目次

  1. はじめに
  2. 商標登録の拒絶理由通知とは
  3. 拒絶理由通知が届いた和菓子メーカー
  4. 拒絶理由通知への対応策
  5. ケース別の対応方法を解説
    1. 他人の登録商標と類似と判断された場合
    2. 商品の産地・販売地・品質等を示す商標と判断された場合
  6. 査定不服審判で覆せる場合も
  7. 和菓子メーカーはどう対応するべきだった?

 前回は商標登録出願の具体的な手順を説明しました。今回は出願後の流れと「拒絶理由通知」が届いた際の対応方法について説明します(※本稿では弁理士に依頼して出願手続きを行うことを前提としています)。

 まずは、筆者の業務で実際にあったシーンを紹介します。半年前に出願した商標出願について、特許庁の審査官から拒絶理由通知が届いたのです。まずはクライアントに状況報告をしなければいけません。

「〇〇社長、先日出願した商標について拒絶理由通知が届きました」

「ええっ!拒絶ですか。じゃあ、お金を払ったのに登録されないということですか!」

「社長、落ち着いて下さい。これからの対応について説明しますので…」

 こうした事態を想定していた筆者が、今後の対応について説明すると、社長は落ち着きを取り戻してくれました。ここで問題になった拒絶理由通知とはどのようなものか、次章で説明します。

 商標登録の出願後、特許庁の審査官が書類の不備などを確認する「方式審査」と商標の登録要件を見る「実体審査」を行います。審査の結果、登録要件が満たされていれば「登録査定」となり、登録料の納付後に商標が登録されます(第3回参照)。一方、審査官が登録できない理由があると判断した場合、いきなり「拒絶査定」をして審査を終えるのではなく、出願人に理由を告げ、対応するための猶予期間を通知します。これを、拒絶理由通知と呼びます。

商標登録出願の流れ(特許庁「2022年度知的財産権制度入門テキスト」第4節・商標制度の概要から引用)

 拒絶理由通知には、出願した商標について登録できない理由とその根拠となる法律の条文、応答すべき期限が書かれています(参考:特許庁「通知書の見方」)。「拒絶」という表現に面食らう経営者も多いですが、これは「拒絶理由」を通知し、出願者に応答の機会を与える趣旨で、この段階で商標登録ができないと確定するわけではありません。その後の対応を検討することが大切なのです。

 本章では、拒絶理由通知への理解が不足していたために、不利益を被った和菓子メーカーのA社長の実例を紹介します(※個人情報の特定を防ぐため、一部の内容は加工・修正しています)。

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