目次

  1. 2024年度補正予算とは
  2. 持続的な賃上げ実現へ補助金で支援
    1. ものづくり補助金、IT導入補助金、持続化補助金を改善
    2. 新事業進出補助金を創設
    3. 中小企業成長加速化補助金を創設
    4. 中堅・中小成長投資補助金を拡充
    5. 100億企業育成ファンド出資事業
    6. 省力化投資支援の運用改善
  3. 資金繰り支援・事業再生などの支援
    1. 日本政策金融公庫による資金繰り支援
    2. 信用保証協会による資金繰り支援
    3. 経営改善・事業再生・再チャレンジ支援の拡充
  4. 中小企業・小規模事業者への相談体制強化
    1. 事業環境変化対応型支援事業
    2. 中小企業活性化・事業承継総合支援事業

 国や地方自治体は毎年、予算を組み、予算をもとに様々な政策に取り組んでいます。しかし、当初予算で対応できないときに新たにつくるのが、補正予算です。改めて国会で補正予算案を審議する必要があり、議決されると補正予算として成立します。

 2024年は、第216臨時国会が11月28日に召集されました。石破内閣の「国民の安心・安全と持続的な成長に向けた総合経済対策」の実現に向けた2024年度補正予算案が審議されます。

総額5600億円の中小企業・小規模事業者向け補正予算案
総額5600億円の中小企業・小規模事業者向け補正予算案

 このうち、中小企業に関連する予算案は5600億円に上ります。既存基金も活用すれば1兆円を超える規模となります。中小企業関連では、中小企業成長加速化補助金や新事業進出補助金があらたに創設されるほか、既存の補助金でも、拡充されるものがあります。注目度の高い補助金や支援策について整理しました。

 物価高や人手不足などに直面する中小企業・小規模事業者の“稼ぐ力”を強化するため、賃上げ原資を確保し、持続的な賃上げにつなげることを目的とした補助金が2025年も実施見込みです。

 ものづくり補助金、IT導入補助金、持続化補助金、事業承継・M&A補助金は、中小企業・小規模事業者の設備投資、販路開拓、IT導入、事業承継等を支援する目的で、予算規模は生産性革命推進事業3400億円の一部となる見込みです。

 2025年からの変更点として、たとえば最低賃金付近で雇用している事業者に対する支援として、ものづくり補助金やIT導入補助金の補助率を1/2から2/3に引き上げる予定です。

 また使い勝手を改善するため、設備投資や取引実態等に合わせ、補助上限・枠・要件を見直します。

  • ものづくり補助金…製品・サービス高付加価値化枠について、従業員区分を見直し、21人以上の中小企業を対象に、補助上限を引き上げ。また、賃上げ動向を踏まえ、賃上げ要件、運用等を見直しなど
  • IT導入補助金…セキュリティ枠の補助上限引上げ・要件見直し、汎用ツール・導入後支援の補助対象化など
  • 小規模事業者持続化補助金…経営計画の策定に重点化し、枠の整理等、制度を簡素化(通常枠、創業枠等に再編等)
  • 事業承継・M&A補助金…PMIを後押しするためのPMI推進枠の創設や、早期承継促進のための枠再編(事業承継促進枠への改変等)。M&Aのトラブル防止に資するDD費用の支援拡充や100億企業創出加速化を図るための補助上限の引き上げ

 さらに、中小企業・小規模事業者の成長につながる新事業進出・事業転換を重点的に支援するための新たな支援措置を創設する予定です。事業再構築補助金など既存基金を活用し1500億円規模となる見込みです。

 要件として、企業の成長・拡大に向けた新規事業への挑戦(新規性)や賃金要件を設け、建物費・機械装置費・システム構築費・技術導入費・専門家経費などを対象経費とする予定です。

 政府は、改正産業競争力強化法で中堅企業を新たに定義し、成長意欲のある中堅企業に対する成長支援を強化しています。域内経済牽引や外需拡大に貢献し、賃上げを可能にする持続的な利益を生み出す目安の一つを売上高100億円超と定義。

