目次

  1. 自社ブランドの立体組子照明で人材育成はかる村山木工
  2. ロボコンと自社商品でスキル習得 日の出製作所
  3. 再雇用のマイスターが若手育成するキットセイコー
  4. 「見て覚える」長い下積み期間を変えた左官業3代目
  5. 無理なく腕を磨ける教育をかかげる浅草のときわ食堂
  6. 離職に歯止めをかけた「華硝」の江戸切子スクール
  7. 社員主導で進める槇野産業の技術継承
自社ブランド「組光」の製品(村山木工提供)。価格は「組光 KIRIKO light」が13万円から、「組光 KUMIKO Light」が25万円から(税込み。価格は変更になる場合あり)

 京都市右京区の村山木工は、約1400年もの間、平面でのみ継承されてきた木工の伝統技術「組子(くみこ)」を、世界で初めて立体や曲面で表現することに成功しました。

 従業員は、ほとんどほとんどが未経験で入社するため、次世代の職人の育成も兼ねた自社プロダクトの開発などにも力を入れています。

「ROBOROBO」は歴代の新入社員が開発を手がけています

 日の出製作所(川崎市川崎区)は、金属の製造加工を手がける町工場で、石川県にもグループ企業を抱えています。

 2009年からは毎年、自社開発のロボットを携え、川崎市のロボット異種格闘技戦「かわさきロボット競技大会」に出場。3代目社長は「ロボットの設計から製作まで手がけることで、社員の設計スキル習得に役立つと考えました」と話します。

 10年には自社商品「ROBOROBO」の製造販売を始めます。旋盤やフライス盤で作った、金属製のオリジナルキャラクターストラップで、新入社員の教育カリキュラムの一環で始めました。「ものづくりの基本を楽しみながら覚えてもらえ、当社の基盤加工技術のアピールにもなります」

マイスターから指導を受ける若手従業員(同社提供)

 埼玉県羽生市のキットセイコーは、人工衛星など特殊な用途で使われるねじの製造に特化したメーカーです。

 3代目社長は、マイスター制度による技能継承や工場内の整理整頓、働き方改革を進めて家業の課題解決を図り、小惑星探査機はやぶさやF1のレーシングカーに使われるねじの受注につなげる土台を作りました。

社内講習会の様子(原田左官工業所提供)

 建設業界では、人手不足や職人の高齢化が深刻な課題となっています。そんななか、東京都文京区の原田左官工業所は、スポーツ界で採り入れられている人材育成システムや女性職人の活用、働きやすい環境づくりに取り組んだ結果、若手の離職がほぼゼロになりました。

ときわ食堂のホームページでは、キャリアパスのイメージ図を公開しています(同社提供)

 東京・浅草を代表する大衆食堂・ときわ食堂(東京都台東区)は創業102年を誇り、のれん分けをした店は東京一円の21店にのぼります。14人の社員を抱え、接客や調理のキャリアパスを明示して教育するなど、次の100年への手も打っています。

江戸切子スクールは初心者も職人志望も通います(同社提供)

 東京・日本橋などにある江戸切子専門店「華硝」の店長は、課題だった離職率を下げようと、2011年から江戸切子の技術を学べるスクールを開校。出身者を採用することで離職率の高さに歯止めをかけ、日本橋に店を開いて近くの老舗とコラボ商品を作るなど、成長を後押ししています。

社員主導で製造現場の技術継承を進めています

 「マキノ式粉砕機」で知られる東京都葛飾区の槇野産業は、食品、工業製品、木材などを粉砕する機械の中堅メーカーです。

 技術継承は社員主導で進めており、様々な加工に自動対応できるマシニングセンターを導入した際は、若手社員主導で勉強会を開きました。「製造部は知識の平準化を目指して、勉強会を重ねています。営業も案件ごとにメンバーで話し合うことで、スキルの底上げと継承を図っています」