2018年に、「健康にたずさわる企業として、我々がまず健康にならなければいけないのではないか」という思いから、健康経営をスタート。2019年から5年連続で健康経営優良法人に認定されています。
具体的には、スポーツを軸とした健康経営をすすめています。ウォーキングシューズの購入費や、マラソン大会の参加費を会社から補助。またウォーキングでの歩数をポイントとして計上し、自社製品をポイントで買えるようにしました。歩数に応じて5千ポイントがたまれば、5千円引きで自社製品が買えるといった仕組みで、従業員からも好評だそうです。
「約350人の全社員を、3回にわけて本社に呼んで、直接話をしました。また、僕自身が全拠点をまわりました。話をしたあとは、野菜中心の健康的な料理を出す店に行ったりもしました。そうした取り組みで、少しずつ健康経営への参加者が増えていきました」
社内用チャットツールの活用も効果があったと言います。
「健康経営のことをつぶやく掲示板を作って、こういうサポート制度を使ったとか、営業所全員でリレー大会に参加したとか、それぞれの取り組みをどんどん写真つきで投稿してもらいました。おかげで、『みんなやってるんだ』っていう空気感を作っていくことができました」
健康診断の後をしっかりフォロー
日東物流は従業員数約120人、温度管理が必要な食品の配送事業を主にてがける運送会社です。配送を担うトラックドライバーは深夜帯の仕事も多いことから、不規則な生活習慣になりやすく、また温度変化の激しい場所での作業も多いため、「健康との相性がものすごく悪い」と菅原さんは話します。
そうした中で、主に二つのアクションをとりました。一つは「できる範囲で義務より少し上のアクション」です。
「義務として、法律で定められた定期健康診断がありますが、健康診断を受けただけで従業員が健康になるかというとそんなことはありません。弊社では、診断の結果で何かしらの所見が出た人、体にトラブルがあった人とは、会社の担当者が必ず面談するようになっています」
面談のうえで再検査に行ってもらったり、薬での治療が必要になったらその種類を会社側にフィードバックしてもらったりと、会社の担当者が一緒になって改善のアクションにつなげるようにしているのだそうです。またSAS(睡眠時無呼吸症候群)の治療など、症状によっては治療費を上限付きで会社が負担するなどし、治療をしやすい環境を整えています。
もう一つが、「自分の健康に関心を持たせるアクション」です。
たとえば管理栄養士との面談を設け、より専門的な立場から生活習慣や食生活のアドバイスをもらえるようにしています。また社員の70%が喫煙者という中で、禁煙キャンペーンを実施。禁煙をすることで報奨金がもらえる仕組みを導入したところ、喫煙者の割合は30%台にまで下がったそうです。
健康経営は未来への投資
菅原さんは健康経営を進める理由について、「健康は未来への投資という風に考えているから」と話します。
物流業界は、「2024年問題」と呼ばれる課題に直面しています。2024年4月から、働き方改革関連法によって、ドライバーの時間外労働に上限規制が適用されることで、ドライバーの労働時間は短くなります。この労働時間の短縮によって給料が減ることで、退職するドライバーが増えることも予想され、ドライバー減少による輸送力の不足によって、これまで運べていた荷物が運べなくなると懸念されています。
「これを改善するためには、ドライバーさんたちの待遇をあげていくというのが一番大事かもしれないですが、なかなかすぐには難しい。であれば、いま働いている従業員の健康寿命をのばして、働ける期間をのばしていくことも大事なんじゃないかと思います」
日東物流では健康経営の活動を通じて、病気が早期発見しやすくなり、早期治療のために、休職しても比較的早い復職につながる例も多くあるそうです。
「労働力不足で新しい人をいれるのも大事だけど、いま働いてくれている従業員の健康を維持することで、病気に起因する退職者をおさえていく。これが、労働力を維持していくことにつながると思っています」
大事なのはきっかけづくり
質疑応答では、「健康経営で、従業員のモチベーションが特にあがった取り組みは?」といった質問が寄せられました。
倉橋さんは「各地に点在している営業所などの拠点に、『健康経営アンバサダー』という担当者を置いたこと」と回答。「本社と各営業所のパイプ役を作ったことで、各営業所の要望もわかり、取り組みへの理解をもらうことができた」と話しました。
また、「報奨金など金銭がからむ施策だと、持続性がないのでは?」という質問も。これに対し菅原さんは「金銭はあくまできっかけづくり。報償ありの禁煙キャンペーンがなくなったからといって、持続性がなくなるとは思いません。健康に対する意識が定着してきているので大丈夫です」と答えました。
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