目次

  1. 倒産危機の家業を立て直した3代目
  2. 元アスリートがアクセサリー制作
  3. 特許技術をヒット商品に
  4. 家業を外から支える姉妹
  5. バラバラの会社を立て直した改革
  6. 山あいの醤油店を支える3姉妹
  7. 京扇子の弱点を新商品でカバー

 福島県天栄村のアルファ電子は、電子機器や医療機器の組み立て・製造を行う会社です。3代目の樽川千香子さんは、震災、離婚、シングルマザーの経験を経て社長に就任しました。倒産危機にあった会社を立て直し、持続可能な形を目指して異業種に参入。米粉を使った「う米(まい)めん」を開発し、着実に売り上げを伸ばしています。

インタビューに応じる樽川千香子さん

 名古屋市中区の有限会社ノヨリは、仏壇や寺社の装飾に使われる錺金具(かざりかなぐ)を手作業で作る会社です。参拝客の減少など、寺社を取りまく変化に危機感を持ったという3代目の野依祐月(のより・ゆづき)さんは、アパレル会社勤務などを経て家業に戻りました。父の克彦さんが立ち上げたアクセサリーブランド『和悠庵 -wayuan -』のデザインや販売方法をアップデートし、若い世代への売り上げを伸ばしています。

ノヨリ3代目で錺金具師の野依祐月(のより・ゆづき)さん(写真はすべて同社提供)

 埼玉県越谷市の中島プレス工業は、やわらかな素材の型抜き加工技術を強みとする町工場です。2代目の小松崎いずみさんは、35歳で社長に就任した後、事務所の焼失やリーマン・ショックなどの危機に直面します。それでも素材加工の技術力を生かした自社商品開発に乗り出し、形状記憶不織布で折られ、折り目を解いてもすぐに元通りになる「おくり鳩」を開発。その技術で特許を取得し、年間5万羽以上を出荷するまでに成長させました。

布生地の形状記憶技術で家業を成長させた中島プレス工業2代目の小松崎いずみさん(右)と息子の晃さん

 1895年創業の小倉織物株式会社(石川県小松市)は、絹織物の中でも特に繊細で、高度な技術を必要とする後染め洋装のシルクジャカードを織ることができる、日本でほぼ最後の会社です。売上減少・職人の高齢化・後継者不足・繊維業界の衰退・工場の老朽化など、問題は山積みのなか、社長である父を助けようと姉妹が立ち上がります。県外在住、家業にガッツリ入っていなくても、家業のピンチを救うことはできると、断言する2人。クラウドファンディングやSNS戦略などで、知名度と売上アップに奮闘しています。

小倉織物の小倉久英社長(中央)と娘の理枝さん(左)と有紀さん。

 神奈川県小田原市にある創業65年の老舗物流会社「まるだい運輸倉庫」は、2014年ごろに多額の負債を抱え、深刻な経営難に陥りました。当時、社内の内部分裂により社員の心はバラバラの状態でした。4代目社長・秋元美里さんは、「自分の家族が入社したいと思える会社にしたい。そのために力を貸してほしい」と繰り返し伝え続け、一体感とワクワク感を生み出す改革により、倒産危機だった家業を立て直しました。

神奈川県小田原市にある創業65年の老舗物流会社「まるだい運輸倉庫」4代目社長・秋元美里さん(写真中央)。女性の積極採用に取り組んでおり、社員260人のうち66人が女性。同時に男性にも働きやすい職場づくりも目指しており、男性の育児休業の取得実績がある(写真はいずれもまるだい運輸倉庫提供)

 三重県伊賀市の山里にある福岡醤油店は128年に渡り、こだわりの製法でしょうゆを造り続け、海外進出も果たしています。4代目社長の川向美香さんを支えるのは、佐和さん、伶実さん、志季さんの娘3人です。シンガポールを拠点とした海外展開のほか、製造、営業などそれぞれの得意分野を生かしながら、事業成長を加速させています。

福岡醤油店の次代を担う3姉妹。左から三女・川向志季さん、長女・佐和さん、次女・伶実さん

 京都市下京区で、大正2年から扇子の製造卸業を行う大西常(おおにしつね)商店。大企業から家業に戻った4代目の大西里枝さんは、季節商売のビジネスモデルに危機感を覚えます。試行錯誤のすえ、扇子の骨を利用したルームフレグランスを開発し、第二の柱に育て上げました。

扇子の骨でできた「ルームフレグランスかざ」を手にする大西里枝さん