目次

  1. 発信力とは なぜ必要か?
  2. 発信力を高めるには ポイントは目的の明確化と継続
  3. 発信力を高めるうえで知っておきたいキーワード
    1. カリギュラ効果とは
    2. メラビアンの法則とは
  4. 発信力のある中小企業のSNSやWeb活用事例
    1. ブエノチキンの「ブエコ」、2代目自身が広告塔
    2. 北陸の揚げあられ「ビーバー」、NBA八村塁選手も追い風に
    3. 掘り起こした企業ニーズに合わせてサイト改修
    4. SNS発信「商品にさらに愛着を抱く可能性」
    5. Webサイトのこまめな更新で毎週新規の問い合わせ

 発信力は、企業の認知度を高める広報戦略ともかかわる重要な能力です。商品やサービス、情報を求めているとき、インターネットを使って自ら調べる人が多くなっています。ただし、情報があふれている昨今、そもそも認知してもらうには、まず発信力を高める必要があります。

 情報発信は企業だけに求められるスキルではありません。経済産業省が提唱している「人生100年時代の社会人基礎力(職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な力)」のなかでも、重要な能力の一つとして位置付けられています。

「人生100年時代の社会人基礎力(職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な力)」。経産省の公式サイトから https://www.meti.go.jp/policy/kisoryoku/

 ビジネスにおける発信力を高めるには、まず、誰に何を知ってほしいのか、何のために発信するのかをきちんと整理することから始めましょう。後段で発信力を高めている企業の事例を紹介していますが、どの企業もどんな人(企業)に何を伝えたいのかが明確になっています。

 次に大切なことは、継続することです。たとえば、SNSであれば、どうすれば読んでほしい人の目に留まるのか、コストをかけずとも試行錯誤することができます。

 目的が明確化できたら、次にわかりやすく伝える工夫について紹介します。

 カリギュラ効果とは、ある行動を禁止・制限されると逆に興味が湧いてやってみたくなる心理効果のことです。ビジネスシーンでは集客力を高めたり、購買行動を促したりするために活用されています。

 具体的な活用方法は下記の記事で紹介しています。

 メラビアンの法則とは、コミュニケーションにおける言語・聴覚・資格の影響の割合を明らかにした心理学上の法則のことです。

 メラビアンの法則によると、コミュニケーションにおいて、人は言語情報(Verbal)から7%、聴覚情報(Vocal)から38%、視覚情報(Visual)から55%のウェイトで影響を受けます。コミュニケーションにおいて最も影響度が大きいのは、視覚から入ってくる情報であることを示しています。

 広告宣伝費を多く投下できない中小企業にとって、SNSは有用な情報発信ツールです。ターゲットを絞れば、Webサイトからも集客ができます。どんな風に活用しているのか、事例をもとに紹介します。

 沖縄県浦添市で創業したローストチキンの店「ブエノチキン」の2代目・浅野朝子さんは、自身を広告塔にしてSNSなどの発信でファンを増やしています。

 SNSで発信する際は、浅野さん自身を「近所によくいる陽気なお姉ちゃん」のイメージに設定。「チキン野郎」の文字が躍るTシャツを着たり、「ブエノチキン」にちなんで「ブエコ」というニックネームを自分に付けたりして、「広告塔」としてのキャラクターづくりも工夫しました。

「チキン野郎」のTシャツを着た浅野さん(浅野さん提供)

 北陸で人気の揚げあられ「ビーバー」を製造する北陸製菓は、地域での圧倒的なブランドを目指して生産体制やプロモーションを強化。米NBAで活躍する八村塁選手がビーバーを配る様子がSNSで話題を呼んだことも追い風に、社長就任3年で売り上げを5割伸ばしました。

ビーバーをきっかけに髙﨑さんは八村塁選手(左)との縁が生まれました(北陸製菓提供)

 刺繍加工会社「マツブン」(東京都足立区)3代目社長は、ウェブサイトに寄せられた問い合わせを機に、一般企業向けに刺繍を施したオリジナルの衣類やワッペンを製作・販売するビジネスモデルに大胆に転換しました。

 検索する人が「刺繍 ポロシャツ」といったキーワードを入力するとマツブンのサイトが上位に表示されるよう、当時、サイト内の各ページに「刺繍 ポロシャツ」という用語を多用しました。

 さらにサイトの改修も行い、法人向けに高級感や落ち着いた雰囲気を意識したビジュアルにしたほか、プロのフォトグラファーが撮影した、職人を前面に打ち出した写真なども配置しました。

 サイトへの訪問や問い合わせが増え、売上高は20年間で6倍に伸ばしました。

加工した企業向けオリジナルワッペン(マツブン提供)

 ネクタイづくりを手掛ける岡山県津山市の笏本縫製は、新型コロナウイルスの影響により対面がままならなくなり、発信の重要性が高まったことを受け、2021年4月くらいから、TwitterやInstagramの運用を本気で行うようになりました。

 またネット販売の場合は、ネクタイの質感などがわからず不安要素も多くなりがちなので、顧客が商品に対して不安があれば、ホームページのLINEやSNSのDMなどで相談にのり、お客様との対話を大事にした販売スタイルを大切にしていきました。

 3代目は「弊社が作ったネクタイと知らずに付けていた人が、SNSなどでどのような思いで作られたネクタイなのかを知ることで、さらに愛着が湧く可能性があります。だからこそ発信が大事なんです」と話します。

オリジナルブランド「笏の音」のネクタイ

 新潟県の燕三条地域で、金属加工の手法の一つ、バレル研磨業を営む東商技研工業の2代目は次のように話しています。

 「営業活動だけでなく、若い世代に『バレル研磨』を知ってもらうために、ウェブサイトの制作や動画での情報発信に力を入れています。従業員が20人を超えるバレル研磨会社は、全国で10社ほど。それぐらいニッチな業界です。バレル研磨で鏡面加工ができる会社は他にもありますが、ウェブサイトのこまめな更新などで検索上位になるため、うちには毎週、新規の問い合わせが寄せられます。ウェブサイトを通じて、年間20社ほどの新規取引先がコンスタントに増えています」