目次

  1. 「誰に」「なぜ」会いたいのか?から始めよう
    1. 目的とターゲットの明確化
    2. 最適な展示会の選定
    3. コンセプトの絞り込み
  2. 人が集まらないブースから考えるブースデザイン
    1. ブースデザインは戦略的コミュニケーション
    2. 視覚的な「フック」を作る
    3. スムーズな動線と開放感
    4. 一瞬で伝えるメッセージ キャッチコピーの力
    5. ターゲットに響く世界観
    6. 細部へのこだわり
  3. 展示会の出展した中小企業の工夫
    1. 集客はSNSやメルマガ・DMも
    2. 接客は困りごとのヒヤリング
    3. ブースデザインはターゲットのお店をイメージ
    4. 事前に展示会の雰囲気をつかんでおこう
  4. 展示会営業コンサルから見た良い点・改善点

 記事「失敗しないための展示会とは 欠かせぬ出展先選びとコンセプト固め」によると、展示会成功のカギは、「誰に会いたいのか(ターゲット)」そして「なぜ出展するのか(目的)」を明確に定義することから始まります。

 まず取り組むべきは、展示会で出会いたい理想の顧客像を具体的に描くことです。「OEMメーカーを探している人」といった漠然としたイメージではなく、「雑貨、小物、アパレルのメーカー・商社のマーチャンダイザーや企画、プライベートブランド担当者で、自社の染色技術を活かしたOEM製造先を探している人」のように、役職、業界、抱えているであろうニーズまで具体的に特定します。

 この具体性が、後のすべての判断基準となります。

 なぜなら、ターゲットが明確であればあるほど、響くメッセージや効果的なアプローチ方法が見えてくるからです。

 ターゲットが明確になったら、次はそのターゲットが来場する展示会を選びましょう。大きく分けて二つのアプローチが考えられます。一つは、自社が属する業界で「定番」とされる展示会に出展することです。

 業界大手も出展するこれらの展示会は集客力が高く、その流れに乗ることで自社のターゲットと出会う確率を高められます。

 もう一つは、テーマや商材を少しずらして出展する「ズラし戦略」。例えばコーヒーの展示会にあえて紅茶で出展するといった方法です。競合が少ない中で独自性を際立たせることができますが、この場合も、ずらした先の展示会の来場者層が、自社のターゲットと合致しているかを慎重に見極める必要があります。

 迷ったら、出展を決める前に必ず展示会の主催者に問い合わせましょう。自社が設定した具体的なターゲット像を伝え、「そうした層の来場者はどの程度いるのか、全来場者の何パーセントくらいか」を確認しましょう3。単なる総来場者数ではなく、「質の高い」出会いが期待できるかどうかが重要です。

 出展する展示会が決まったら、コンセプトを絞り込みましょう。多くの情報を提供しようとすると、かえってメッセージがぼやけてしまい、誰の心にも響かなくなってしまいます。

 このコンセプト固めには、「だれに(ターゲット)」「なにを(アイテム)」「どのように(ブース体験)」「どうなってほしいのか(ゴール)」という4つの問いへの答えを埋めていくことで、自出展コンセプトが自然と明確になります。

 戦略的な基盤がしっかりしていればいるほど、限られたリソースを効果的に活用し、質の高いリード獲得、ひいては投資対効果(ROI)の向上へと繋がっていきます。

 記事「展示会ブースで集客できる方法とは ちょっとの工夫で変わる3つのポイント」によると、人が集まらないブースには次のような特徴があるといいます。

  • 何を扱っているのかが一目でわかりにくい
  • ブースに立ち寄りにくい雰囲気になっている
  • あれもこれも商品を置いて特徴が見えない
  • 雑然としていたり笑顔がなかったりと印象が良くない
  • 会場のメイン通りから外れて気づかれにくい

 来場者は広い会場でより多くのブースを回りたいと思っており、基本的には「(特定のブースに)つかまりたくない」と思っていることを前提にすることが大切です。

 展示会場で、自社のブースは無数の競合の中に埋もれてしまいがちです。来場者がブース前を通り過ぎる時間はわずか数秒。

 その一瞬で注意を引きつけ、価値を伝え、足を止めさせるためには、単に見た目が美しいだけでなく、戦略的に設計されたブースデザインを考えましょう。

 記事「来場者が足を止める展示会ブースのデザインとは 事例から見る工夫」にはたくさんのヒントが盛り込まれています。

 まず、遠くからでも目を引く工夫が必要です。例えば、メイン通路から外れた不利な立地でも、蛍光ピンクのような大胆な色を壁一面に使うことで、視認性を高めることができます。照明も重要な要素です。

コンテンツ東京に出展したinoutなどの展示ブース(展示ブースの写真はいずれもSUPER PENGUIN提供)

