目次

  1. 日本酒の日とは
  2. 伝統を守り改革に取り組む酒蔵を紹介
    1. 「三諸杉」や「みむろ杉」を全国ブランドへ 今西酒造(奈良)
    2. 蔵の敷地に甘酒カフェをオープン「森民酒造本家」(宮城)
    3. 異業種コラボにも取り組む寒梅酒造(宮城)
    4. 大量生産時代の造りを一新した笹祝酒造(新潟)
    5. 日本酒離れに立ち向かうSHARPとコラボした石井酒造(埼玉県)
    6. 伊勢志摩サミットで乾杯酒に選ばれた大田酒造(三重県)
    7. 海外に向けてカーボンゼロの日本酒 神戸酒心館(兵庫)
    8. 「高砂」だけでなくレストラン運営もする金谷酒造店(石川県)
    9. 品評会からブランド向上 「陸奥八仙」の八戸酒造(青森)
    10. 「獺祭」に学んだ世界観でブランド確立 花の香酒造(熊本)
    11. 創業家9代目の熱意で復活した「敷嶋」(愛知)
  3. 「日本酒の日」にまつわる10月1日のイベント

 日本酒造組合中央会によると、制定の経緯を次のように説明しています。

10月は収穫された新米で酒蔵が酒づくりを始める季節です。
以前は、酒造年度が10月1日から翌年9月末までと定められていました。
また十二支の10番目に当たる10月は「酉」の月、日本では「トリ」と読まれますが、元来壷の形を表す象形文字で、酒を意味しています。
このようなことから、「日本の國酒である日本酒を後世に伝える」という思いを新たにするとともに、一層の愛情とご理解をという願いを込めて、1978年に中央会が「10月1日は日本酒の日」と定めました。

日本酒造組合中央会プレスリリース

 中小企業向けメディアのツギノジダイは、これまで全国各地の酒蔵の取り組みを紹介していきました。こうしたインタビューからは、少品種・大量生産からの切り替えや蔵の開放といったキーワードが見えてきます。

 今西酒造(奈良県桜井市)の14代目社長の今西将之さんは、父の急逝を機に28歳で家業を継ぎました。巨額の負債で廃業の危機にありましたが、廉価な普通酒の生産を縮小した一方で、高品質な純米酒の製造に注力。数年で「三諸杉(みむろすぎ)」や「みむろ杉」などの銘柄を全国ブランドに成長させました。

今西酒造は全国新酒鑑評会金賞の常連となりました

 宮城県仙台駅近くに、蔵の敷地内に甘酒カフェ「森民茶房」があります。運営するのは、170年以上にわたって日本酒製造を続ける「森民酒造本家」。6代目は、伝統を引き継ぎつつ、新たな日本酒ファンの獲得に挑んでいます。

 宮城県大崎市の寒梅酒造は東日本大震災で蔵が全壊しました。蔵元5代目は、震災を機に商品アイテムや取引先を大幅に絞り、蔵を開放して異業種コラボも進め、経営をがらりと変えました。

酒粕入りの生チョコ(同社提供)

 新潟市で120年以上続く笹祝酒造6代目は、大量生産時代の作り方を見直し、地元での消費がほとんどだった自社商品を広げようと、3千坪の敷地を生かし、酒蔵開放イベントに力を入れたり、地域の人材と手を組んで新商品を開発したりしています。

 埼玉県幸手市で180年以上続く石井酒造8代目は、20代の若者だけで醸造した「二才の醸」で話題を呼んだり、大手電機メーカーのシャープと零下で味わう酒を造ったりするなど、日本酒離れに立ち向かう挑戦を続けています。

シャープと開発した「冬単衣」

 三重県伊賀市の大田酒造は知る人ぞ知る地方の酒蔵でしたが、代表銘柄の「半蔵」が2016年の伊勢志摩サミットで乾杯酒に選ばれ、全国に名を広めました。7代目が新ブランドの立ち上げや製造工程の見直しなどを進め、家業の新たな成長の先頭に立っています。

サミットの乾杯酒になった「半蔵 純米大吟醸 磨き40」

 「神戸酒心館」は13代目に大代わりの安福武之助社長になった今、大きな転換期を迎えています。朝3時起き、杜氏頼みだった酒造りを変え、通年雇用の社員らの手で全国新酒鑑評会の金賞を受賞しました。さらに国内の需要が下がるなか、海外に向けてカーボンゼロの日本酒「福寿 純米酒エコゼロ」の発売を始めました。

世界初を掲げるカーボンゼロの日本酒「福寿 純米酒エコゼロ」を発表した安福武之助社長(右端)ら

 石川県白山市の株式会社金谷酒造店は、1869(明治)2年創業の酒蔵です。日本酒「高砂」などの製造・販売に加え、蔵に隣接したレストランの運営もしています。

 8代目は、日産車体(本社・神奈川県平塚市)で自動車エンジニアとして長年働き、2018年に家業に入りました。様々な改革に取り組み、右肩下がりだった売上を、再び成長軌道に乗せつつあります。

 日本酒の国内出荷量が2020年にピーク時の3割以下まで落ち込むなかで、10年間で逆に出荷量を2倍以上に伸ばした酒蔵があります。青森県八戸市で「陸奥八仙」のブランドを展開する八戸酒造です。9代目の弟が酒の質を高め、兄が国内外の品評会に積極的に出品することでブランドを築き上げてきました。

 イギリスやフランスのSAKEコンクールで上位入賞し、注目を集める酒蔵が熊本にあります。100年以上続く花の香酒造の6代目は、自社で酒を造ることができないほど経営が厳しかった会社の再建を進め、新たなブランドの確立に成功しました。その復活を支えたのは、日本酒「獺祭」に学んだ「世界観」でした。

 愛知県半田市亀崎町で、21年前に212年の歴史を終えた酒蔵が復活することになりました。経営を担うのは、創業家9代目の伊東優さん(36)です。一から酒造りを学び、酒類製造免許の再取得に奮闘しながら、新しいビジネスモデルも視野に入れ、時計の針を再び動かします。

 2023年10月1日は、日本酒の日にまつわるイベントが全国各地で開催されます。