工業の心構え
ツギノジダイが2023年7月19日~21日に開催したオンラインイベント「日本を変える中小企業リーダーズサミット2023」(中サミ、共催・Eight)には、中小企業のリーダー層をはじめ約8千人が参加登録しました。全38講演のなかから、「ものづくりの未来を切り開く」をテーマにした、丸山製麺(東京都大田区)の取締役・丸山晃司さんと、ムソー工業(同)の代表取締役・尾針徹治さんのトークセッションの模様を振り返ります。(構成・高橋尚之)
ツギノジダイが2023年7月19日~21日に開催したオンラインイベント「日本を変える中小企業リーダーズサミット2023」(中サミ、共催・Eight)には、中小企業のリーダー層をはじめ約8千人が参加登録しました。全38講演のなかから、「ものづくりの未来を切り開く」をテーマにした、丸山製麺(東京都大田区)の取締役・丸山晃司さんと、ムソー工業(同)の代表取締役・尾針徹治さんのトークセッションの模様を振り返ります。(構成・高橋尚之)
丸山製麺は1958年、業務用の製麺卸業として創業。そばやうどん・中華麺などを作り、首都圏を中心とした飲食店などに卸しています。3代目の丸山さんはサイバーエージェントのグループ会社を経て、家業に入りました。
しかし新型コロナウイルスの流行で、卸先の飲食店の休業や営業時間短縮が相次ぎ、一時期は売り上げが8割も減りました。
「ほとんど工場も動いてなくて、半年このままだとつぶれるなと思いました。これしか生き残れる方法がないなと思って、新規事業を始めたんです。通販や直売所など試行錯誤をしたのち、2021年3月に始めたのが、冷凍ラーメンの自動販売機『ヌードルツアーズ』です」
ヌードルツアーズでは、麺は丸山製麺の自家製のものを、スープや具材はラーメン店のものを使うことで、店舗で食べる味を再現。全国200台以上に広がっています。
「当時、コロナ禍の営業時間短縮などでラーメン屋さんがめちゃめちゃ困っていました。ラーメン屋さんが廃業しちゃうと、連鎖的に製麺所も廃業になる可能性がある。そこで、ヌードルツアーズではラーメン屋さんからスープを買い取る形にしました。店舗での売り上げが下がっても、スープの売り上げが出ることで元気になってもらえれば、と思ったんです」
逆境の中、丸山さんが新規事業に踏み出せた背景には、どんな心構えがあったのでしょうか。
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「前職(サイバーエージェントグループ)の影響は大きいと思います。新規事業をやることが特殊じゃなかった。またIT業界は事業の移り変わり、流行り廃りが早かった。そこで新規事業開発の環境に8年いたので、事業には成長期も衰退期もあると理解していました。だから家業に戻った時も、BtoBの卸業を65年やり続けているのはすごいけど、絶対衰退期は来ると思ったんです。コロナ禍の前から、新規事業やってこうということはずっと決めていました」
ムソー工業は、大手企業や大学が実験で使う「試験片」を製造する町工場です。たとえば棒状の鉄の試験片に様々な形で力をかけ、どんな条件で、どのくらいの力で壊れるかを調べることに使われます。
3代目の尾針さんは、KDDIの子会社での勤務などを経て家業に入りました。特定の顧客に依存することを懸念した尾針さんは、試験片の製造だけでなく、試験用治具や、試験装置の設計・開発にも事業を拡大していきました。
「それまでは、お客さんから図面をもらってやる仕事が基本でした。だけど打ち合わせに行くと、実はこんなこともやってるけどまだ図面がないと言われる。ならこの図面書いてあげれば仕事になるかなと、独学で勉強を始めていきました。やがてお客さんから相談事が増えていって、自分もレベルアップしていきました」
尾針さんは、大田区の町工場の技術を結集した「下町ボブスレー」プロジェクトにも参加。ボブスレーのそりの刃の削りだしなどを担当しています。
「研究用の未知の素材も削れるのがうちの強みです。スイスから輸入した、日本にない材料で刃を作ることに挑戦しました。これからも挑戦によって、自社の可能性を見出していきたいです」
尾針さんは新たな挑戦のために、どんな心がけをしているのでしょうか。
「普段から打席に立たないと、いざというときバットをふれません。なので、挑戦を日常にしていくくらいのことが必要だと思っています。確かに事業が安定しているときは、挑戦がしにくくなる。でも、安定しているから新しいことに挑戦しなくていいじゃんとなってしまうと、コロナ禍などで売り上げが下がったとき、手も足も出なくなってしまうかなと。僕自身、侍スピリッツじゃないですけど、最悪のことを考えながら生きることで、普段からバットをふれるようになるんじゃないかなと思っています」
質疑応答では、会社で新しい挑戦をする際に従業員をどう巻き込んでいくか、という質問も出ました。
尾針さんは「従業員にあれやってほしい、これやってほしいという僕の思いだけでなくて、従業員にもそれぞれの価値観があって、生まれ育った背景によってまったく違う価値観を持っていることを考えないといけない。『会社を自分ごとにしてほしい』ではなくて、ぼくらも彼らの自分ごとになっていかないといけない」とコミュニケーションの重要性を指摘しました。
丸山さんは「新規事業で失敗するのは、責任者が『こういうのやってみてよ』とふっておいて、自分がなんにもしないパターン。新規事業を生み出すにはやっぱり情熱が必要で、経営者はそれを自分ごと化できるポジションにいる。経営者がしっかりやらないと、ぜったいうまくいかないので、自分自身が一番働いて、正義心をもってちゃんとしたことをちゃんとやる、っていうことはすごく意識しています」と答えました。
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