【写真特集】事業再建や売上7倍増を実現 DXに成功した中小企業を紹介
デジタルトランスフォーメーション(DX)のかけ声が高まっていますが、中小企業ではDXをどのように事業成長や生産性向上につなげればいいか、悩むケースも少なくありません。ツギノジダイ掲載記事の中から、ITツール導入や社内への浸透などのDXで、目に見える形で経営改善を実現した中小企業経営者のチャレンジを写真特集でお伝えします。
デジタルトランスフォーメーション(DX)のかけ声が高まっていますが、中小企業ではDXをどのように事業成長や生産性向上につなげればいいか、悩むケースも少なくありません。ツギノジダイ掲載記事の中から、ITツール導入や社内への浸透などのDXで、目に見える形で経営改善を実現した中小企業経営者のチャレンジを写真特集でお伝えします。
目次
宮城県山元町のいちご農家「燦燦園」は、長年の製法とITシステムを用いた管理で、大手百貨店や有名菓子店も扱う完熟いちごを育てています。東日本大震災の津波で自宅もいちごも流され、ハウスも1棟だけになった農園を、3代目の深沼陽一さんが直後に継承。災害ボランティアや再建を断念した農家、ITの力を借りて、完熟いちごをよみがえらせました。スイーツ開発を軸に6次産業化を進め、冷凍いちごを削った「いち氷」をヒットさせて、直営店を開くなど、震災前と比べて飛躍的な成長を遂げています。
これまでは紙や人力で行っていた各種業務を、デジタル自動化することで効率化し、業績を改善する、いわゆるDXに取り組む企業が増えました。地盤改良工事などを手がけるセリタ建設(佐賀県武雄市)もそんな一社でしたが、2代目の芹田章博さんはデジタルマーケティングにまで活用することで、営業効率を上げ、新規顧客の獲得にも成功。10年前と比べ売上高260%アップ、経常利益率20%との成果を出しています。
樹脂押出成形メーカー「ノムラ化成」(さいたま市岩槻区)で、従業員約350人が働くタイ法人は、Googleのノーコードツール「AppSheet」を活用し、紙とエクセルで手間のかかっていた在庫管理や作業日報を電子化することに成功しました。「AppSheetはできたらいいなを自前で実現できるツール」だと実感したというタイ法人代表の野村亮太さんに具体的な使い方や導入前に知っておきたい注意点について聞きました。
東京都羽村市にある杉並電機は、電子機器につなぐコネクターの金属端子(たんし)を作る会社です。サブミクロン(1万分の1ミリ)単位の精度を要する精密部品の、金型設計からプレス加工までを自社で手がける杉並電機の製品は、スーパーコンピューターに使われるほどの技術力を誇ります。3代目社長の福田礼彦(のりひこ)さん(51)は、社内に立ち込めていた「あの人が担当する作業はいつ終わるのか」という社員同士のモヤモヤを解消すべく、身近なツールを用いて作業の進捗を可視化。社内の雰囲気が明るくなり、残業時間削減など生産性向上にもつながりました。
明治クッカー(千葉県市川市)は明治の牛乳やヨーグルト配達する会社です。2代目社長の西原亮さんは、事業承継を考えたとき、牛乳配達業にはネット通販にはない「定期的に対面でお客様と会えるインフラ」の可能性があると気づきます。解約数が増えるなどの課題に直面しながらも、従業員向けの勉強会などで改善を繰り返し、顧客数は事業承継当時の10年前と比べて約6倍に。DXでリアルタイムに情報を見える化するなどの改善も進め、年間売上高は約7倍になりました。
金属加工を営む町工場の3代目候補として生まれ育った角野嘉一さんは、事業の成長を目指した結果、日本ツクリダス(堺市南区)を創業する道を選びました。金属加工を事業の柱にしつつ、業務の属人性が強くアナログな町工場の課題を解決しようと、生産管理システム「エムネットくらうど」を開発。2年間売り上げがゼロという時期を経て、町工場目線で寄り添う営業スタイルに変えてからは契約が相次ぎ、年間売り上げの3割を占めるもう一つの柱に育ちました。
