目次

  1. 女性社長の調査概要
    1. 地区別では九州がトップ
    2. 産業別ではサービス業がトップ
  2. 女性社長の事例
    1. いかめし阿部商店
    2. 松井機業
    3. リキフーヅ
    4. 山本製作所
    5. ススキ電機
    6. アイ・コーポレーション
  3. 女性社長が直面する夫婦同姓の負担

 東京商工リサーチは自社で保有する約400万社(個人企業を含む)の経営者情報から、女性社長を抽出、分析しました。調査は2021年から始まり、今回が10回目です。

 その結果、2021年調査で、女性社長は54万919人となり、調査開始以来、初めて50万人を超えました。前回の2019年調査では47万8619人でした。全企業に占める女性社長の割合は2021年に14.2%(前回13.6%)となり、こちらも伸びています。

 地区別の「女性社長率」は、都道府県別で5位以内に沖縄、福岡、大分の3県がランクインした九州が15.1%でトップとなりました。

 次いで、2位が近畿で15.1%、3位が関東で14.9%でした。この上位3地区が全国平均の女性社長の比率である14.2%を上回りました。

地区 女性社長比率(%)
九州 15.2
近畿 15.1
関東 15.0
中国 13.6
四国 13.0
北海道 12.9
中部 12.6
東北 11.5
北陸 9.7

 都道府県別でみると、都道府県別で、全国平均を上回ったのは12都府県あり、最も女性比率が高いのは、沖縄県が20.4%でした。次いで、東京都16.5%、福岡県16.1%、大分県16.0%、大阪府15.9%、山梨県15.2%となっています。

 一方、女性社長のワースト1位は、新潟県で9.1%。次いで、山形県9.2%、福井県9.5%、富山県9.6%、石川県9.8%で、この5県が10%を割り込みました。

 産業別の「女性社長率」は、産業別の女性社長数は「サービス業ほか」が47.1%と最多で、過半数に迫っています。東京商工リサーチは「飲食業や医療・福祉事業、美容関連など小資本での起業が可能で、資格を活かせる業種が背景にあるとみられる」と分析しています。次に多かったのが、不動産業の24.13%でした。

 一方、建設業、農・林・漁・鉱業、運輸業、製造業で10%を割り込みました。

産業名 企業数 女性社長の比率(%)
農・林・漁・鉱業 51,234 7.92
建設業 604,819 5.31
製造業 356,655 9.82
卸売業 291,374 11.69
小売業 395,365 15.29
金融・保険業 65,595 12.64
不動産業 333,905 24.13
運輸業 84,467 8.97
情報通信業 188,571 12.71
サービス業ほか 1,423,950 17.90

 東京商工リサーチは「第1次産業や第2次産業への進出が広がっていない」とみています。

 ツギノジダイでも、インタビューで多くの女性経営者が登場しています。いくつか事例を紹介します。

 北海道の名物駅弁「いかめし」を製造している「いかめし阿部商店」は2020年、今井麻椰さん(30)が3代目社長に就任しました。バスケットボール・Bリーグの魅力を伝えるリポーターとの「二足のわらじ」を、いかめしのPRに生かしています。

いかめし阿部商店は1903(明治36)年創業。41(昭和16)年、イカの胴に米(うるち米ともち米の混合)をつめ、甘辛のタレで煮た「いかめし弁当」の販売を始めました。名物駅弁として百貨店の物産展などを中心に、3代目の今井麻椰さん(写真)らが全国の催事会場で実演販売を展開。2021年1月には、京王百貨店(東京)の駅弁大会で販売個数が50回連続1位となり、殿堂入りしました(写真はいずれも同社提供)

 富山県南砺市の松井機業は、希少な繭玉からとれる糸を使った「しけ絹」を織りつづけて140余年になります。証券会社から、経営が厳しかった家業に転身した6代目松井紀子さんが、しけ絹を使った新ブランドを立ち上げ、若い女性を中心に新たな販路を開拓。養蚕も始めて、家業の新たな未来を開こうとしています。

松井機業6代目の松井紀子さんは、新ブランドを立ち上げるなど、絹製品の開発に意欲的です

 東京都葛飾区の食肉卸「リキフーヅ」社長の榮野川さくら子さんは、コロナ下の2020年7月、兄から4代目を継承しました。コロナ禍の一斉休校で卸し先が急になくなるピンチを迎えるも工場直売を始め、地域で人気の店となりました。

 猫の姿をした抗菌マスク掛け「しっぽ貸し手」などヒット商品を生み出した愛知県豊川市の町工場「山本製作所」は、コロナ禍で立ち上げたBtoC商品の新規事業が売上の3分の1を占めるまでになりました。田中倫子社長は次々と新しい商品を生み出しています。

マスクを掛けられる「しっぽ貸し手」を考案した山本製作所社長の田中倫子さん(同社提供)

 福井市の電気工事業「ススキ電機」の3代目社長、鈴木未奈美さん(34)は2015年に、急逝した父の後を継ぎました。「カリスマ性があった」という父が大切にした経営理念を守りつつ、社員全体の働きやすさも追求。有給休暇を取得しやすくして、授乳室の充実や制服のリニューアルを行うなどして、「女性活躍推進企業」の認定も受けました。

「ススキ電機」の3代目社長・鈴木未奈美さんは、女性の就活生との面談も行っています

 明治35年創業の老舗靴下メーカーは中国との価格競争のなかで、工場閉鎖を決めました。それでも、4代目社長の西村京実さんは理想の靴下づくりをあきらめません。先代を説得し、販売子会社の「アイ・コーポレーション」で企画販売に特化した事業を再開。カシミア100%靴下など斬新な自社ブランドを立ち上げ、注目を集めています。

「アイ・コーポレーション」4代目社長の西村京実さん

 女性が経営者として社会進出する事例が増えるなか、選択的夫婦別姓が進まず、様々な負担を強いられています。日本跡取り娘共育協会が女性経営者191人にアンケートを実施したところ、118人が夫婦同姓に不便・不都合を感じたことがあると回答しました。

 具体的に不便を感じているのは次のような場面でした。

  • 「公的機関での手続きの煩雑さやコスト」(101人)
  • 「金融機関での手続きの煩雑さやコスト」(96人)
  • 「通称の旧姓と戸籍上の姓の二重使用で生じる社外での混乱」(61人)
  • 「旧姓時の活動(取材や公開文書など)と、新姓時の活動が分断される」(54人)
  • 「婚姻・離婚情報が明るみになる、またそれに伴うハラスメント」(49人)
  • 「通称の旧姓と戸籍上の姓の二重管理による生産性の低下(自社内)」(47人)