 政府はこうした100億企業への成長を志向する中小企業へのリスクマネーの供給等を通じて、100億企業の創出を促進することを計画しています。そこで、売上高100億円を目指す中小企業等への設備投資や中小機構による多様な経営課題(M&A・海外展開・人材育成等)への支援などを予定しています。

 生産性革命推進事業の3400億円の一部を活用する予定です。

 要件として、売上100億円を目指すビジョン・潜在力、賃金要件などを設けます。補助対象経費は建物費・機械装置費・ソフトウェア費・外注費・専門家経費などが含まれます。

 中堅・中小成長投資補助金とは、中堅・中小企業が、持続的な賃上げを目的に、省力化などによる労働生産性の抜本的な向上と事業規模の拡大を図るための補助金です。

中堅・中小成長投資補助金の概要
中堅・中小成長投資補助金の概要(経済産業省の公式サイトから https://www.meti.go.jp/main/yosan/yosan_fy2024/hosei/index.html)

 地方でも持続的な賃上げを実現するため、地域の雇用を支える中堅・中小企業が、足元の人手不足等の課題に対応するために行う工場等の拠点の新設等の大規模投資を実施することを支援します。

 さらに、大企業から経営人材を受け入れる中堅・中小企業に対する給付金を拡充し、着実な事業成長ができる経営体制の整備を促します。予算規模は1400億円、国庫債務負担行為を含め3000億円規模となる見込みです。

 中小機構出資ファンドを通じ、売上高100億円超を目指す中小企業等へリスクマネー供給を実施します。予算規模は30億円となります。

100億企業育成ファンド出資事業の概要
100億企業育成ファンド出資事業の概要

 中小企業省力化投資補助金とは中小企業等の売上拡大や生産性向上を後押しするため、人手不足に悩む中小企業等がIoT・ロボット等の人手不足解消に効果がある汎用製品を導入するための事業費等の経費の一部を補助することにより、省力化投資を促し、賃上げを図る補助金です。

 2025年は、オーダーメイド形式も幅広く対象となる省力化投資支援の新設、カタログ形式の省力化投資支援の運用改善など、全方位型の省力化投資支援へ再編を予定しています。

 事業は既存基金を活用し3000億円規模となる見込みです。

 資金繰り支援・事業再生などの支援は、大きく分けて3つの事業があります。

 日本政策金融公庫等の通常資本性劣後ローンの要件を見直し、成長志向の中小企業を後押し(省力化投資に取り組む事業者を対象に追加し、金利水準の引き下げ、貸付限度額の拡充も予定しています。

 さらに、下記の資金繰り支援を実施する予定です。

  • コロナ特別貸付を終了し、当該貸付の借換等への対応を目的とした制度(基準金利)を創設
  • 物価高騰の影響を受けた事業者へのセーフティネット貸付の金利引下げ措置(▲0.4%)を継続
  • 賃上げに取り組む場合の金利低減措置(賃上げ貸付利率特例制度)を継続
  • 令和6年能登半島地震特別貸付等、能登半島への資金繰り支援の継続など

 民間金融機関のプロパー融資と組み合わせた協調支援型の信用保証制度を創設し、3年間に限り保証料補助を実施します。制度創設1年目に利用した場合は1/2、制度創設2年目は1/3、制度創設3年目は1/4等となる見込みです。

 物価高等の影響を受ける事業者への経営改善・再生支援を強化するための経営改善サポート保証を継続します。

 早期経営改善計画策定支援事業を通じた金融機関による経営改善支援を拡充します。また、法人破産及び経営者保証ガイドライン手続に係る各種手続費用・専門家費用等中小企業活性化協議会を通じた再チャレンジ支援を拡充します。

 中小企業・小規模事業者への相談体制も強化します。おもに2つの事業があり、合わせて203億円規模となる見込みです。

 商工会・商工会議所等への専門家の派遣等、よろず支援拠点へのコーディネーター増員等による相談体制を強化します。さらに、インボイスの課題解決に向け相談受付窓口を設置します。

 事業再生等計画策定支援、事業承継・事業引継ぎ支援のため、中小企業活性化協議会、事業承継・引継ぎ支援センターの体制を拡充します。