DXの取り組みが広まるなか、着手できていない中小企業も少なくありません。製本・印刷機械を手がける富士油圧精機(群馬県前橋市)もそんな1社でした。しかし、富士油圧精機が違ったのは、DXの抵抗勢力だった幹部が「まずやってみる」ことで意識改革を遂げたことでした。導入費用の3倍の経費削減を達成しただけでなく、自ら考えて動く組織へと変わるという成果を手にしました。
運送業界の中でもニッチと言われる建設用の重機や資材専門の運搬サービスをしている「黒潮重機興業」(宮城県多賀城市)。東日本大震災時、津波に車両や自宅が流されながらも、翌日から人命救助や復興のため「誰かのために」をモットーに動いてきた2代目の菅原隆太さん。今度は自社の運転手の働きやすさのために、自身の経験を活かした配送管理システムを作ります。いずれ、「運送業2024年問題」の解決にも役立てたいと模索しています。
燦燦園の完熟いちご(同社提供)
栽培データをモニターで管理しています
経験を考慮して従業員の配置を進めています
広大なハウス内での作業
津波でなぎ倒されたいちご(同社提供)
「燦燦園」代表の深沼陽一さんは、東日本大震災で1棟になったハウスから再出発し、高品質のいちごを前面に多角化を進めました
深沼さんの行動力が多くの人を動かしました
「こしかけいちご大福」(左)と「いちご和さんど」(同社提供)
看板商品になった「いち氷」(同社提供)
22年に開いた「完熟いちごや 燦燦園」(同社提供)
経営に対する考えを話す芹田さん
軟弱地盤の強度を高める独自開発の「マッドミキサー」
成果が出やすいところから、スモールステップでを進めてきたDX
ノムラ化成のタイ法人「K.U. Nomura Thai Ltd.」代表の野村亮太さん(写真はいずれも野村さん提供)
紙とエクセルで記入していたときは同じ情報を何度も加工する必要があり、各作業でタイムラグが生じていたが、AppSheetで開発したアプリでは入力があった瞬間に全体がアップデートされる
部品を検査する担当者が右側のタブレットのボタンを押すことで、進捗を知らせる仕組み
スクリーンに進捗を投影し、誰もが見られるように。可視化の範囲は、福田さんの手によって導入当初より大幅に広がっている
スクリーン(右側)に進捗が投影される製造現場
配達風景(明治クッカー提供)
70代のスタッフもタブレットを使いこなしている(明治クッカー提供)
西原さんが出演して明治クッカーのGoogleWorkspaceの活用術を紹介するYouTubeチャンネルも開設している(https://www.youtube.com/@cooker8)
2代目の西原亮さん(前列左端)と従業員のみなさん(明治クッカー提供)
イベント出店の様子。その場で商品を試飲してもらい、気に入ってくれた人にはその場で契約までしてもらう。亮さんが事業承継した10年前、牛乳販売店でイベント出店をしているところはなかった(明治クッカー提供)
日本ツクリダスが開発した「エムネットくらうど」を前に説明する角野さん
日本ツクリダスの本社兼工場内はモニターで社内の様子が一覧できます
エムネットくらうどの画像イメージ(日本ツクリダス提供)
日本ツクリダスの工場では若い社員が活躍しています
日本ツクリダスの角野嘉一さん(右から2人目)は、労働環境の改善や音声番組の配信などで町工場のイメージを明るくしようとしています
新卒で入社してから39年、富士油圧精機一筋に歩んできた石田さん
以前は紙のファイルで埋まっていたキャビネット(左)はDXにより空になった(右)
富士油圧精機が導入したキャディの図面DXサービス『CADDi DRAWER』
紙からモバイルに変わったことでプリントアウトに要する時間が削減された図面
有限会社黒潮重機興業2代目の菅原隆太さん(写真はいずれも同社提供)
現在の黒潮重機興業外観
運転手一人ひとりにタブレットを配布した
すべて選択式「距離」以外の数字は打つ必要がない
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