危機対応から見える2つの傾向 日本総研・石川智久さんが選ぶ5本
ツギノジダイでは毎月、20本近い経営者インタビューを掲載しています。その中から、Yahoo!ニュースの公式コメンテーターとしても知られる日本総研の石川智久・上席主任研究員が選んだ注目記事を、解説とともに月1回お届けします。第4回は、2022年5月の掲載分から5本をピックアップしてもらいました。変化の激しい時代、経営上の危機にどう対応するかのヒントが詰まっているといいます。文中の記事リンクとあわせてご覧ください。
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目次
倒産寸前という会社の危機、離婚という人生の危機に直面してもそこから逃げずに見事に会社を立ち直らせました。この会社の復活のきっかけはケアマネジャーの資格を持った同級生の親が入社したこと。つまり、たった一人の人材の加入がどん底からの復活につながっています。
実は、苦しい局面にいるとき、多くの場合、人に会うのを避け、一人で考えがちです。ところが、答えは人の中にあります。厳しい時ほど、人に会って協力者を募ることの大事さがわかります。特に中堅・中小企業は一人の存在で大きく変わります。多くの経営者は孤独かもしれませんが、様々な人と交流して、知恵袋、右腕、応援団的な人材を見つけて欲しいものです。
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また、「人の役に立ちたい」という気持ちで行動していることも素晴らしい。どん底で見つけた自分の本当の声を、自社のビジョンにして、それに忠実に動いたことが業績の拡大につながっています。「ビジョンを持つべき」と言われますが、日本企業は理屈で考えすぎているように思えます。やはり体験から裏打ちされた、心の底から出てくる声をビジョンにすることが重要です。
老舗の名門で売り上げもそれなりにあるものの、お客様は60歳以上に偏っていることに危機感を持ち、様々な改革を続けたところにこの会社の良さがあります。売り上げがあるうちは、目の前の売り上げを大事にするあまりになかなか改革をできないことが多いですが、ジリ貧を避けるために手を打ったことはさすがです。
「『大分の代表的な銘菓』と聞かされていたが、それはお菓子が今ほど世に出回っていない時代の話で、過去の栄光だった」と社長はコメントしていますが、なかなか気が付ない視点です。老舗でありながらも廃業に追い込まれることがありますが、その多くのケースは、過去の栄光に浸り、緩やかな衰退に目を背けてきたからです。あえて現実を見たところが会社を復活させた要因でしょう。
新ブランドを立ち上げる、県の支援窓口を活用する、小ぶりサイズを出す、地元の食材を使う、手塗キットといったコト消費にチャレンジする、アトツギ甲子園に応募するなど、様々なアイデアと実行があるのは、まさに老舗に安住しないからでしょう。事業承継が老舗の新陳代謝につながった良い事例です。
最近は畳がある家も減ってきました。畳屋さんにとっては厳しい時代です。しかしながらそうした中でもビジネスチャンスを見つけているのがこの会社です。若い人に関心をもってもらうための改革もなかなか面白いです。
SNSに顔を出す理由が「畳職人はお宅に上がるが、作り手の顔がみえないほど怖いものはない」という指摘はさすがです。農家の写真が記載されている作物がスーパーなどでよく売れるのと同じマーケティング手法を畳屋業界に持ち込んでいます。
また高級品である熊本のイグサを使うことで単価を上げて、無理な受注をしないで収益を確保しているところも参考になります。日本企業の悪いところは利幅が小さい仕事をして「利益なき繁忙」となることですが、それを避けています。利益を確保したうえで、仕事量を抑えることで一つ一つの仕事のクオリティーを上げているところも参考になります。
さらに、モダン乱敷きという和モダンな敷き方へのチャレンジや地元のマルシェへの出店など、幅を広げているとこも見習いたいところです。
「ミセスのワンダーランドというコンセプト」で様々な努力を重ね、それがうまくいっているときにコロナで危機に直面しました。補助金なども活用して心がほっとする商品を生み出し、コロナの危機を乗り越えました。
2020年秋にチャレンジを開始し、その年の冬には販売するなどスピード感も大したものです。そしてそれがオンラインで販売されたり、東京での展示会で高評価を受けたり、雑貨店から依頼を受けたりとビジネスを拡大させています。コロナを乗り切るための商品開発でしたが、今や「オリジナル商品をこれからも出しつつづけたい」と考えるなど、未来志向を強めています。危機をチャンスにした良い例と言えるでしょう。
小さな町の衣料品店が大きく全国へ羽ばたこうとしていますが、コロナを逆に成長のチャンスに変えたところは素直にすごいと思います。
北九州出身の私としても、とても懐かしいうどん屋さんです。北九州のソウルフード的な会社であり、ツギノジダイに登場してもらえるのは本当にうれしく思います。
さて、この記事の中で一番注目したのは「ローカル飲食店がいかにしてコロナ禍で生き残るか」です。1カ月余りで通販サイトを立ち上げるほか、テイクアウト対応も迅速に行うなどのスピード感が素晴らしい。そして、そのオンラインを今でも拡充しているところも参考になります。
さらに「お客様と従業員を大事にする」との考えも頭が下がります。人手不足で残された従業員の負担が増えるとお客様のニーズに応えられなくなるのが理由とのことですが、現場が疲弊して不祥事を発生させるケースが増えているなか、日本企業全体が真剣に考えなければならない問題意識といえます。DXを進める際も従業員に負担をかけずにお客様が便利になる方法を考えるとのことですが、そうした姿勢を貫いて、北九州のソウルフードを守って頂きたいと思います。最後に社史ではなくファンブックというのも多くの企業で取り入れ欲しい取り組みです。
変化が激しい時代、どの会社も危機・苦境に直面する恐れはあります。そのときにいかにして乗り越えるか、そのヒントを与えてくれる記事が多くありました。スピード感を持って対応するところ、多角化を進めていたので結果として対応できたところなど、様々な対策があることがわかります。
ではどちらの手法がいいのか。私としては自社の性格に合わせるべきだと思います。機動力に自信があれば機動性、じっくり考えるのが得意なのであれば準備することで危機を乗り越えるべきでしょう。
米国では、目の前のことに注力することを重視して中期経営計画を作らず迅速さやアジャイルさを大事にする会社と、また一方で100年先を見据えて少しずつ手を打っていく会社の二つに分かれる傾向がありますが、これは陸上競技に短距離・長距離があるように、人それぞれ、得意なスピードに違いがあるからだと思います。
今回の経営者の方々も自分の経営者としての志や得意技、自社の特質を知り抜いています。それが分かったうえで対応していくことの重要性を今月の記事から感じました。
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