目次

  1. 伝統的酒造りとは 日本の伝統的なこうじ菌を使った酒造り技術
  2. ユネスコ無形文化遺産への提案内容
  3. ユネスコの評価機関で登録が適当と勧告
  4. ユネスコ無形文化遺産の最終決定はいつ?
  5. ユネスコ無形文化遺産に国内から登録された22件の一覧表

 文化庁のパンフレット(PDF)によると、伝統的酒造りは古くから日本に根差してきた食文化のひとつで、儀礼や祭礼行事など、日本の社会習慣·文化行事等の中で不可欠な役割を果たしています。

 原型が確立したのは500年以上前。こうじの使用という共通の特色を持ちながら、日本各地においてそれぞれの気候風土に応じて発展し、日本酒、焼酎、泡盛、みりんなどの製造に受け継がれてきました。

 日本は2021年12月に登録無形文化財として登録しました。登録要件は以下の3つです。

  • 米などの原料を蒸すこと
  • 手作業で伝統的なこうじ菌を用いてバラこうじを製造すること
  • 並行複発酵を行っており、水以外の物品を添加しないこと

 ユネスコ無形文化遺産への登録を提案するうえでの提案要旨は以下の通りです。

500年以上前に原型が確立し、発展しながら受け継がれている日本の伝統的酒造り(日本酒、焼酎、泡盛など)は、米・麦などの穀物を原料とするバラこうじの使用という共通の特色をもちながら、日本各地においてそれぞれの気候風土に応じて発展し、受け継がれてきた。技術の担い手の杜氏・蔵人たちは、伝統的に培われてきた手作業を、五感も用いた判断に基づきながら駆使することで、多様な酒質を作り出している。
伝統的酒造りは、米や清廉な水を多く用い、自然や気候に関する知識や経験とも深く結びついて今日まで伝承されている。また、こうした伝統的な技術から派生して様々な手法で製造される酒は、儀式や祭礼行事など、幅広い日本の文化の中で不可欠な役割を果たしており、その根底を支える技術と言える。
このような酒を造るプロセスは、杜氏・蔵人たちのみならず広く地域社会や関連する産業に携わる人々により支えられており、この技術のユネスコ無形文化遺産代表一覧表への登録は、酒造りを通じた多層的なコミュニティ内の絆(きずな)の認知を高めるとともに、世界各地の酒造りに関する技術との交流、対話を促進する契機ともなることが期待され、無形文化遺産の保護・伝承の事例として、国際社会における無形文化遺産の保護の取組に大きく貢献する。

「伝統的酒造り」提案概要(文化庁の公式サイトから)

 日本は2022年、伝統的酒造りについて提案しましたが、審査件数の上限を超える提案があったためこの年は審査されず、2023年に再提案したところ、無形文化遺産保護条約政府間委員会の評価機関より、評価機関による勧告の3区分のうち、「登録」の勧告があり、ユネスコ無形文化遺産公式サイトで公表されました。

 文化庁の公式サイトによると、評価機関は、各地域から選出された専門家6人とNGO6団体で構成されています。登録について事前審査し、政府間委員会に勧告を行う役割があります。

 ユネスコの公式サイトによると、勧告を受け、2024年12月2~7日、アスンシオン(パラグアイ)で開催される第19回政府間委員会で、伝統的酒造りの登録が決定しました。

 これまでユネスコ無形文化遺産に国内から登録された22件は以下の通りです。

能楽 2008年
人形浄瑠璃文楽 2008年
歌舞伎(伝統的な演技演出様式によって上演される歌舞伎) 2008年
雅楽 2009年
小千谷縮・越後上布 2009年
奥能登のあえのこと 2009年
早池峰神楽 2009年
秋保の田植踊 2009年
大日堂舞楽 2009年
題目立 2009年
アイヌ古式舞踊 2009年
組踊 2010年
結城紬 2010年
壬生の花田植 2011年
佐陀神能 2011年
那智の田楽 2012年
和食;日本人の伝統的な食文化 2013年
和紙:日本の手漉和紙技術 2014年
山・鉾・屋台行事 2016年
来訪神:仮面・仮装の神々 2018年
伝統建築工匠の技:木造建造物を受け継ぐための伝統技術 2020年
風流踊 2022年