目次

  1. 骨太の方針とは
  2. 骨太の方針2024 中堅・中小企業向けの政策方針
    1. 人手不足への対応 AI・ロボット軸に省力化
    2. 稼ぐ力の強化へ 事業承継支援やM&Aの情報開示盛り込む
    3. 輸出・海外展開支援 海外に合う商品開発を支援
  3. 各業界の賃上げに向けた今後の方針
  4. スタートアップ活性化など社会課題への解決も明記

 内閣府の公式サイトによると、骨太の方針とは、正式名称を「経済財政運営と改革の基本方針」といい、政府の経済財政政策に関する基本的な方針を示すとともに、経済、財政、行政、社会などの分野における改革の重要性とその方向性を示すものです。

 毎年6月ごろに、内閣総理大臣が経済財政諮問会議に諮問し、審議・答申を経て、閣議決定しています。骨太の方針に盛り込まれた内容は、年末にかけて議論する予算案にも反映されていきます。

 骨太の方針2024のおもな政策の柱は、以下の通りです。

  1. 豊かさを実感できる「所得増加」及び「賃上げ定着」
  2. 豊かさを支える中堅・中小企業の活性化
  3. 投資の拡大及び革新技術の社会実装による社会課題への対応
  4. 地方創生及び地域における社会課題への対応

 このうち、この記事では、中小企業向けの政策に焦点を当てていきます。

 骨太の方針2024は、「日本経済を熱量あふれる新たなステージに移行させるため、地域経済をけん引する中堅企業と、雇用の7割を支える中小企業の稼ぐ力を強化する」として、具体的に次のような政策を掲げました。

 人手不足への対応は、主に省力化投資に対する支援です。幅広い業種に対し、簡易で即効性があるカタログ型の省力化投資支援をするとともに、事業者それぞれの業務に応じたオーダーメイドの省力化の取組を促進するとしています。

 補助金だけにとどまらず、運輸業、宿泊業、飲食業などでAI、ロボットなどの自動化技術の利用を拡大するため、業界団体による自主行動計画の策定を促します。

 自動化技術を用いることができる現場労働者の育成に向けたリスキリングも推進します。教師に対する校務マネジメントの支援、機械導入によるトラックドライバー業務の軽減など人手不足の資格職における「分業」を進めたい考えです。

 さらに、大企業に対し、中堅·中小企業と協働する新技術·商品開発(オープンイノベーション)や、副業·兼業を通じた中堅·中小企業への人材派遣を奨励します。大企業のDX人材と地域の中堅·中小企業や地方公共団体とのマッチング支援も進めます。

 骨太の方針2024は、「成長市場に進出しようとする者の事業再構築、新製品開発や新市場の開拓、イノベーション創出、DX·GXの取組を促進する。サイバーセキュリティ対策、インボイス制度への対応を支援する」と掲げています。

 中小企業に対する支援機関や金融機関等による能動的な支援を促すため、2024年度中に、企業情報やその支援ニーズを集約したマッチングプラットフォームの運用を開始する予定です。

 ただし、金融支援については、令和6年能登半島地震による被災や円安による価格高騰には配慮しつつも、2024年7月以降は、支援の水準をコロナ禍以前の水準に戻すと明記しました。

 事業承継とM&Aの環境整備についても盛り込まれました。たとえば、これまで事業承継税制で、特例承継の適用を受ける場合に足かせとなりがちだった役員就任期間の要件「贈与の直前に3年間役員」について見直す方針が盛り込まれました。

 このほか、第三者への承継を促進する税制の在り方の検討を深めるといいますまた、中小企業の経営者教育や後継者育成の推進に取り組むことも一文盛り込まれました。

 政府内でも「M&A仲介事業者の利益相反構造」や「高額な最低手数料」といった問題が議論されるなか、M&Aを円滑化するため、仲介事業者の手数料体系の開示を進めることを明記しました。

 このほか、M&A成立後、実施企業によるPMIや設備投資を促進するため、地域金融機関に対し、PMIを含め、M&Aの支援を強化することを促します。

 経営者保証が事業承継やM&Aの支障とならないよう、金融機関が中小企業に対し事業承継やM&Aに関するコンサルティングを行う際に、経営者保証の解除に向けた方策を提案することも促します。

骨太の方針2024は、中堅·中小企業が外需を取り込むための挑戦を後押しすることも盛り込んでいます。

 「新規輸出1万者支援プログラム」によって、新たに海外展開に取り組む者が増えているとして、きめ細かい支援を充実するため、専門家による伴走支援体制の増強、現地ニーズの把握や海外事業戦略立案等を支援する海外の拠点追加·国内の体制強化、海外市場に適合する商品開発の支援等を行うといいます。

 輸出の実施段階にある者には、専門家による伴走支援に加えて、ジェトロが一括契約し、中小企業に販売の機会を提供する海外ECサイトの拡大、事業者の英語対応能力の向上支援、中小企業基盤整備機構と輸出商社やプラットフォーム等との連携強化に取り組む予定です。

賃上げの促進 / 価格転嫁対策
賃上げの促進 / 価格転嫁対策(以降のイラストはいずれも内閣府の公式サイトから https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/honebuto/2024/decision0621.html)

 岸田首相が力を入れているのが「賃上げ」です。骨太の方針2024には、さらに取り組みが必要な分野を挙げています。

 その一つが、欧米主要国と比べて男女間賃金格差です。

 女性の所得向上を通じてその活躍を支えるため、賃金差異の大きい業界における実態把握・分析・課題の整理を踏まえ、業界ごとのアクションプランの策定を促すことを明記。差異の見える化や差異分析ツールの開発・活用促進を進めるといいます。

 医療·介護·障害福祉分野では、2024年度診療報酬改定で導入されたベースアップ評価料等の仕組みを活用した賃上げを実現するため、持続的な賃上げに向けた取組を進めます。

 建設業やトラック運送業では、改正建設業法と改正物流法にもとづき、ガイドライン等を早期に示し、業界外も含めた周知の徹底、価格転嫁の円滑化を図るとともに、国・地方自治体だけでなく民間同士の取引にも、労務費の基準と、標準的運賃の活用を徹底するようにするとしています。

 とくに、建設業は、公共工事設計労務単価の適切な設定、建設キャリアアップシステムの拡大、受発注者を実地調査する建設Gメンの体制強化、トラック運送業はトラックGメンの機能強化等により、処遇改善や取引適正化の取組を進める予定です。

 旅客自動車運送事業は、運賃制度改正の周知や賃金水準の実態を把握し、業務効率化·省力化の取組を促します。警備業も賃上げに向けて、自主行動計画の改定を求めて、労務費の価格転嫁を進めます。

 農林水産業や食品産業は、原材料費、労務費等を考慮した合理的な価格形成がなされるよう、官民協議の下、コスト指標を早期に示すほか、新たな法制度について、2025年通常国会への提出を目指します。

 骨太の方針2024はこのほか、解決すべき社会課題への対応も列挙しました。

  • 医療・介護DX
  • 教育DX
  • 交通・物流DX
  • 貿易DX
  • 再生可能エネルギーにおけるフロンティアの開拓
  • 宇宙政策
  • 海洋政策
  • スタートアップの活性化
  • 食料安全保障