自社の「こだわり」は適切? 日本総研・石川智久さんが選ぶ5本
ツギノジダイでは毎月、20本近い経営者インタビューを掲載しています。その中から、Yahoo!ニュースの公式コメンテーターとしても活躍する日本総研の石川智久・上席主任研究員が選んだ注目記事を、解説とともに月1回お届けします。第5回は、2022年6月の掲載分から5本をピックアップしてもらいました。会社を発展させるための「こだわり」をどうつきつめるべきかのヒントがあるといいます。文中の記事リンクとあわせてご覧ください。
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目次
黒板の新しい使い方を世の中に広めたサクセスストーリーがわかりやすく書かれている記事で、興味深く読みました。この会社の成功の秘訣は、海外の製品や大手にはない魅力をもった商品開発をしたことです。従来の黒板を生かしつつ、スマホで簡単に使える商品を生み出しました。
先生たちが使い慣れた黒板を残しつつ、電子黒板の良さを加えたところが素晴らしい。黒板を置き換えるのではなく、ハイブリッドにしたところが他社との差別化につながっています。祖業が黒板の会社だからこそできる発想と感心しました。
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日本企業の良さはこうしたハイブリッド性なのかもしれません。デジタルとアナログを組み合わせることで、クールで温かい教育現場を作り出して欲しいと思います。また、多機能にするのではなく極力機能をしぼるというところも、現場が使いやすくなるというメリットがあるため良いと思います。
運送業の一つのモデルケースです。この会社の強みは様々なタイプのユニック車を持っているのでお客さんのニーズに対応しやすいことです。特に自社が開発した「積載量を変えずに長さを短くした特注の12トンユニック車」は長さが短い分、狭いところでの作業を可能にしています。
またこの会社の素晴らしさは「できない理由を考えるのではなく、できる理由を考える」という考えを大事にしているところです。12トンユニック車の特注によって競争力を高めたことはまさにその象徴と言えます。「困ったときの需光」と言われているようですが、難しい仕事にチャレンジしてきたことが生きているといえます。
財務の安定性も向上しているほか、従業員の待遇改善にも尽力しているとのことであり、一層、新しいことに取り組める土壌は整いつつあると思います。今後も運送業の駆け込み寺と言われ続けるように、業務のレベルアップに貢献されることを期待します。
世の中でファストファッションが流行するなか、ベルト業界は苦境に直面しましたが、この会社はそれを乗り切りました。その答えは「老舗には絶対ブレない軸となる商品がある」と気が付いたことでした。
ベルトが売れない時代にあえてベルト一本にしぼります。「本革でありながら伸縮性があるフォーマルなベルト」を開発し、それが葛飾ブランド認定を受けて、いまやこの会社の看板商品になっています。新商品開発も素晴らしいですが、それをブランド化まで成し遂げたことも参考になります。
また葛飾区の新成人にベルトをプレゼントしており、こうした地域を大事にする姿勢もこの会社の魅力です。便利で、おしゃれで、長持ちするような本革のベルトをこれからも作っていって欲しいですし、葛飾が本革ベルトの産業集積地となることも期待します。
おいしいバナナに特化。この会社の強みはこの一言に集約されます。逆にシンプルに強みを表現できるところがこの会社のすばらしさです。
仕入れや温度、お客さんが食べるタイミングなどに留意して、ベストのタイミングでお客様にバナナを提供しています。その姿勢が多くのファンを生み、この会社が取り扱うバナナを使ってジュースにしたいというところが出てきたのも理解できます。
その際、ジュース販売についてはレストラン会社にすべて任せ、自社はバナナを卸すことに徹しています。確かに収入は減るかもしれませんが、ジュースの販売に気をもむことなく、バナナに徹することができるという意味で、バナナ専門店の矜持を感じます。バナナの伝道師として、これからの活躍に期待したいところです。
最近、実力のある企業の廃業により、その技術が失われることが増えています。そうしたニュースが多いなか、父親が持つ旧車バイクの技術や知識を眠らせておくのはもったいないとの思いから会社を継いだのは、本当に素晴らしいことです。
確かに市場の急拡大は見込めないかもしれませんが、良いものは時代を越えて一定程度のファンをつかみます。そうした方にとって絶対必要な存在となれば、高収益企業になることは可能と思います。
さらに、愛好家だけでなく、若い世代にもバイクの魅力を伝えたいとの志をもっておられるとのことですが、ぜひともその気持ちでビジネスを続けて、カッコよく、スタイリッシュなバイクの世界をさらに広げていかれることを期待します。新社長は経営コンサルティングもされているということですが、その経験と知識を活用して、この会社を大きくして欲しいと思います。
変化の激しい時代、企業は変革を求められます。しかしながら、何を変えず、何を変えるかは非常に頭が痛いところです。その際重要なことは、絶対に変えてはならない軸を明確化し、そこは頑なにこだわると同時に、それ以外は柔軟に変えたり、場合によっては省略するということだと思います。
その際、こだわり方は会社によって千差万別です。商品であったり、自社の歴史であったり、もしくはビジョンであったりします。こだわり方にも適切な範囲や方法がありますが、今回紹介した会社はこだわりポイントがしっかりしているところが印象的でした。
黒板のケースでは、これまで自社が提供してきた「黒板」を残す方向でイノベーションを行いました。運送業のケースでは、「できない理由ではなくできる理由を探す」というビジョンを愚直に守っています。ベルトのケースでは、老舗を研究して、絶対にブレない商品を開発しました。バナナのケースでは、おいしいバナナのためにそれ以外のところは思い切って捨てるという決断をしています。バイクのケースでは、失われつつあるバイクの技術と知識を守るということをビジョンにしています。
適切なこだわりポイントを一つか二つ決めることで、会社としての個性は明確化し、それがその会社の強みとなり、自信をもって経営ができます。今月は、会社を発展させるための「こだわり」について考えさせられる記事が多かったのが印象的でした。
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