目次

  1. 第217通常国会で成立した法律
  2. 中小企業経営への影響が期待される法律案
    1. 改正下請法、2026年1月施行へ 手形払いを禁止
    2. 改正労働安全衛生法、ストレスチェック義務化拡大
    3. 改正労働施策総合推進法、カスハラ対策も整備
    4. 年金制度改正法、106万円の壁撤廃・遺族年金の見直しなど
    5. 改正公益通報者保護法、公益通報が理由の解雇に罰則
    6. 早期事業再生法案

 2025年1月24日に召集された第217回通常国会は6月22日に閉会しました。参議院の議案情報や、衆議院の議員の一覧によると、政府提出法案は59本のうち58本が成立し、議員提出法案は17本が成立しました。修正された政府提出法案は12本で、約2割に上ります。

 中小企業の経営安定化や労働環境の改善に関わってくる法律も成立しています。

 下請法(下請代金支払遅延等防止法)と下請振興法(下請中小企業振興法)の改正法が5月16日、参議院本会議で可決・成立しました。改正下請法は2026年1月1日に施行します。

 サプライチェーン全体で適切な価格転嫁を定着させるようと、協議を適切に行わない代金額の決定の禁止、手形による代金の支払等の禁止などを盛り込んでいます。

 改正労働安全衛生法が2025年5月8日の衆院本会議で可決・成立しました。フリーランスへの労災防止やこれまで努力義務だった従業員50人未満の事業場へのストレスチェックを義務化するなど5つのポイントがあります。改正法の主な部分は2026年4月からの施行となります。簡単に整理しました。

 カスタマーハラスメントを防止するため、事業主に雇用管理上必要な措置を義務付ける改正労働施策総合推進法(カスハラ対策法)が2025年6月4日、参議院本会議で可決・成立しました。カスハラ対策法は、公布日から起算して1年6ヵ月以内の政令で定める日に施行されるため、早ければ2026年も施行される見通しです。

 社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化を図るための国民年金法等の一部を改正する等の法律が2025年6月13日の参院本会議で可決・成立し、6月20日に公布されました。今回の改正は、多様化する働き方や生き方、家族構成に対応し、現在および将来の年金受給者双方の老後の生活安定と所得保障機能の強化を目指すものです。

 公益通報者保護法の一部を改正する法律が参議院で可決・成立し、2025年6月11日に公布されました。この改正法は、2026年内にも施行される見通しです。公益通報を理由に解雇・懲戒をした者に罰則を設けるなど4つのポイントがあります。

 早期事業再生法案、正式名称を「円滑な事業再生を図るための事業者の金融機関等に対する債務の調整の手続等に関する法律」といいます。

 経済的に窮境に陥るおそれのある事業者の早期での事業再生の円滑化を図るため、経済産業大臣の指定を受けた公正な第三者の関与の下で、金融機関等である債権者の多数決(議決権の総額の3/4以上の同意等)及び裁判所の認可により、金融債務に限定して、当該事業者の債務の権利関係の調整を行うことができる手続きを整備したものです。

 コロナ禍をきっかけに、企業の債務残高が積みあがるなか、今後の円安・物価高、人手不足、金融政策の見直しによる借入金利の引上げ等を踏まえると、債務負担が収益性向上の事業活動の足かせとなって事業再生の機会を逃し、倒産に至る企業が更に増加するおそれがあります。

 こうしたなか、経済的に窮境に陥るおそれがある事業者が早期での事業再生に取り組み、事業価値の毀損や技術・人材の散逸を回避できる制度基盤を整備し、経済の新陳代謝機能を強化しておくことが重要だとして法整備されました。