 標準的な照明に頼るだけでなく、LED投光器を追加で設置し、壁面を照らす「ウォールウォッシング」のようなテクニックを用いることで、ブース全体が明るく際立ち、活気ある印象を与えられます。

ライフスタイルWeekに出展したROSY LILYの展示ブース

 実際に、白を基調とした明るいブースや、通常より明るい照明で壁を照らしたブースが成功を収めています。

 来場者が心理的な抵抗なくブースに近づけるようなレイアウトも重要です。特に小規模なブースでは、頭上の看板(パラペット)や通路側の支柱を取り払うことで、開放的で入りやすい雰囲気を作り出すことができます。

 角地であれば、その立地を活かして自然な人の流れを作ることも意識しましょう。商品サンプルなどを展示する際は、通路に面した正面に固めるのではなく、壁面に沿ってコの字型に配置すると、スタッフと来場者が同じ方向を向いて話せるため、圧迫感がなくなり、会話を始めやすくなります。

 ブースの前を歩く来場者が瞬時に「自分に関係があるか」を判断できるよう、何を扱っているのか、どんなメリットがあるのかを短く分かりやすい言葉で伝えるキャッチコピーが不可欠です。

 「だれの、どんな悩みを解決するブースなのか?」が一目でわかるように、ブース上部の目立つ位置に、大きな文字で掲示しましょう。人の頭の高さを意識した配置も効果的です。

 ブース全体のデザインは、ターゲットとする顧客層の心に響くものでなければなりません。

2021年10月の「インターナショナル ギフトショー」で石川県内の企業22社が参加した出展ブース(竹村尚久さんのツイートから引用)

 たとえば、石川県内の企業が共同出展した際には、高級雑誌のような洗練された白いブースデザインを採用し、特定のバイヤー層にアピールすることで、成約額を前年比約3倍に伸ばすことに成功しました。

 タペストリーやバナーを使用する場合は、たるみやシワがないように上下を袋縫いにしてパイプを通すなど、細部まで気を配ることで、プロフェッショナルな印象を与えることができます。

 効果的なブースデザインは、単に目を引くだけでなく、自社が求めるターゲットを選別する「フィルター」としても機能します。明確なメッセージとターゲットに合わせたデザインによって、関心のある来場者だけを引き寄せ、スタッフが質の高い商談に集中できる環境を作り出すのです。

 実際に展示会に出展している中小企業たちはどのような工夫をしているのか、聞いてみました。

 集客はたまたま来場した新規顧客だけでなく、以前から交流のある人にも送ってみましょう。看板、ディスプレイツールの製造・販売などを手がける「常磐精工」(大阪府)は、展示会を既存顧客への新商品PRの場ととらえ、既存顧客に事前にメルマガやDMで案内を出しました。

 工業用塗料メーカー「斎藤塗料」は、事前にSNSで展示物や商品を告知し、あらかじめ興味をもって来場してもらうことをねらいました。「事前に塗料について先行知識や興味をもった上で来てもらえるので、商品説明の時間が短縮でき、先方の疑問や質問を答えることに時間を使うことができるといいます」とコメントしています。

 工具箱を製造販売してきた「リングスター」は出展時に来場者と1対1で話す状況が多いので、どういうことに困っているのか、という点を詳しくひも解くイメージで接客していたといいます。丁寧に話していくうちに、その反応から無意識にデータが集まっていき、何に困っているのか・何が嬉しいと思うのかを調査することができたのだといいます。

 町工場プロダクツとして合同出展した「シマワ」(東京都千代田区)は、ターゲットとなるお店に置いてもらえるような展示ブースを作りました。

町工場プロダクツとして合同出展したシマワのブース(手前)。無電源スピーカー「oto」を展示している

 「ターゲットにするお店向けに展示デザイン(雰囲気や色使いなど)していくと目に止めてもらいやすくなるなと学びました。展示スペースの雰囲気作りと、そのままお店に展示できるような什器だとなお良いと思います」とコメントしています。

 キャンプギアの製造販売を手がける水門メーカー「乗富鉄工所」(福岡県柳川市)は、「FIELDSTYLE SEASIDE MARKET」に出展したとき、事前準備の大切さを感じたと言います。

 「ブース設計から当日のセールストークまで展示会の目的・客層に合わせて調整する必要があると感じました。事前資料だけでは雰囲気までは分らないので、可能なら事前にユーザーとして参加するのがいいし、無理でもYouTubeなどで展示会の雰囲気を掴んでおけばよかったと思います」

 展示会をさらにより良くするにはどうすればよいでしょうか?展示会営業コンサルタントとして活動する清永健一さんに各社の事例に助言を求めました。

 最後にそんな記事も紹介します。