目次

  1. 給与は維持して労働時間を削減 日東物流
  2. 資格取得の促進で定着率向上 アイペック
  3. 不良品を見つけた社員を表彰 キットセイコー
  4. 働きやすさを求めた改革が経費削減に 三田理化工業

 千葉県四街道市の日東物流は、関東の飲食店やスーパーに野菜や鮮魚を配送する運送会社です。2代目社長の菅原拓也さんは、ドライバーの長時間労働が慢性化していた会社を持続可能な形にしようと、10年ほど前から改革に着手。荷主企業への交渉を重ねて、ドライバーの給与水準を維持しながらも、平均労働時間を大幅に減らすことに成功し、健康経営を進めています。いわゆる「物流の2024年問題」にもそなえて、業務の見直しを続けています。

日東物流では、ドライバーへの労働時間削減のためヒアリングを続けています(同社提供)

 富山市のアイペックは、建物や橋梁などを壊さずに内部に欠陥がないかを調べる「非破壊検査」を手がける会社です。3代目社長の東出悦子さんは、米国公認会計士のキャリアを経て家業に入りました。そこには、昔ながらの職人気質で技術が効率的に伝承されず、若手の離職率が高い会社の姿があったといいます。トップダウン型の父と対立しながらも組織づくりや社員の資格取得の促進に着手。社員の定着率を高め、過去最高の売り上げを記録しました。

資格取得の勉強用に開放されている多目的室(アイペック提供)

 埼玉県羽生市のキットセイコーは、人工衛星など特殊な用途で使われるねじの製造に特化したメーカーです。3代目社長の田邉弘栄さん(49)は、従業員の高齢化に危機感を募らせて家業に入社。マイスター制度による技能継承や工場内の整理整頓、働き方改革を進めて家業の課題解決を図り、小惑星探査機はやぶさやF1のレーシングカーに使われるねじの受注につなげる土台を作りました。その取り組みは埼玉労働局からも表彰され、不良品を見つけた社員を表彰する制度も作るなど、働きやすい環境づくりを加速させています。

整理整頓が行き届くようになった工場内。田邉さんが工場内にある工具を並べたのが、この真ん中の通路です

 治療を要する新生児のための調乳トータルシステムと、製薬会社や薬局などで使われるバイアル瓶のニッチトップ企業「三田理化工業」。3代目社長に就いた千種純さんは、先代の娘婿として入社した当時、「早く認められなければ」と空回りしていました。しかし、次第に社員のみんなを頼った方が、より良いものができると気づきます。納期遅延や大手企業の参入など次々とピンチに見舞われるなか、働きやすさを求めた業務改善が経費削減につながるなど、成果が少しずつ花開こうとしています。

インタビューを受ける千種さん